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422 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:35:59 ID:wTJy9Oio0

('A`)「あぁ……今日もよく働いた。俺マジ頑張ってるなぁ」

('A`)「いとしの我がアパルトメントよ。ご主人様のお帰りだぜ」

('A`)「郵便、たまってんなぁ……うわ、引き落とし出来てねーのかよ…」

ゴソゴソ

('A`)「……あれ?」







('A`)「……なんだ、これ?」


423 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:36:20 ID:wTJy9Oio0


   ('A`)シジフォスの岩達 のようです


424 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:36:37 ID:wTJy9Oio0
再生ボタンを押すと、何の前触れもなくその映像は始まった。
うすぐらい部屋の中に男が一人、アンティークを思わせる木製の肘掛け椅子に座っている。

( ^ω^)「やあ。見てくれてありがとう」

( ^ω^)「呪いのビデオとかそういう類のものじゃないから、安心してくれていいよ」

( ^ω^)「……ま、後味は悪いと思うけどね」

( ^ω^)「君に知って欲しいことが一つある」

( ^ω^)「今ね」

( ^ω^)「女の子が一人、旅行かばんにつめられて、山の中に埋められているよ」

( ^ω^)「多分、まだ生きていると思う」

( ^ω^)「ま、埋めたの俺なんだけどね」


425 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:36:52 ID:wTJy9Oio0
暗闇の中に、車のヘッドライトの光線が二本、ぼんやりと浮かび上がっていた。
時刻は午後十時二十七分。たった一人の夜のドライブほどに心地のいいものは、中々ないと思う。
それは多分車内という個人的な空間と、昼に対しての夜という象徴的な時間との、空間と時間の関係性に根ざした心理だと思う。
が、詳しく分析してみるのも野暮というものかもしれない。だから、夜のドライブは楽しい、それだけでいい。

運転している車は黒のフーガで、新車で購入したから確か五百万くらいだったと記憶している。
それが一台の【車】に対して支払われるべき正当な対価かどうかは分からなかったが、
少なくともこのフーガという車種はエンジン音がとても静かだし揺れも少なくて乗り心地は抜群だった。
乗用車とは斯くあるべき、というイメージをそのまま体現したような車だ。
スポーツカーを乗り回しているような連中とは友達になりたくないと、常々思っている。

徐行といっていいほどの低速で車を走らせているので、余裕を持って車外に目を向けることが出来る。
クリーニング屋の看板、道端の自動販売機、煌々と灯りを点すコンビニ、誰も居ないバス停。
色々なモノが近づいてきて、そして後方の暗がりに流れていった。
それらのモノは、自分とは関係のないもの、外の世界の出来事として無責任に楽しむことが出来る。
動物園のサルを眺める感覚だ。車内という空間は、そのようなプライベートな空間の持ち運びを可能にする。

だから、夜のドライブは純粋に、楽しい。

しばらくそうして一人の試走を満喫したのち、いよいよ人目の多い大通りをさけて一方通行の細道に入り込んでいった。
街灯もまばらな薄暗がりの小道。街には、こういったエアポケットのような空間が数限りなく存在している。

さあ、はじめよう。
 
 
426 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:37:07 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……思ったより苦労しなかったな」

