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538 :ショボンは、夢を見るようです:2009/12/13(日) 02:23:55.96 ID:TPpMQW/e0


例えば、世界が平和になったとしよう…。そこで君は何を望む?平和な世界。平和な人々。そこには全てが満ち足りている。

( ・∀・)「そこで、君は、何を望む?そうだ。望むものなどないのだ。そこは、完全な世界だからだ。
しかし、それでいいのか?私が思うに完全とはどこにも行き着くことのない、どうしようもないものなのだ」

(´・ω・`)「それは、どうして?」

( ・∀・)「不完全とは常に前進する永久運動の機械のようなものだ。完全さを求めてね。
しかし完全になれば、どうだろう、もはや行き着くことがない。死んだも同然になる。我々は常に不完全でなければ、生きてゆけない」

 
 
539 :あ、「全身」誤字すんません。:2009/12/13(日) 02:25:55.25 ID:TPpMQW/e0
彼は不思議な人だ。僕の夢の中にたまに現れる。その夢の中では、僕は意識が明瞭で、自分の肉体の鼓動を感じることさえできる。
明晰夢に似ているが、それに比べれば、はるかに感覚が澄んでいる。
その夢の中では、どうしてだかいつも西洋の墓場だ。とても天気が良くて、空が見渡せる丘の頂上にあった。
彼はその墓場の中にある一つの墓石の上に座っている。刻まれている名前は、ぼかすように削られていて読めない。
そして僕は、その墓石の前、気持ちの良い草地に佇んでいる。
彼はいつも喪服のような、黒いスーツを着ていた。時折、ロングピースを胸のポケットから出し、一本吸う。後ろの束ねられた長く黒い髪。東洋系の、しかし西洋のような雰囲気をかもし出す顔。
対照的に僕はいつもパジャマだ。寝るときに着るパジャマ。こんなのって何か理不尽だ。

( ・∀・)「今日は何の話をしようか?」

僕たちはよくこうやって話をしていた。状況に対して疑問などなかった。夢に対して、疑問がないのと同じだ。



540 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:28:25.85 ID:TPpMQW/e0
(´・ω・`)「僕たちが出会ったときを覚えてる?」

( ・∀・)「うむ。私がこうやって座っているときにいきなり君が現れたもんなあ。あれは驚いた。
ここには誰もこないと思っていたからね。おまけに君は無感動に周りを眺めていたからね」

(´・ω・`)「明晰夢っていうのをよく見ていたから…。同じかなと考えていたんだ。でもこの世界は違うみたいだ。
…そういえばこの世界については、まだ聞いてなかったね。すごく今更だけど」

彼は快濶に笑い、僕を見据えた。こんな気持ちよさそうに笑う男を見たことがない。

( ・∀・)「うむ。では今日はこの世界について語ろう」

そう言って彼は足を組み替え、煙草を一本取り出し火を点けた。吐き出した煙は気持ちよさそうに風に流され、丘から見下ろす行ったことの無い町へと向かう。
この町は何だろう。でも、なんとなく分かる。この町は、ただ必要だからここにあるのだ。ただ見下ろすだけのために。

( ・∀・)「昔、化物と呼ばれた男がいてね…」

その男にはとても大切なものがあった。そしてその大切なものは彼にしか見えず、彼にしか触れられなかった。
そう、それは彼のささやかな恋心だ。彼は眠りの先にある夢の中に現れる女性に恋をしていた。
夢に現れる女性は広い草原の中、男の前に立っていた。数多の草々が波打ち、太陽は彼女の背面に輝き、それはそれは美しかった。
彼女は肩までにある、黒く艶のある髪をたなびかせ微笑んでいた。
それは一瞬の夢。ただそれだけの夢。しかしその夢は彼の心を強く捉えた。そう、恋に落ちたのさ。



542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:31:17.56 ID:TPpMQW/e0

(´・ω・`)「そんな一瞬のことで恋に落ちることがあるの?」

( ・∀・)「君の世界に良い言葉がある。運命の人、さ」

(´・ω・`)「それは寒い言葉だなあ…」

( ・∀・)「いつか君にも分かるさ」

そのためにも彼は少しでも、彼女に出会う前に素晴らしい人間になると決め、行動に移した。
そして会って、振り向かせるのだ。そして、彼女を幸せにするのだ、と。
様々な経緯は長いから省略するが、心に決めたとおり彼は少しずつ、しかし着実と地位、名誉、そうありとあらゆる力を手に入れた。

だが…彼はやがて自らの力に呑まれ、大切なものを見失っていた。



543 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:35:00.92 ID:TPpMQW/e0

( ゚∀゚ )「まだ…まだだ。もっと、もっと」

彼はいつしか、彼女の存在を忘れていた。自我や力が巨大になりすぎたのさ。もはや彼は止まらぬ。

(`・ω・´)「あなたは…あなたはそんなに力を得て、そこまでして、さらに何を求めるのです!」

彼には従者がいた。彼に憧れ、彼に尽くすことを誓った従者が。彼らの前には今たった自殺したと思われる老人の姿があった。そしてその死によって彼はさらに力を得る。さらなる権力を。
しかし従者は混乱していた。この人は何故、ここまで巨大で、恐ろしくなったのだろうと。

