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94 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:30:37.03 ID:DTxBG77uO
「プログラム××番、一年生100mバタフライ、決勝のコース順を申し上げます」

('A`)(遂に、俺の初の晴れ舞台か。)

「1コース、鬱田ドクオ君。VIP中学校」

('A`)ペコッ

放送が聞こえ、震えながら小さくお辞儀をする。今回ばかりは、水泳部内で緊張感が無いと定評がある俺でも身体がガチガチに固まっていた。

思えば、今まで散々な人生を送って来た。物心付く前には親父は居なくなっていて、俺はカーチャンに女手一つで育てられた。そういえば、水泳を始めたのもカーチャンに進められてだっけ。
 
 
……回想……

多分、小学校に入るまでは貧乏な割には中々充実した毎日を送っていたと思う。後に知る事となるが、これも偏にカーチャンのお陰である。

小学校二年生の時、持病の喘息に効くと進められて小さなスイミングスクールに入学した。

( ^∀^)(※昔のドクオです)「ウヒャッホォォォイ!!」

J( 'ー`)し 「ヨカッタワネドクオ…」

昔から水が好きだった俺には、スイミングスクールは天国のような場所だった。好きこそ物の上手なれとはよく言った物だ。俺はみるみる内に上達し、四年生になった頃には四泳法をマスターしていた。そんな俺は夏の水泳の授業ではクラスのヒーローだった。

……回想終わり……

('A`)(……歯車が狂ったのは、五年の時だっけな………)



95 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:32:32.93 ID:DTxBG77uO
……回想……

きっかけは小さな物だった。俺はあの日、腹を壊していたのだろう。しかし学校で大便をするのは小学生にとっては何よりも重い罪。俺は必死に我慢しながら、四時間目の水泳に挑んだ。

……今思えば、どうしてあそこで素直にトイレに行かなかったのだろう。いつも調子で笑ってごまかせばただの笑い話となっていただろうに……

(^∀^;)(これはヤバイ……)

案の定俺は水の中でも分かるぐらい嫌な汗をかいていた。大便が漏れそうな時特有のあの「歯痒さ」のような独特の感じが俺を蝕む。

(^∀^;)(背に腹は代えられん………)

(^∀^;)「せんs」

(;^ω^)「おっと、ゴメンだお」

この瞬間から惨劇は始まった。漸くゲイリーの苦しみから解放されると気を緩めていた時に、割と大柄な同級生の脚が腹に直撃したらどうなるか想像がつくだろうか。

\(^o^)/(※ドクオです)「オワタ」

思わず声に出る程だった。肛門から液体混じりの固形物が出る感覚がして………それから暫くの記憶が無い。恐らく必死で忘れようとしたのだろうが、自分が忘れても他人は覚えている物だ。



97 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:38:14.93 ID:DTxBG77uO
気付けば夏休みが終わった所まで記憶が飛んでいた。
恐らく思い出したく無いらしいのでそっと心の奥底に沈めておく事にしよう。

夏休みが終わり、俺は既にほとぼりが冷めている事を祈りながら教室に入った。

( ^∀^)「おっはー!」

当時流行っていたネタをかますが………反応無し。
いつもなら友達が笑って返してくれるのだが、何か悪い予感がしてならない。
………心なしか、女子のグループがこちらを見てひそひそ話をしている気がする。
_
( ゚∀゚)「うわっ!!ウ○コマンだ!!触ったらウ○コにされるぞ~!!」

Σ(;^∀^)「」

言葉が出なかった。その日はその後どんな事があったか思い出したくも無い。
学校が終わると誰よりも早く家に帰り、自分の部屋に閉じこもった。
これが、俺の一年以上の引きこもり生活の始まりだった。

('A`)「ウツダシノウ」

J( 'ー`)し「ごめんね、カーチャンのせいでごめんね……」

この頃から、知り合いに人相が悪いと言われるようになった。
これまでとは一変、週に四回のスイミングスクールだけは続けていたが外の光を浴びなくなった事で色白になり、
カーチャンがくじ引きで当てたというテレビゲームにかじりつくようになった。
思えばカーチャンには苦労をさせた気がする。



