物語が終わるようです
2010/09/04 Sat 19:17
214 :物語が終わるようです:2010/09/04(土) 03:24:36.81 ID:U83AyvGm0
物語の終末は、切ないほどあっさりしている。
これが小説であったならば、その終わりに満足感を得ることができただろう。
これが劇であったならば、その終わりに幸福感を得ることができただろう。
(´<_` )
けれど、これは現実である。
残ったものは虚無感と憎い男の一部だけだ。
弟者は一人墓標の前にたたずむ。
思い出すのは物語が終わったあの瞬間のことだ。
215 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:27:23.80 ID:U83AyvGm0
(,,゚Д゚)「ようやく見つけたぞゴラァ」
屈強な男が睨みつけているのは、細い体をした男だ。
( ゚∀゚)「あー。お前は確か……」
(,,゚Д゚)「てめぇの足の弟だ」
ジョルジュは己の足を見た。
( ゚∀゚)「ああ、これか。
お前の兄貴の足、すげーぞ」
(,,゚Д゚)「うるさい!」
怒りに任せて一歩踏み出す。
土が蹴り上げられ、ギコの体はジョルジュへと近づいていく。
216 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:30:24.28 ID:U83AyvGm0
( ゚∀゚)「お前も速いな」
でも、とジョルジュは薄ら笑いを浮かべながら続ける。
( ゚∀゚)「お前の兄貴の方が速い」
ギコがジョルジュの顎に拳を当てる前に、ジョルジュは先ほどと同じだけの距離をあけて立っていた。
小さく舌打ちをする。
数年前の兄の足に、自分はまだ届いていない。
屈辱を感じると同時に喜びも感じた。
尊敬していた兄は、まだ兄として己の前に存在しているのだ。
忌々しい男の足としてではあるが。
(,,゚Д゚)「ああ、そうだな」
不敵に笑い、ジョルジュの体を見る。
細い体ではあるが、その体は妙なバランスだ。
217 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:33:26.37 ID:U83AyvGm0
一瞬だけならば、違和感を持たない。
しかし、観察するようにその体を見れば奇妙な違和感を持つ。
ギコはその違和感の理由を知っていた。
(,,゚Д゚)「また誰かの体を奪ったか」
( ゚∀゚)「あれからもたくさん貰ったし、捨てたさ」
元々、ジョルジュが持っていた体など、心臓しか残っていないだろう。
彼は人の一部を己の体にすることができるのだ。
強い体を求め、今の部位よりも良い性能を持つ者を見つければ殺し、奪う。
( ゚∀゚)「オレもずいぶんと最強に近づいたものだ」
(,,゚Д゚)「己の体を捨てた奴が何を言う」
218 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:36:19.85 ID:U83AyvGm0
( ゚∀゚)「ヒャヒャヒャ。そうだな。オレの最強はオレの力じゃねーもんな」
無論、ジョルジュが今の体を鍛えればさらなる強さを得ることもできる。
( ゚∀゚)「でもさ、オレって努力とか嫌いだし」
強くなるための修行や努力がジョルジュは嫌いだった。
怠けものではあったが、強くなりたいという思いが人一倍強かった。
ジョルジュは自分の力を神からのプレゼントだと言う。
力を得たために怠けるようになったのか、怠けていたから力を得たのか。
堂々巡りの疑問にギコは鼻を鳴らす。
(,,゚Д゚)「どーでもいいさ」
目の前にいる憎い男が死ねばそれでいい。
尊敬していた兄を、誰よりもつよいと信じていた兄を殺した男だ。
そいつを殺せばギコの中で全てが解決する。
219 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:39:33.24 ID:U83AyvGm0
( ゚∀゚)「来いよ」
挑発に乗り、再びギコが駆け出す。
相手も、次は回避などという面倒なことをする気はないようだ。
剣が抜かれる。
生身の体で剣と戦うというのは無謀にしか見えないが、ギコには絶対の自信があった。
今の自分ならば剣を砕くこともできる。
刃が肉を裂く前に敵の骨を砕くことができる。
できないのであれば、死ねばいい。
その程度の覚悟はとうの昔にしていた。
(,,゚Д゚)「覚悟しろ!」
今まで修行を重ね続けていたギコの目が、一瞬の線を捉えた。
ジョルジュが放った剣筋ではない。
むしろ、線はジョルジュの心臓を狙っている。
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:39:34.80 ID:vd+plo240
ジョルジュがいい感じに悪党だな
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:41:27.24 ID:DAFOVHHQ0
続けたまえ!
