スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告
 
366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/11/26(木) 21:23:12.48 ID:IjFAxSA20

付けっ放しにしていたテレビが朝のニュースを映し出していた。
僕は居間のテーブルに座り、トーストにバターを塗りながら何となく画面を眺めていた。

「…………本日十一月二十五日は昭和の文豪として知られる三島由紀夫の命日であり……」

( ・∀・)「へぇー」

テレビに映し出される三島の演説。
画面の中の三島は腕を振るいながら必死に訴えかけているが、音声が無いため何を言っているのかは分からなかった。
 
('、`*川「この人ちょっとヤバいよね」

( ・∀・)「まあ、天才ってもんは大抵変人だからね」

('、`*川「なにも自殺することないのに……」

( ・∀・)「サムライだねぇ。三島は本物のサムライだよ」



367 :( ・∀・)或る人が死んだ日のようです2/6:2009/11/26(木) 21:24:25.06 ID:IjFAxSA20

つい二百年前くらいまでこのような自決が道理として社会に認められていた事を思うと不思議だ。
今はどんな形であっても自殺は咎められるのに。
切腹、心中、殉死。そんなものが日常の一部として存在していた事など、今の日本からは想像もつかない。

「えー只今、○○駅におきまして人身事故が発生した模様です……」

( ・∀・)(……ふぅ、またか)

「運転は今のところ見合わせております……」

( ・∀・)(今月に入って何人目だ?)

「お客様のご理解とご協力をお願いします……」

( ・∀・)(……会社に連絡すんの面倒臭いなぁ)

一日に何人が自殺するのか……気になって以前調べてみた事があったが、すっかり忘れてしまっていた。
年間で何万人と死ぬんだから、一日で少なくとも……

電車が来るまでの間、そんな計算をずっと頭の中に繰り広げていた。



368 :( ・∀・)或る人が死んだ日のようです3/6:2009/11/26(木) 21:25:20.51 ID:IjFAxSA20

( ^Д^)「モララーさんあれ見ましたかww? あれwwwwwww」

( ・∀・)「なにが?」

( ^Д^)「ニコニコに決まってんじゃないっすかwwwwwwwwww」

(; ・∀・)「いやそんな知らねえよ」

( ^Д^)「とんでもない事があったんすよwwwwwwwまだ知らないんっすかwwww?」

(; ・∀・)「……別にあんまり見ないからな」

( ^Д^)「ニコ生でwwwww女の子がwwwwwwwwリスカしたんすよwwwwwwwwwww」

(; ・∀・)「……そんなに面白い事か?」

( ^Д^)「だってヤバいじゃないっすかwwwwwwwww事件っすよ事件wwwwwwwwwwwww」

(; ・∀・)「……」

醜い顔を歪ませて、引きつった下品な笑い声を上げる後輩。
痛々しい事件の一体何処に爆笑する要素があるのか全く分からない。



370 :( ・∀・)或る人が死んだ日のようです4/6:2009/11/26(木) 21:27:19.26 ID:IjFAxSA20

( ^Д^)「マジヤバいっすよねwwwww」

( ・∀・)「お前さ……ニコニコばっかしてないで仕事しろよ」

( ^Д^)「もう終わったっすよwwwwwwwてか皆やってる事じゃないっすかwwwwwwwwww」

( ^Д^)「モララーさんくらいっすよwwwwww遊ぶなって言うのwwwwwwwwwww」

( ・∀・)「……」

今の職場は給料や待遇もそこそこだし、堪えられないほど嫌気が差す訳ではない。
前に一度ブラックを経験したせいもあり、こんなのでもまだマシな方だと思う事ができる。
クズとしか思えない人間も混じっているが、なるべく関わらないようにして日々を過ごしている。



372 :( ・∀・)或る人が死んだ日のようです5/6:2009/11/26(木) 21:29:08.73 ID:IjFAxSA20
  _
( ゚∀゚)「本日半額っすよ! どうっすか? お兄さん」

( ・∀・)「……」

(-@∀@)「良い娘入ってますよ! 寄ってきませんか?」

( ・∀・)「……」

( `ハ´)「すごいのあるヨ。試してみナイ?」

( ・∀・)「……」

三島が切腹した日。
何処かの女の子が手首を切り、何処かのサラリーマンが電車に飛び込み……。
今日も日本のあちこちで、やりきれない人達が自ら命を絶っていったのだろう。
何人自殺したろうか。


( ・∀・)「……ただいま」

('、`*川「おかえりなさい。遅かったわね」

( ・∀・)「……」



373 :( ・∀・)或る人が死んだ日のようです6/6:2009/11/26(木) 21:30:43.34 ID:IjFAxSA20

死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
最近読んだ本にそんな文章が載っていた。
確かにそう思う。
僕は決して「ついカッとなった」のではなく、日常の中に漂うほこりのような死を吸い込み過ぎただけなのだ。
腐った都会の空気を吸い続けて、僕の心はもうほこりまみれだった。

( ・∀・)「……」

('、`*川「なにしてるの? こんな時間に料理でもするつもり?」

( ・∀・)「……」

('、`;川「……ちょっと、何出してんの」

( ・∀・)「……」

('、`;川「悪い冗談やめてよ、しまってよそれ」

( ・∀・)「武士の魂って言うだろ? まぁこれはちょっと小さいけどね」


きっと明日の地方紙に、ささやかな僕らのスペースが生まれるだろう。
何万人の中の一人としてカウントされるのも、別に悪い気分じゃない。



<終>



 
 
総合短編(シリアス・鬱・ホラー) | コメント(0) | トラックバック(0)
コメント

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。