(  ゚∀゚ )「求める?私が?一体何を?私はもはや人ではないのだよ」

彼を恐れるものは数多もの存在していた。そして影ではこう呼ばれていた。化物、と…。
彼は乾いた笑いを上げ、打ち抜かれた老人の頭を掴み、見開いた死体の目を睨んだ。



544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:36:21.67 ID:TPpMQW/e0

(  ゚∀゚ )「私はもはや人間を喰らう化物だ。腹が減った。腹が減った。腹が、減った」

(`・ω・´)「何故…あなたはあんなにも優しかった。あんなにも清らかだった」

(  ゚∀゚ )「何を言う。どんなに清らかな土でも、毒を孕んだものは宿る。そうだろう?」

彼はそう言って微笑んだ。その笑みを見て、従者は体中に虫が這いずり回るような寒気を覚えた。ささやかな陽だまりのような、そんな笑顔が今では…あらゆる絵画でみた化物の笑みに変貌していた。
衝動的に従者は死体の傍らに走り、その冷たい手から銃を奪った。そして銃口を彼へと向けた。

(`・ω・´)「あなたは狂った!どうしてだ!あなたは言ったじゃないですか…守りたいものがあるのだと…」

従者の目には涙が溢れていた。誰よりも誇らしかった。彼の従者という立場が。誰よりも愛していた。彼を。

(  ゚∀゚ )「守りたいもの…。ああ、今も変わらないさ。そうだとも。そのために、今私はここに立っている。そしてさらに前進する」

(`・ω・´)「行かせません。あなたを今、ここで殺す」

彼はまた笑った。さっきよりも高らかに笑いを響かせる。



545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:38:55.32 ID:TPpMQW/e0

(  ゚∀゚ )「そうかい?ああ、そうだね。もはや私は君の敵だ。人間の敵は化物だ。天使と悪魔。コインの表と裏。人間と化物。現実と夢!苦しみと愛…。お前に分かるか!この苦しみが。いつだ。いつ報われる。私はいつ救われる?」

(`・ω・´)「それでも、あなたは救いには程遠いほどにたくさんの人間を喰っていきました。私は、これ以上苦しむ人間も、恐ろしいあなたも見たくない」

彼は右手の掌を顔に被せ、指の間から従者の目を見つめた。その目は、輝きが無く、空虚だけが佇んでいた。そして手を下げる。彼の顔には血が大量に付いた。先ほど死体の頭を掴んだ時についたものだ。

(  ゚∀゚ )「ふん。どこまでも善人面だな。この私に加担している時点でお前は…」

彼が皆まで言わずに、従者は引き金を引いた。そして弾が発射され、彼の右目に刺さり、血が飛んだ。
彼はそのまま少し静止し、やがて膝から崩れ落ちた。

まるで時間が静止したようだ…。硝煙。血の匂い。二つの死体。

やがて時間がまた動いたかのように、従者は自らのこめかみに銃を向け、そしていささかの躊躇もなく引き金を引いた。



546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:42:21.94 ID:TPpMQW/e0

(´・ω・`)「随分暗い話だねえ。でも、それがこの世界となんの関係があるの?」

( ・∀・)「…その化物が私さ」

(´・ω・`)「え?」

( ・∀・)「me too」

(´・ω・`)「あらら。これはどうも、ってなんでかしこまらなきゃならないの」

彼はまた笑った。ううむ。やっぱり今聞いた話との彼と随分ちがうなあ。

( ・∀・)「この世界はね、私の作った私の世界だ。まあ、いわば夢と同じレベルの世界に属するね。そしてここは、私の煉獄さ」

(´・ω・`)「えっ、それって僕やばくない?」

( ・∀・)「ああ、君は大丈夫」



548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/13(日) 02:47:06.08 ID:TPpMQW/e0
少し焦ったぞ。…煉獄、か。しかしこの世界が何故煉獄なんだろう?煉獄といえば、もっとこう鬼が踊り狂ってて、火がぼうぼうと…。

( ・∀・)「私が課した、私の煉獄だ。私は私の罪が償われるまでここから出られない。人はね、死んだら地獄にも天国にも行かない。強いて言えば、どこにも行けるんだ。だからこそ同時に、なにも無いとも言えるがね」

(´・ω・`)「それで、どうすればお兄さんの罪は…?」

彼は微笑み、墓石から下りて立ち上がった。そして空に向かい大きく体を伸ばしながら言った。

( ・∀・)「私が納得するまでさ」

(´・ω・`)「それって罪じゃないじゃん」

そう言うと彼は大きく笑って、思わず僕もつられて笑った。…きっと従者さんもこの笑顔を見ていたのだろうな。

なるほど。優しい笑顔だ。



「君にまた逢えて、私は幸せだ」





 
総合短編(シリアス・鬱・ホラー) | コメント(0) | トラックバック(0)
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