222 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:42:48.74 ID:U83AyvGm0
( ゚∀゚)「うおっと」
線をあっさりと避ける。
地面には矢が刺さっていた。どうやら、線の正体はこの矢だったようだ。
「流石だな」
( ゚∀゚)「今日は客が多いな」
落ち着いた声が聞こえた。
余裕を見せつけるようにジョルジュはギコから目を離す。
この隙をギコが逃すはずもなく、一瞬で間合いを詰める。
狙うは内臓だ。
( ゚∀゚)「おっと。こっちのお客さんも放っておいたら失礼だよな?」
顔の向きはそのままで、ギコの拳を受け止めていた。
目の前にある現実が信じられなかった。
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:44:54.01 ID:HbcsH68t0
サシがよかった、、、
男の勝負はサシじゃないと、、、
224 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:45:19.25 ID:U83AyvGm0
積み上げられていた自信が崩れていく。
自慢の拳が片手で受け止められてしまった。それも他の者を気にかけながらだ。
(,,゚Д゚)「くそっ……!」
( ゚∀゚)「んで、そちらのお客さんは?」
(´<_` )「…………」
現れたのは細目の男だ。
冷静そうに見えるが、体から抑え切れぬ殺気が溢れている。
おそらくは、彼も身内の体を奪われた者なのだろう。
(,,゚Д゚)「こいつはオレが倒す!」
拳は未だに掴まれたままだが、新たに現れた男へ吼える。
冷たい視線が返された。
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:46:38.19 ID:5AeZibap0
弟者か!?
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:48:57.94 ID:iYeOtkvT0
ギコ、若いな
227 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 03:49:36.33 ID:U83AyvGm0
(´<_` )「無理だろ。
たぶん、オレだけでも無理だろうけど」
殺気を放っているわりに、弟者は冷静だった。
淡々と言葉を紡ぎ、矢をジョルジュに向ける。
(´<_` )「だから、協力しようじゃないか」
( ゚∀゚)「おー。怖いねぇ」
弟者の放った矢が、ギコの拳を掴んでいた手へ向かって飛ぶ。
ジョルジュは手を離し、後ろへさがる、その間に弟者はゆっくりとギコの方へと歩み寄った。
細い目の奥にある感情は読めない。だが、ジョルジュへ対する憎悪は同じなのだろう。
心の中で天秤が揺れた。
プライドを取るのならば、弟者の手を払わなければならない。
(,,゚Д゚)「……協力させてもらう」
これまでの自信は脆くも崩れ去った。
残された手段があるのならば、無様に手を伸ばさずにはいられない。
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 03:50:53.29 ID:pJoO92fy0
熱くなってきたぜ
229 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:00:06.39 ID:U83AyvGm0
(´<_` )「なら、作戦はこうだ」
男は冷たい言葉で作戦を紡ぐ。
ギコはそれを黙って聞いていた。
(,,゚Д゚)「わかった」
( ゚∀゚)「作戦会議は終わったかー?」
(´<_` )「ああ」
静かに頷く。
ギコが駆けだした。弟者は矢を引く。
繰り出される拳をあっさりと避け、右足でギコの腹を蹴り上げる。
小さなうめき声の向こう側から、風を裂く音が聞こえた。
片足を上げている状態だ。簡単には避けられないだろうと思った。
( ゚∀゚)「よっと」
予想ははずれ、もう片方の足でさらに矢を蹴り砕く。
230 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:03:16.42 ID:U83AyvGm0
矢を蹴り砕く際の脚力で宙で一回転する。
地面に着地したジョルジュが見たのは、苦悶の顔をしながらも拳を握っているギコの姿だった。
( ゚∀゚)「うおっ」
始めて一発の攻撃を喰らう。
受けたのは腹でも顔面でもなく、足だった。
バランスを崩し、地面へと近づいていく。
どうにもできなくなった瞬間に、目に映ったのは矢の先端だった。
231 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:06:16.74 ID:U83AyvGm0
( ゚∀+)「あー。死ぬんじゃねーの」
(,,゚Д゚)「死ね」
( ゚∀+)「手厳しいねぇ」
ジョルジュの体は最強だった。
最速の足と、豪腕の腕。鋼鉄の体に先読みの瞳。それら多くを持っていた。
(,,゚Д゚)「あいつのおかげさ」
足がギコの兄から奪われたものならば、そこには鋼鉄の防御力などないだろうと告げた。