( ^ω^)「学生証見たら十六歳だった、十六歳」

( ^ω^)「若いよね」

( ^ω^)「若い子を選んだんだけどね」

( ^ω^)「だってほら、これが四十過ぎのおっさんとかだったら、絵になんないでしょ」

( ^ω^)「若い女の子っていうのがいいよね。なんか、扇情的で」

( ^ω^)「グッと来るよ。単純だけど」

( ^ω^)「結構、簡単だったな」

( ^ω^)「塾の帰りとかだったのかな。たまたま目に入ったからさ、ちょうどいいと思って」

( ^ω^)「車から声掛けてさ」

( ^ω^)「全然抵抗しなかったな。驚いた顔はしてたけど」

( ^ω^)「柔道とかであるでしょ。絞め落としって奴」

( ^ω^)「ドラマとかでよくクロロフォルムとか使ってるけど、あれは駄目だね。咽喉が焼けちゃうから。可哀相だ」

( ^ω^)「気絶させたいだけなら、絞め落とすのが一番だね。首絞めるのが」

( ^ω^)「結構、簡単だったよ」

( ^ω^)「そのまま手足縛ってね、車に乗せてかっさらったんだ」


427 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:37:24 ID:wTJy9Oio0
緩やかな坂道を上がって行く。
進行方向の左側にはマンションが建っていって、道を挟んで向かい側に、工場のブロック塀が続いている。
ずっと向こうの闇の中に、キラリと輝く反射板の光のようなものが見えた気がした。
目を凝らすとそこにどうやら人影のようなものが見てとれたので、ゆっくりと車を近づけていくとヘッドライトの光の中に、
自転車をこぐ女の子の後姿が浮かび上がった。
すばやく周囲を確認したが、ほかに人の姿は見当たらなかった。

だから、彼女に決めた。

( ^ω^)「すいませーん」

川 ゚ -゚)「……はい?」

運転席の窓を開けて顔を突き出し、後ろから声をかけた。つられてその女の子が自転車を止め、こちらを振り返る。
綺麗な、顔をしていた。

( ^ω^)「ちょっと道に迷っちゃって……雛所駅って、こっちであってますか?」

警戒されないように注意深く表情を作る。あいまいな微笑を浮かべて、困ったような顔をして見せるのが上策だ。
目から感情を読みとられてはいけない。

川 ゚ -゚)「え……雛所駅って……全然逆の方向ですよ?」

( ^ω^)「あっれぇ? コンビニで聞いたら、こっちだって言われたんだけど……まいったな。
       すいません、ちょっと地図見てもらってもいいですか?」

川 ゚ -゚)「あ、はい……」


428 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:37:52 ID:wTJy9Oio0
外目から見て分かるように、わざとダッシュボードの上に投げ出してあった地図帳を手にとって、考える振りをしながらめくる。
手元の地図帳を調べているように装って実際は、近づいてくる彼女との距離を慎重に測っていた。

もう一歩……後一歩……っ……今だっ!!

川;゚ -゚)「!?」

勢いよく身を乗り出し、右手ですばやくその細い首をつかんで思い切り締め付けながら、強引に体をこちらに引き寄せる。
間髪をいれずに左手も伸ばして、両腕に一気に力を込める。こうすれば叫ばれないし、逃げられる可能性も少ない。

川; д )「かっ……はっ……」

突然の出来事に彼女は、巻きついてくる二本の腕を掴んで必死に振りほどこうとしてみせた。
でもそれはどうしようもなく無力で、哀れみすら感じさせるほどの些細な抵抗だった。
逆に勢いで殺してしまわないように、手加減をしたくらいだ。


429 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:38:05 ID:wTJy9Oio0
川 д )「…………」

皮膚の下で、彼女の頚動脈がどくどくと脈打つのが分かった。三秒、四秒。
そして次の瞬間、その体から全ての力が抜けた。失神したのだ。
脳に供給される血液が数秒遮断されれば、人は簡単に酸欠に陥る。
多分、彼女にとっては想像もしたことのないようなことだっただろう。
だがそれは事実だ。人間は、どうしようもなく、弱い。皆、そのことを忘れているだけだ。

( ^ω^)「……ふう」

窓越しに片腕で彼女の首を掴んだまま、すばやく運転席のドアを開けて車外に出た。
ぐったりとした彼女を抱えて、後部座席のドアを開けて車内に押込み、前もって準備してあったプラスチック製の枷をその手足にはめた。
口中に布を詰めて上からガムテープでぐるぐる巻きにする。
そうしておいてから座席にその体を横たえて、念のために毛布をかぶせて、外から分からないようにした。
一旦車外に出て目を凝らしてあたりの様子を伺ったが、付近に人の気配はなかった。
多分、全部で五分もかからなかったと思う。

どうやら、うまくいったようだった。


431 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:38:20 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……埋めるところは前からきめていてね、やっぱり山の中がいいよね。人が来ないから」

