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目隠しのようです

2010/12/18 Sat 10:00

 
814 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:45:28.12 ID:B1QaLNnoO




きみをあいしてる
ずっとずっと、きみだけをあいしてる





目隠しのようです


815 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:46:25.09 ID:B1QaLNnoO
私は此処に居る。
私は此処に居る。
私は此処に居る?

疑問符を浮かべた途端に彼の指が頬に触れて私は安堵する。
闇にぼやけていく輪郭を彼の指が辿って、私は確立する。

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう」

ちゃんと言えただろうか。
声帯が震えたのは解ったけれど、発した言葉がちゃんと言葉になったか確認する術が私には無い。
それも、彼を待たなければならない。


816 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:47:28.81 ID:B1QaLNnoO

どういたしまして

手の平をなぞる文字を感じて、私は笑顔を零す。
上手く笑えているだろうか。
彼はどんな表情を浮かべているだろうか。
それも私には確認出来ない。

ζ(゚、゚*ζ「あなたの顔が見れたら良いのに」

ぽろりと零した言葉に、私の手を握っている彼の手が強張る。
それから少ししてまた指が文字を紡ぐ。

ごめん

ああ。


817 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:48:21.48 ID:B1QaLNnoO
そんなつもりじゃなかったのに、彼を困らせてしまったらしい。
申し訳なくなってぺこりと頭を下げる。

ζ(- -`ζ「私こそごめんなさい。あなたにはとても感謝してるのに」

いいんだそんなこと
たいしたことじゃない

ζ(゚ー゚*ζ「大したことよ。国の英雄だもの」

……

私がそう言うと彼はいつも黙ってしまう。
彼は恥ずかしがり屋さんなのだ。


818 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:49:17.93 ID:B1QaLNnoO

そろそろいくね

ζ(゚、゚*ζ「もう?」

ごめんよ

ζ(゚ー゚*ζ「……仕方ない、よね。うん、いってらっしゃい。頑張って」

できるだけはやくもどるから

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

いってきます

ζ(^ー^*ζ「いってらっしゃい」

手を振って彼が出ていくのを待つ。
もうドアを開けただろうか。
外に出ただろうか。
ドアを閉めただろうか。

ζ(゚ー゚*ζ「……もう良いかな」
 
 
819 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:50:17.58 ID:B1QaLNnoO
私はベッドに倒れ込んだ。
それから手探りでクッションを探し、顔を埋める。
彼が居ないと何もする事が無い私の日課だ。

ζ(-~-*ζ「うー」

足をばたつかせたりころころ転がったり。
こんな姿とても彼には見せられない。
弱音も、吐かないようにしなければいけないし。

せめて音か光のどちらか一つでも有れば、彼が戻って来るまでの時間をこんなに持て余さなくてすんだだろうに。
本を読んだり音楽を聴いたり。

何より、もっと彼の存在を感じられたはずだ。


820 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:51:25.46 ID:B1QaLNnoO
ζ(゚、゚*ζ「我が儘だなぁ、私」

魔族の進行を阻み、退け、国と民と私の命を救ってくれた勇者。
さらに亡くなったお父様に代わり、本来ならば国を治めねばならない私の代役を買って出てくれている。
これ以上彼に何を望むのか。

それでなくとも彼は命しか救えなかったと泣いたのだ。
握られた手の上に落ちた雫を私は忘れない。


821 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:52:56.79 ID:B1QaLNnoO
ζ(゚ー゚*ζ「モララー」

彼の名前を口にすれば耳に響かなくても、喉が震える。
それだけで私の心は幸せに満たされるのだ。
私を救い上げてくれた人。
誰よりも何よりも愛おしい名前。

ζ(-ヮ-*ζ「好きよモララー。大好き」

胸に溢れる喜びに私はそっと目を閉じた。



823 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/17(金) 23:54:19.97 ID:B1QaLNnoO
─────


執務から戻ると彼女は午睡の最中だった。
風邪をひいてしまわないようにシーツを掛けてやり、ベッドの脇にある椅子へと座る。

( "ゞ)「……」

安らかな寝顔を眺めていれば、胸に溢れるのは喜びと安らぎと彼女を騙している事への罪悪感。
どうしても彼女に側に居て欲しかった。
だから光と音を奪った。

彼女に目隠しをした。


824 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:00:08.28 ID:tl+n8LucO
荒れ果てた国を見せる訳にいかなかった。
民の怨嗟の声を聞かせる訳にいかなかった。
跋扈する魔族の姿を声を認識させる訳にいかなかった。

そして何より、私がそれを成した者であると知られたくなかった。
知られて、拒絶されるのが恐ろしかった。

( "ゞ)「敵も味方も欺く、冷徹なる死霊の王」

この私がこんな小娘一人に囚われていると誰が知るだろう。
触れる事すら躊躇い、指先で言葉を綴るだけで精一杯なのだなどと誰が。


825 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:01:14.92 ID:tl+n8LucO
ζ(- -*ζ「もらら……」

幸せそうに呟きながら彼女が寝返りを打つ。

何もかも奪った私が彼女に与えられるのは偽りの幸福だけ。
何も変わっていないように見せ掛け、この手で殺めた男の振りをする。

偽りの王国。
偽りの姫君。
偽りの恋人。

彼女を取り囲むのは偽りばかり。
ああけれど。


827 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:02:43.90 ID:tl+n8LucO

( "ゞ)「君を愛してる。ずっとずっと、君だけを愛してる」

君の手の平に贈る、この言葉だけは真実だから。

君は何も知らなくていい。
君は私の与える物だけを受けとっていればいい。
死者は君に何も与えない。

ただそこで君を見ているだけ。

( "ゞ)「私だけが君を守る」

彼女に縛られた死霊を横目に、握った手の温もりに幸福だと笑みを零した。



目隠しのようです






828 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:04:09.25 ID:tl+n8LucO
投下終了です
元ネタというか谷山浩子さんの「王国」がモチーフ
あまりにタイムリーな企画が持ち上がってたんでそれまで置いとこうかと思ったけど、早く投下したくて我慢出来んかった
早漏れ野郎ですまん

支援有難うございました



829 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:18:52.54 ID:JYzzX4SNO
王国好きだなぁ

おつ!


830 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:20:28.22 ID:0y/Sy2VKO

この幸せなのに救えない感じ、イイヨイイヨー


831 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 00:27:59.02 ID:apOm6hfp0
深いな…乙


832 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/18(土) 01:33:44.94 ID:gc4jACDLO
乙乙


 
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