98 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:41:12.69 ID:DTxBG77uO
そして、一年と数ヶ月の時が経ち中学校の入学式。俺はイジメを受けるのが嫌で、無理を言って少し家から遠い中学校に入学する事になっていた。

('A`)(………ここには俺を知ってる奴は居ない。大人しくしとけばイジメられないだろう。)

???「……ドクオ君かお?」

聞き覚えのある声に背筋がゾクリとして振り返ると、そこに居たのはこの惨劇の引き金の一つであり………

( ^ω^)「あの時は、本当にスマンカッタ」

後に中学校時代の唯一の親友となる、内藤(通称ブーン)だった。

(#'A`)「…………………」

謝る気があるのか分からない謝り方に苛立ち、気付けは俺は内藤を殴っていた。

(;^ω^)「いてぇお…いきなり何するんだお?」

(#'A`)「…………チッ」

その場を去ろうと背を向け、

(;^ω^)「あっ!待って来れお~!」

内藤が後ろから走って追い掛けて来る。あの頃は内藤の方がずっと遅かったのに、今ではどんどん差を詰められる。全く、時の流れは残酷である。



99 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:44:19.82 ID:DTxBG77uO
(;^ω^)「ヒィ……ヒィ………やっと追い付いたお。……なんで逃げるお?ブーンは何もしてないお……」

('A`)「………」

よくよく考えてみると。あの時も確かに内藤は他のクラスメートが俺を罵る中、一人申し訳なさそうな顔をして俯いていた。惨劇の引き金ではあるが、わざとでは無いだろう。

('A`)「……………チッ」

だからといって、彼に腹を刺激されたのが惨劇の引き金だという事は変わり無い。まさか俺達が友達になるとは誰も予想していなかったし、ドクオも内藤と親しくする気は無かった。

ちなみにクラスメートに特に思い出は無い。内藤と同じクラスだったが、俺は教室では誰とも話さなかった。

入学から数週間、部活は既に決めていた。スイミングスクールは卒業し、水泳部に入部する事にしていたのだ。

('A`)「で、なんでお前がいる訳?」

( ^ω^)「おっおっ、ブーンも水泳をやってたんだお。知らなかったかお?」

初耳である。どちらかと言うと彼は運動神経が悪く、水泳もそれほど得意では無かった筈だ。

(;^ω^)「おー……下手の横好きって奴だお。」


101 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:48:07.99 ID:DTxBG77uO
なんだかんだで、俺と内藤は仲良く水泳部に入部した。当然の事だが俺達の他にも一年生の部員は何人かいた。

/ ,' 3 …zzz
荒巻は三度の飯でも寝ている背泳ぎの達人、話してみれば意外と面白い奴だった。

(,,゚Д゚)ゴルァ
柄は悪いが心優しい平泳ぎ界の新星、木古とは後にブーンに次ぐ友達になる。

(*´・ω・`)ハァハァ
そして本人公認のガチホモであり、俺達のケツを狙うド変態。スタミナも性欲も絶倫の長距離自由型選手、初本。

女子では
ξ*゚⊿゚)ξ ベ、ベツニアンタノタメジャ
津出は一年生の中でもトップクラスの実力を持つ、短距離自由型の選手。どうやら内藤に気があるみたいで。ツンデレのテンプレみたいな奴だ。

川 ゚ -゚) …………
素直空(あだ名はクー)は美人だが、無口で何を考えているか分からない個人メドレー選手。駄目元で告白して、今では付き合っている。人間駄目元でやるのも大事だと知った瞬間だった。

ざっとこの五人と、俺と内藤で七人がこの年の新入部員となり、これから先、苦楽を共にする仲間でもある(ちなみに内藤は短距離自由型の選手である)。部室に入ると顧問の先生が出迎えて来れた。

N| "゚'` {"゚`lリ 「よかったのか、ほいほい水泳部に入っちまって。俺は、スパルタだって有名な顧問なんだぜ?」

(*´・ω・`)「いいんです……僕、阿倍さんみたいな事好きですから………」

N| "゚'` {"゚`lリ 「嬉しい事言ってくれるじゃないの……それじゃ、とことん喜ばせてやるからな………………」

顧問であり、体育教師でもある阿倍先生にはこれから先何度も(性的じゃない意味で)お世話になる事になる。

一人一人阿倍先生に自己紹介をした結果、何故か初本だけ後で個人授業を受けさせられるらしい。彼に何か用があったのだろうか?