( ^ω^)「何が大変だったって、穴掘るのが一番あれだったね」

( ^ω^)「三十分くらいかかった」

( ^ω^)「で、掘った穴にかばん詰めにしたその子を入れてね、そのまま埋めてきた」

( ^ω^)「騒いでなかったから、多分まだ気がついてなかったんだね」

( ^ω^)「息が出来なかったら可哀相だから、ゴムホースで空気穴作っといたけど、大丈夫だったかな」

( ^ω^)「ほら、窒息死って辛そうじゃない」

( ^ω^)「衰弱死の方が、まだ良いよね」

( ^ω^)「人間て、飲まず食わずで五日くらいはいけるらしいね」

( ^ω^)「土の中に一週間、身動きできないまま、じわじわ死んでいくんだね」

( ^ω^)「……それはそれで可哀相だな」

( ^ω^)「まあ仕方ない」


432 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:38:39 ID:wTJy9Oio0
それから車を飛ばして四十分程度で、目的の場所に到着した。
都心から離れたとある山中で、間違っても夜中のこの時間に、誰か別の人間に偶然鉢合わせするようなロケーションではない。
これから何をしようが、誰にも見られないということだ。
申し訳程度に舗装された山道に車を止めて、スコップを手に、雑木林に分け入った。

(; ^ω^)「はぁ、はぁ、」

懐中電灯の明かりを頼りにしばらく歩くと、木々の谷間にある少し視界が開けた場所に出た。
下調べは事前に済ませていた。ここなら広さも十分だ。

( ^ω^)「さて、一仕事だ」

予定外だったのはその、穴を掘るという作業が、考えていたよりずっと重労働だったということだ。
墨汁をぶちまけたような闇の中に、土を掘るスコップの音だけが響く。
ジャリ、ジャリ、ジャリ、……。

(; ^ω^)「……ふう、これくらいでいいか」

一心不乱に手を動かし続けて半時間ほど、やっとの思いで、大人ひとりがすっぽり納まるほどの大きさの穴が掘りあがった。
スコップをその場にほうり捨てて、元来た道を引き返す。汗でシャツが肌に吸い付いて、気持ちが悪かった。


434 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:38:52 ID:wTJy9Oio0
山道に駐車した車に戻り、トランクを開いた。大型の旅行かばんが一つ、転がっている。
持ち上げてみた。すごく、重い。当然だ。人間が一人、その中に入っているのだから。

(; ^ω^)「ふぅ、ふぅ、」

旅行かばんを抱えて再び雑木林に足を踏み入れる。両手がふさがってしまったため、明かりの確保が出来ない。
ほとんど闇を透かすようにして、一歩一歩進んだ。

( ^ω^)「……お」

ようやく、先ほど掘りあげた穴までたどり着いた。
なるべく振動を与えないように気をつけて、旅行かばんをその中に運び入れる。

……うん、すごくいい具合に収まっている。上出来だ。

そのまま再びスコップを手に取り、上から少しずつ土をかぶせていった。
十分もかからずに彼女を包んだその旅行かばんは、土に埋もれてすっかり見えなくなった。
穴は掘るより埋めるほうが楽だということだ。そこには何かしらの真理がある。

( ^ω^)「……さよなら」

     『さよなら』

聞こえるはずもない彼女の返事が、聞こえた気がした。


435 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:39:07 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……なんでそんなことしなきゃならなかったかというとね」

( ^ω^)「……なんでだろうね。よく分かんない」

( ^ω^)「……ま、とりあえずやってみたかったんだよね、前から」

( ^ω^)「女の子が一人、わけもわからず山の中に埋められて、で、他の人はその地続きのどこかで何も知らずに、
       いつもと同じように飛んだりはねたりしてるわけ」

( ^ω^)「物凄い不条理な目にあってるだれかがどこかにいて、でも大半の人間はそんなこと知らないまま
       いつもどおり平平凡凡生きてるわけ」

( ^ω^)「何か、来るものがあるよね」

( ^ω^)「グッと来るよ、何でかは分からないけど」

( ^ω^)「……まぁ、たださ」

( ^ω^)「そういうことがあったんだって、知ってる人はいるべきだよね」

( ^ω^)「ほら、知らないのってなかったことと一緒だから」

( ^ω^)「だから、ま、こうやってビデオにとって君に見てもらってるんだけどね」

( ^ω^)「なんで君だったのかというとね」

( ^ω^)「これもたまたまなんだね。実をいえばまだ、誰にどうやって渡すかも決めてないんだ」

( ^ω^)「コンビニですれ違ったとかそんな感じじゃないかな。多分。それが一番しっくり来るね、うん」


436 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:39:26 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……どうして……」

