(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです
2010/10/30 Sat 02:41
428 :(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです:2010/10/28(木) 20:45:16.64 ID:/01ZPdZC0
荒野に吹きすさぶ一陣の風──
風を遮る二つの影が、そこにあった。
“修羅”と呼ばれた彼らを見守るのは、
空と、
大地と、
そして太陽だけ。
(,,メД゚)「…………」
狂戦士(バーサーカー)と呼ばれた男、ギコ。
分厚い黒甲冑に身を包み、
身の丈ほどもある巨大な剣──
通称“竜殺し”を携えていた。
( ・∀・)「…………」
聖騎士(プリンス)と呼ばれた男、モララー。
その流麗かつしなやかな身のこなしと、端整な顔立ちは
まさしく天から舞い降りた聖なる騎士──
人々は彼を“救世主”と呼んだ。
430 :(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです:2010/10/28(木) 20:47:23.53 ID:/01ZPdZC0
(,,メД゚)「──しぃの仇を討たせてもらう」
ギコは巨大な剣を肩に担ぎ、戦闘態勢へと入る。
( ・∀・)「しぃ? 名前は知らないが……“生贄”になった娘のことかな。
君の気持ちは痛いほどよくわかるが、仕方のないことなのさ」
モララーは淡々とした口調で言った。
(,,メД゚)「仕方ないだと……!?」
ギコの剣幕がより一層深まる。
( ・∀・)「そうさ。
“平和”のためには、少々の犠牲を払わなくてはならない。
新世代の平和のための生贄として、彼女を捧げたのだ。
少数の命と引き換えに、この世界にいる数十億の幸せを優先したまでさ」
(,,メД゚)「……貴様の考えは間違っている」
( ・∀・)「僕は間違っているとは思わない。
これが僕の正義だ。
誰がなんと言おうが、僕は僕の正義を貫く。
それを邪魔しようとする者があれば、
僕は誰であろうと容赦なく葬り去る」
(,,メД゚)「最後に生き残った者が正義というわけか。なら……」
ギコは深々と腰を下げ──
(,,メД゚)「───やはり俺のほうが正しいというわけだッ!!」
431 :(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです:2010/10/28(木) 20:49:22.44 ID:/01ZPdZC0
疾駆。
巨大な甲冑と大剣は、一つの黒い影となって突進する。
(,,メД゚)「ゴルァ!!」
横薙ぎに、一閃。
しかし、そこにはモララーの姿はない。
( ・∀・)「ふっ、イノシシ武者らしい攻撃方法だ」
モララーは“竜殺し”の刀身の上に立ち、
不敵な笑みを浮かべていた。
( ・∀・)「どんなに威力が高かろうと、当たらなければ意味がないのだよ、ギコ君」
──疾ッッ」
今度はモララーの攻撃。
サーベルと呼ばれる細身の刀身をギコの甲冑に振り下ろす。
しかし、サーベルはいとも簡単に甲冑に弾かれてしまう。
(,,メД゚)「いくら攻撃が当たろうが、威力がなければ意味がないぜ」
( ・∀・)「…………」
両者は拮抗としていた。
ギコが大剣を振るい、モララーが反撃。
しかしどちらも大した成果は得られなかった。
433 :(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです:2010/10/28(木) 20:51:47.13 ID:/01ZPdZC0
( ・∀・)(このままでは決着がつかないな。
持久力勝負に持ち込まれたらこちらに分が悪い。
ならば!)
突然、モララーは手に持つ武器、サーベルを地面に投げ捨てた。
そして背中から、サーベルよりも更に細い剣を取り出す。
( ・∀・)「これで貴様も終わりだ」
(,,メД゚)(どういうことだ……?)
サーベルですら甲冑で簡単に弾けたのだ。
それよりも細い、今にも折れそうな針の如き剣で一体どうしようというのか。
まさか、勝負を放棄したのか?
