スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
 
42 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:07:42 ID:twqbmqGo0

 両親は私の事を、「手がかからない子だった」と言っていた。
夜泣きもしない。
ミルクだって素直に飲んで、すぐに寝る。
服を着せるときも、大人しかったそうだ。

赤子の頃から淡泊だった私の名前は、すぐに決まったらしい。
『クール』。
それが、私が生まれて初めてもらったプレゼントだった。


43 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:08:10 ID:twqbmqGo0





川   )彼女は不器用だったようです


44 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:08:33 ID:twqbmqGo0

 私が生まれて6年後。
母の腹に、私の弟がいると聞かされた。


「お姉ちゃんになるのよ」


 それを聞いても特に思う事はなかったし、そもそも興味がなかったから、
適当に生返事だけを返した覚えがある。
私が姉になったとしても、この淡泊な性格は変わらないだろうと自分でも分かっていたのだ。

まぁ案の定、弟が生まれてからも、私は何も思わなかった。

可愛いだとか、思ったより小さいなぁ、とか、そういう感想を抱くことすらなかった。

だって、興味がないんだから仕方がない。


( ^ω^)「あー、あー」


 弟がうちに来てからも、私は変わらなかった。
弟が散らかしたおもちゃを片付けるのは面倒だったけど、
それも世の中の『姉』の仕事なんだと思っていたのだ。

文句を言ったって、まだ歩くことも出来ない弟には理解できやしない。
文句を言うだけ時間の無駄なのは、私にだって分かっていた。

弟のことは嫌いではなかった。
でも、好きかと聞かれれば、それも分からない。


45 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:08:59 ID:twqbmqGo0


( ^ω^)「おねえちゃん、おねえちゃん」

川 ゚ -゚)「なに?」

( ^ω^)「いっしょにあそぼうお!」


 やっと弟が歩き、喋りだすようになってくると私はよく遊びに誘われた。
遊びって言ったって、外に出て軽く追いかけっこやボール遊びをする程度だ。

遊びに誘われれば、嫌な顔ひとつせずに付き合った。

別に楽しくはなかったけど、退屈でもなかった。


( ^ω^)「遊び行ってきますおー!」


 弟が小学校に上がる頃、私は中学生になった。
勉強も部活もそれなりで、友達も必要最低限の人数だけいた。

一部の人には『充実はしてない』と言われるような、中学生活だ。

そんな私とは対照的に、弟はかなり充実した毎日を送っているようだった。
毎日遊びに誘われ、バットやサッカーボールを片手に家を出て行く。

きらきらした目をした弟を見て、その時初めて、『楽しそうだな』と思った。

別にぎくしゃくした仲ではなかったし、お互いに嫌いではなかったとは思う。
でも、私と弟の間には、明らかに深い溝があった。

無駄な会話も、私たち姉弟にはなかった。
非常に事務的で、家の中に他人がいるといった感じだ。

私は、その距離感が一番心地良いと思っていた。
 
 
46 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:09:23 ID:twqbmqGo0

*  *  *  *


 私が中学3年生になった、冬の朝だ。
酒を飲んでふらふらの運転をしていた運転手によって、私は轢き殺された。

最期に見たのは、私に近づいてくる弟の泣き顔。

痛みはなかったし、別にやり残したことも思いつかない。

死んでいるにも関わらず、こうして色んな場所をうろつく事が出来る。
こういう状況を『幽霊』と云うのだろうか。

私の葬式にも出た。
普通は笑っている写真を選ぶはずの遺影は、口を真一文字に結んだ私の写真。

誰に話しかけても、まぁ当然だろうが反応は返ってこない。

棺に入った私に縋りついて、両親と弟は嘆き悲しんでいた。
私はちゃんと、この人たちに家族と思われていたんだ。

それを見て、少し安心した気がする。


47 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:09:54 ID:twqbmqGo0

( ;ω;)「お姉ちゃん、お姉ちゃん…!」

川 ゚ -゚)『泣くんじゃない、ホライゾン』

( ;ω;)「どうして…! 何でだおおおおおおおおお!!」

川 ゚ -゚)『……』


 拳を握りしめて、大声を出して、弟は私の為に泣いてくれる。

…どうしてだろう。


川 ゚ -゚)『私は、お前にとっていい姉じゃなかっただろうに』


 同じ家に住んでいながら、姉弟喧嘩のひとつもしたことがなくて。
無駄な話もほとんどせず、私はお前に興味がなかったっていうのに。


川 ゚ -゚)『どうして、お前は私のために泣いてくれるんだ?』


 自分の弟のことなのに、分からない。

なぁ、ホライゾン。
私は、お前の事はほとんど何も知らなかったんだぞ?