あの瞳は弟者の兄のものらしい。
(´<_` )「オレはお前の目を兄者の墓前に供えれたらいい」
矢が刺さったまま地面に倒れているジョルジュへと近づく。
( ゚∀+)「手荒な真似はやめてくれよー」
(´<_` )「だが断る」
232 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:09:28.45 ID:U83AyvGm0
目に突き刺さっている矢に触れる。
痛みを感じていないのか、ジョルジュはヘラヘラと笑ったままだ。
(,,゚Д゚)「…………」
殺すということにためらいはなかった。
そのために今まで生きてきた。だが、これは望んだ結末ではない。
自分の手で兄の仇をとったわけではない。
(,,゚Д゚)「……こんなんで諦められねえよな」
横目で見た弟者には迷いがなかった。
諦められないのはどちらも同じだ。ここで退いてしまえばすべてが無駄になる。
それが何よりも怖かった。
( ゚∀+)「実はさぁ」
矢が抜かれる。
目があった場所は空洞になり、赤い液体がわずかに流れている。
234 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:12:27.03 ID:U83AyvGm0
( ゚∀ )「いつかはこうなるってわかってたんだよな」
望んでいたと言い代えてもいい。
努力することが嫌いだった。努力しなくてもいい力があった。
退屈な時間が過ぎていく。泣きたいくらい何もない時間だ。
弟者はもう片方の目を取ろうと矢を握る。
( ゚∀ )「殺されるときにさ、何か言おうってずっと思ってたんだ」
例えば、呪いの言葉。
例えば、祝福の言葉。
例えば、命乞いの言葉。
( ゚∀ )「だけどさあ」
矢がぷつりと刺さる。
( ∀ )「台詞は思いつかなかった、本当にゴメン」
両目を失った男は小さく呟いた。
236 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:15:19.82 ID:U83AyvGm0
(´<_` )「構わんよ」
( ∀ )「そうか。それはよかった」
二人の言葉をギコは横で聞いていた。
兄の足を持って帰ろうとは思えない。そのためにここまできたわけではない。
ただ兄の影を追ってきただけだ。
なんとも虚しい結末だ。
(,,゚Д゚)「諦めていれば」
何か変わったのだろうか。
始めの一歩を諦めていればよかった。諦めは人生の毒だと言われるが、ギコはそう思わない。
追ってくるべきではなかったのだろう。
今ならばまだ人生をやり直せる。自分に言い聞かせた。
異常な二人を置いてギコは去って行った。
237 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:17:24.91 ID:U83AyvGm0
物語の終末はあっさりしていた。
何も残らず、何も得ることができなかった。
(´<_` )「ま、取り返せたな」
腐りそうな瞳を見ながら小さく呟いた。
物語は終わってしまった。
何も映さないその瞳と同じ方向を向きながら、物語を閉じた。
完
238 :物語が終わるようです ※グロ注意:2010/09/04(土) 04:19:37.87 ID:U83AyvGm0
日付けを越す前に書いてやろうと思ってたけど無理でした。
悔しいので寝る前に投下しました。
雰囲気小説です。
こんな時間に見てくれた人ありがとうございました。
使用お題
>>150
( ゚∀゚)「台詞は思いつかなかった、本当にゴメン」
>>151
(,,゚Д゚)「……こんなんで諦められねえよな」
235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 04:14:12.06 ID:2j4KPXRj0
見事な題消化だ
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 04:20:49.39 ID:o6rpc6YG0
乙!
巧く仕上げたな
240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 04:23:18.85 ID:64XvNj2i0
よし、次はバトルもので連載作品を書きなさい
もう総合短編はいいだろう?
乙んつん!
241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 06:23:39.73 ID:IaEHEesr0
オツー
242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 06:58:52.56 ID:dKeE0LlG0
乙です
243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/04(土) 07:05:14.95 ID:yZT8HgQK0
乙つ
でも強かったのか弱かったのかわからんな
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