しかし、モララーのあの目──勝負を捨てた者の輝きではない。
( ・∀・)「行くぞ、イノシシッ!!」
モララーは、目にも止まらぬ速さで走り出した。
(;メД゚)「くっ……」
凄まじいスピードで、ギコを中心に円を描くように旋回する。
おそらくモララーは、唯一甲冑に覆われていない頭を狙ってくる。
しかし、それは何度も防御してきた。
いくら早かろうが、見切ることは容易い。
434 :(,,メД゚)ギコはバーサーカーのようです:2010/10/28(木) 20:54:01.87 ID:/01ZPdZC0
背後に殺気を感じた。
攻撃がくる。
しかし大丈夫だ。頭さえ守れば──
(,,メД゚)「!!!!」
モララーは、目の前にいなかった。
否。そこにいなかったわけではない。
ただ、視界に映っていないだけなのだ。
モララーは、頭ではなく胴体に刃を突きつけていた。
そしてその刃は見事にギコの身を貫いていた。
(,,メД゚)「ガハッ……」
状況が飲み込めない。
何故、俺は攻撃を受けている。
一体何があったのだ……!?
モララーはギコから剣を引き抜いた。
血が飛び出し、地面をぬらす。
モララーは一足で後ろに飛びのいた。
436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 20:56:36.00 ID:/01ZPdZC0
( ・∀・)「“線”で捉えきれないのなら、
“点”を捉えるまでさ」
つまりモララーは、甲冑のわずかな隙間から、あの針のような剣を突き刺したのだ。
──甲冑の中に着込んだ鎖帷子の網目よりも細く鋭い、その剣で。
甲冑にあったわずかな隙間。
あるか無いかの隙間を、戦いの中で見切るその異常な動体視力、
それを寸分の狂いもなく狙える正確さ、集中力。
そして何より、実力の差。
それが勝負を決定付けた。
(,,メД゚)「うう……ぐっ……」
急所をやられたらしい。
視界が霞む。
口からは一筋の血。
全身はびっしょりと冷たい汗に覆われていた。
437 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 20:58:36.88 ID:/01ZPdZC0
( ・∀・)「どうやら勝負は僕の勝ちのようだ。
もう一度君を刺せば、君は確実に絶命するだろう。
そして僕は、この世界に救世主として君臨する。
“悪”を根底から滅ぼしてやるのさ。
僕に逆らう君のような存在は全て消滅させ、
争いのない平和な社会を生み出す。
人々は後世に伝えるだろう。
モララーという名の神が、新たなる世界を創り出したのだと」
モララーが、一歩、一歩とギコに近づく。
ギコはその場にがっくりと膝をついた。
もはや、これまでなのか。
( ・∀・)「死ね」
モララーは、ギコの額に突きを繰り出した──
447 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:07:09.66 ID:/01ZPdZC0
* * *
(*゚ー゚)「ギコ兄ちゃん、だっこしてー!」
(,,゚Д゚)「やだよ。一人で歩けよゴルァ!」
(*;ー;)「うっうっ……」
(,,゚Д゚)「わ、わかったよ。ほら来いよ」
(*゚ー゚)「わーい!」
(,,゚Д゚)「やれやれ……しぃは子供だなぁ」
(*゚ー゚)「しぃ、子供でいいもん。
だって、お兄ちゃんにだっこしてくれるから!」
(,,゚Д゚)「……へん。そんなこと言われたってうれしくなんかないや」
(*゚ー゚)「お兄ちゃんのうそつきー。あははは!」
452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:08:35.68 ID:/01ZPdZC0
(*; -;)「おにいちゃん!!」
(,,゚Д゚)「しぃ!!」
( ・∀・)「よし、これでこの村の幼女は全てか。
城まで連れて行き、予定どおり生贄として捧げるのだ」
(,,゚Д゚)「お前! しぃを返せゴルァ!!」
( ・∀・)「なんだこのガキは?
うっとおしいからどこかに遠ざけろ」
兵1「はっ」
(,,゚Д゚)「クソ、離せゴルァ!!」
(*; -;)「お兄ちゃん! 助けてお兄ちゃん!うわあああん」
兵2「黙れ、このクソガキ!」
(* ー )「……っ!」
兵2「あ、やべ……勢いあまって殺しちまったぜ。
まあいいや、一人ぐらい減っても気づかれないだろ。放り出してしまえ」
454 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:10:40.56 ID:/01ZPdZC0
静かに横たわるその体を、ギコはゆっくりと抱き起こした。
(,,;Д;)「しぃ……なあ、返事してくれよ……」
それは、何も答えなかった。
(,,;Д;)「ほら、だっこしてあげるから」
それの首が、人形のようにがっくりと折れ曲がった。
(,,;Д;)「しぃ……しぃ……」
名前を呼び続けても、返事はなかった。
これが、これが奴のいう、
モララーのいう“平和”の姿なのか……?