何年何組の何番で、どんな友達がいるかも。
何の教科が得意で、何が苦手なのかも。

私はお前に全く無関心だったのに、何でお前は…


48 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:10:22 ID:twqbmqGo0

( ;ω;)

「―――お姉さんが、弟さんを突き飛ばして轢かれたんですって…」

「え? …あのお姉さんが?」

「ええ、車が突っ込んで来たのにいち早く気付いたのがお姉さんで…」

「あら…」


 …あぁ、そうだったっけ?
私が弟のために、そんなことをねぇ…


川 ゚ -゚)『…ホライゾン、泣くんじゃない』

川 ゚ -゚)『自信はないが、私がしたくてしたことだ。多分』

川 ゚ -゚)『だから、泣くな』

( ;ω;)「うう、あうああ、あああああ」


 …こいつは、こんなに泣き虫だったっけ。
小さいときからずっと一緒に暮らしてたのに、何にも覚えてない。

きっと、まだまだ私が知らないことがたくさんあるんだろう。
知ろうとしてこなかった、私が悪い。

すまない、ホライゾン。
私はいい姉じゃなかっただろう。

お前の事を何も知らなかった。
それに今さら気付くなんて、なんてバカな姉だっただろう。


49 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:10:44 ID:twqbmqGo0

きっと自分でも気づかないくらい深い場所で、
私はお前のことを大事に思ってたんだと思う。

もっと話しかけていればよかった。
世界にたった一人しかいない弟。

溝を作っていたのは、私だった。
もっと話しかけて、くだらないことで笑って、人並みに喧嘩とか色々して…


川 ゚ -゚)『……』

川 ゚ -゚)『……』


 私の棺の前で泣いているホライゾンの頭に、手を置いた。
なんと不器用な『なでなで』だろうか。

もっと小さな頃から、こうしてやれば良かったな。


川 ゚ -゚)『……』

川 ゚ -゚)『お前のこと大事に思ってたんだよ。きっと、…自分よりも』


 今さら言ったって、もう遅いか。


50 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:11:06 ID:twqbmqGo0

*  *  *  *


( ^ω^)「カーチャン、遊びに行ってきまーすおー!」


 それから数年後―――
ホライゾンは、小学6年生になった。

相変わらず、私は『幽霊』的な存在のまま、この世界にとどまっている。

ただ、足がもう透けているから、『あの世』に行くのはそろそろなんじゃないかと思う。

慌ただしく家の中を駆けずり回るホライゾンは、
何年経っても私のことは忘れていないようだ。


( ^ω^)「行ってくるお、クー姉ちゃん!」


 出かけるとき、必ず仏壇に声をかけて行くから。


川 ゚ -゚)『ああ』


 その返事の代わりに、私はいつも玄関先でホライゾンの頭を撫でてやる。
きっと弟は、私がこうしていることを知らない。

でも、この手は弟を守った。
自分の体で、一番好きな部分だ。


51 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:11:34 ID:twqbmqGo0

頭を撫でてやる仕草も、不器用は不器用なりに割と様になっているんじゃなかろうか。


( ^ω^)「行ってきます!」


 私の弟は、姉の分まで感情豊かないい子だ。

もしも輪廻転生なんてものがあるのなら―――


川 ゚ -゚)『また、お前の姉にでもなりたいな』


 今度は、いいお姉さんになれるように努力するからさ。





52 :川   )彼女は不器用だったようです:2011/05/05(木) 20:12:13 ID:twqbmqGo0


川 ゚ -゚)彼女は不器用だったようです
おしまい


No15の絵から
http://blog-imgs-34-origin.fc2.com/s/o/g/sogomatome/rano15.jpg
rano15.jpg


 
総合短編(ハートフル・感動) | コメント(0) | トラックバック(0)
コメント

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。