ハンドルを握りながら、先ほどから何度も、そう自問していた。

( ^ω^)「…………」

始まりは、どうしようもないほどの使命感からだった。

俺は彼女を殺さなければならなかったし、彼女は俺に殺されなければならなかった。
俺という一個の人間が、全く接点のない見ず知らずの彼女の生命を、ただ一方的に奪う。
俺達には、世界に対して支払うべき借りがあるからだ。
代償は払われなければならない。単純な理屈だ。
それは義務だ。人間の義務だ。そこには、崇高な信念が存在していたはずだった。

だが行為を通して残ったもの、それは底の知れない徒労感だけだった。
約束されていたはずの達成感、満足感、ある種の殉教的な陶酔、どころか一片の罪悪感すら残らなかった。

ただ、ただ、ひたすら空しい。


437 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:39:49 ID:wTJy9Oio0
(  ω )「……どうして……」

方法が間違っていたわけではない。一連のプロセスには、確かに真実があったのだ。
全てがなされるまでは、彼女と俺は確かに真理の隣に腰掛けていた。
だがそれは完了されると同時に、全くの無意味で無価値なものへと成り果てた。
彼女は生き埋めにされた哀れな一人の少女に成り下がり、俺はただの猟奇殺人者に堕落した。
そして世界にはまだ、支払われるべき代償だけが確かに存在している。

地獄だ、と、思った。
これが地獄でなくて、なんだ。

人間に課せられた、永遠に終わらない苦役───

                ───シジフォスの岩

( ;ω;)「……お? なんで……」

涙が、知らずにあふれていた。

( ;ω;)「……うっ……うぅっ……」

手が白むほどハンドルを強く握り締め、ただ、泣き続けた。
涙が、後から後から溢れてきて、止まらなかった。


438 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:40:03 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……これから君がどうするかは、好きにしてくれて構わないよ」

( ^ω^)「警察に知らせて、女の子を捜してもいいし」

( ^ω^)「もしかしたらまだ助かるかもしれないし」

( ^ω^)「……ま、手遅れだとは思うけどね」

( ^ω^)「うん、そんな感じ」

( ^ω^)「見てくれてありがとうね。じゃ、後はよろしく」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「……やれやれ、ようやく終わったよ」

( ^ω^)「……」


439 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:40:20 ID:wTJy9Oio0
( ^ω^)「……」


























( ^ω^)「……逃げられないよ。誰も、逃げられない」


440 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:40:37 ID:wTJy9Oio0
そこまで言って男は、ぼんやりと立ち上がり、こちらに向って歩み寄った。
画面が一瞬揺れて、映像はそこで途切れた。

再び暗闇を取り戻した世界だけ、そこに残したまま。


441 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:40:51 ID:wTJy9Oio0
('A`)「……」

('A`)「……え、なんだこれ?」

('A`)「なんだ、これ?」

('A`)「……」

('A`)「……いや、これは……」

('A`)「……」

('A`)「……うわぁ。悪趣味な、悪戯だなぁ」

('A`)「誰だよ、こいつ。気持ち悪ぃ」

('A`)「飯食って寝るか。気分悪いわ。ちぇっ」

('A`)「……」

('A`)「……」

('A`)「……しらねーよ」


442 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:41:07 ID:wTJy9Oio0

           ('A`)シジフォスの岩達 のようです 

                          終わり

rano18.jpg




443 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/05/05(木) 02:43:51 ID:wTJy9Oio0
終了 おそらく絵の作者の人の期待してるものとはかけ離れてたと思うけど、書いてて楽しかったのごめんね 

絵題ありがとう

後二個くらい他の絵題で話思いついたのあったけど間に合わなかった悔しい


 





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