どうしてしぃが死ななければならない?
どうして俺が悲しまなければならない?
どうして人を犠牲にしなければならない?
こんなものが、
こんなものが平和の姿だというのなら、
俺はその平和をぶち壊してやる。
涙を流さなければ勝ち得ない正義など──何の意味もない!
455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:12:01.12 ID:/01ZPdZC0
(,,゚Д゚)「がああああああああああああああああ!!!!!!」
ギコは幾度となく戦場を駆け抜けた。
流れ矢が頬をかすめようが、
爆弾が上から降ろうが意に介さない。
毎日が、地獄の日々だった。
(,,メД゚)「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ひたすらに、駆ける。
いつしか体には無数の傷跡が出来た。
痛みなど、気にしている暇はない。
ギコは一心不乱に駆け続けた。
(,,メД;)「────────────────────!!!!!!!!!」
手には剣が握られていた。
剣は次第に軽く感じるようになり、次々と新しい剣に持ち替えた。
いつしか剣は、身の丈を超えるほど長大となった。
それを見た戦場の男たちは、一様に目を奪われた。
いつしかギコは、狂戦士(バーサーカー)として恐れられた。
世界、そして天国にまでその名を轟かせるために──
456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:13:15.10 ID:/01ZPdZC0
* * *
( ・∀・)「死ね」
モララーは、ギコの額に突きを繰り出した──
( ・∀・)「!!!」
しかし、モララーの剣はギコの額を貫くことなく、遮られていた。
(,,メД゚)「…………」
額ではなく、手のひらに。
甲を突き破っていたが、そのままギコは剣を握り締める。
(;・∀・)「ぐっ……こいつ、どこにこんな力が……」
ギコは、モララーの腕をがっしりと掴む。
458 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:14:36.83 ID:/01ZPdZC0
(;・∀・)「離せ、この死に損ないが!!」
モララーは、ギコに腕を掴まれたまま、剣をギコの喉に突き刺す。
ギコの口から噴水のように血が湧き出た。
しかし、なおも腕は離さない。
(;・∀・)「化け物め……ッ!!」
モララーが鎧を脱いで逃げようとした直後──
(;・∀・)「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ギコは“竜殺し”でモララーの胴体を真っ二つに切り裂いた。
459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:16:21.86 ID:/01ZPdZC0
(,,メД゚)
空が見える。
雲ひとつない晴天。
先ほど行われていた死闘にはまったく不釣合いなほど美しい光景。
モララーは死んだ。
救世主が失われた世界は、今まで以上に秩序が乱れるだろう。
『生き残った者が───正義───』
一体正義とは何なのだろうか。
その答えは、永遠に見つかることはないだろう。
しかし、その時ギコの脳裏にあったのは世界のこれからなどではなく、
草原の真ん中でこちらに手を振っているしぃの姿だった。
fin
462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:18:12.32 ID:/01ZPdZC0
支援ありがとうございました
感想とか批評あればお願いします
463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:20:26.10 ID:IpHZGu1yO
乙
これはいいな
464 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:24:38.34 ID:pJcA3kJU0
乙カレー
今のままでも十分面白い
長編やると更に伸びそうな気がする
465 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:28:33.11 ID:ZoI/epaz0
長編でじっくりやってほしかった
疑問は片手で身の丈ほどの剣を振るえるのかとモララーの剣を手で遮ったのが腕を掴んだかな…
466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 21:42:18.42 ID:/01ZPdZC0
>>465
最初は20話ぐらいの中編の予定だったけど、
ストーリーが思いつかないから書きたいことだけまとめて総合短編にしてみました
モデルはベルセルクのガッツだけどあの剣よりは細くて軽い設定。片手で振るえなくもないです
手は甲を突き破ってそのままモララーの腕を・・・ゴリッとこうグロい感じに・・・
必死に言い訳考えたけど駄目だった。精進してきます
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