102 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:50:45.14 ID:DTxBG77uO
N| "゚'` {"゚`lリ 「ああ……次はお前らの先輩になる奴らの紹介だ…………」

VIP中学校水泳部の部員は、三年生は男子が一人・女子が三人、二年生は男子が三人・女子が二人いる所謂小数精鋭だ。

N| "゚'` {"゚`lリ 「人数は少ないが皆水泳への熱意は人一倍だ。」

そう言うと、部室の奥の方に居た先輩方がこちらに近付いて来る。まずは、三年生と思わしき男子が一人前に出て来る。

( ・∀・)「やあ。僕は水泳部キャプテンの茂良。種目はバタフライだ。皆、これから一緒に頑張ろう。」

キャプテンの茂良さんにはバタフライの技を叩き込まれた。
他の先輩方の挨拶は長くなるから省略するが

(*‘ω‘ *)チンポッポ ボイン 
朕さんには部活の事を色々と親切に教えて貰った。
从'ー'从 アレレー?
マネージャーの渡辺さんは主にプールサイドから俺達の練習を手伝ってくれていた。
ハハ ロ -ロ)ハ Hello.
留学生のハローさんとは最後までまともに話せなかった。俺は英語が喋れない。
(#´_ゝ`)サスガダヨナオレラ(´<_`*)
二年生の流石兄弟は俺達と友達のように接してくれて、お陰で俺達はすぐに部活に溶け込めた。来年もよろしくお願いします。
( ´∀`)モナー
茂奈さんは芸人志望でとても面白い人だ。でも来年は泳いでる時に水中腹芸をするのは勘弁してください。
(*゚∀゚)アヒャ
二年生女子の通(つう)さんはクーに告白する時に色々と教えて貰った。
川д川…………
貞子さんは不気味な所もあるが、誰よりも練習熱心な人だった。五寸釘は勘弁してください……



103 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:52:32.12 ID:DTxBG77uO
こうして俺達は、夏の大会に向けて阿倍先生の厳しい練習を続けて来た。
練習シーンは残念ながら省略する。
何度も壁にぶつかったが、その度に誰かに助けられて壁を越えて来た。

そして大会当日。
皆を応援している内に時間はあっという間に過ぎて、遂に俺の出る100mバタフライが始まった。

('A`)(……やばい、緊張してきた…………)

('A`)(勝てるだろうか……?いや、勝たなくては………)

緊張感から来る雑念を振り切るように、ゴーグルを装着。笛の音でスタート台に昇り、

(■A■)「…………………!」

渇いた銃声と共に飛び込む。泳ぎ始めれば、雑念は消える。気付けば、俺は3位でゴールしていた。

N| "゚'` {"゚`lリ 「3位か、まあまあ上出来だな…ところでコイツは今のお前のタイムだ。コイツを見てどう思う?」

阿倍先生が差し出したストップウォッチには、しっかりと1:15:38というタイムが記録されている。

(*'A`)「すごく……ベストタイムです…!」



105 :('A`)はスタート前に思い出すようです:2010/01/06(水) 02:55:29.36 ID:DTxBG77uO
ドクオは久しぶりに出たベストタイムにテンションが上がった。それは他の部員の士気にも影響したらしく、部員達は次々と好タイムをたたき出して行く。

全ての予選が終わり、決勝が始まる。決勝では応援にも更に熱が入り、真夏の会場が熱気に包まれる。そして………

……回想終了……

('A`)「………………」

今、ドクオはスタート台の前に立っている。今は声援は止んでいるが、もう少しして笛が鳴ればスタート台に上がり、その数秒後の銃声でプールの水面に吸い込まれるように飛び込めば再び声援の嵐が巻き起こるだろう。

(■A■)(………勝つ。3位で満足してたまるか!)
ゴーグルを装着。ピッピッピッピ、という笛の音で気合いを入れ直し、スタート台に立つ。

(■A■)(…………………)

雑念は無い。渇いた銃声が鳴り響き、選手達が水に飛び込む音が鳴った瞬間、会場は再び声援に包まれた。

('A`)はスタート前に思い出すようです:完】


 
 
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