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878 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:21:43 発信元:121.2.163.60
('、`*川「あ、」

雨が降っている。

目が覚めたときから。その前から知ってはいた。

しかし、いつも通りの荷物を持って入り浸りの研究棟を出てから。
肌を打たれて初めて、私は雨が降っていることに気づいた。

湿気を含んだぬるい空気。
むしろ雨粒の冷たさが心地よいような気がした。


研究棟を離れて隔離棟に着くころには私の髪からも、薄い白衣の裾からも。
ぬるく曇った雨粒が滴っていた。

薄暗い隔離棟は外気とは逆に、冷たい空気が流れている。
今はもう使われていない。ということになっているから。

コンクリートが発した冷たい波にたゆたうように、私の凍えた肌が震えた。


879 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:23:58 発信元:121.2.163.60
入り口には太い鉄格子のゲートが立ちはだかっている。
古い鍵を差し込む音が何重にも響いた。

階段を上がって一番奥の部屋へ、途中で何度ゲートを解錠しただろうか。

最後の扉には金属のプレートがはめ込まれている。

('、`*川「ボックスD、ルーム9。解錠します」

小声で確認を取るのは中にいる物のためだ。

もう音で分かっているのだろうが、ノックするのも馬鹿らしい。
これくらい無粋なので、ちょうどいい。

うるさく鳴る鍵束をドアノブの外にひっかけたままに、私は重いドアを開いた。

('、`*川「!」

ドアの向こうは砂漠のような暑さだった。
ねっとりとした湿気に、フィルター臭い熱風。

外は6月の蒸し暑さで、廊下は冷たい。
にもかかわらず、暖房を最高温で設定してある部屋は不快感を倍増させる。


880 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:25:08 発信元:121.2.163.60
('、`*川「また、どうしてこう……」

聞こえるように舌打ちをしてやる。

ドアの向こう、2メートル四方のコンクリートの部屋に窓は無い。
換気は天井のエアーコンディショナーのみでしか期待できない。

床は白いタイル。
金属製の便器とシャワーノズルが隅にあり、真ん中には排水溝がある。

一見すると広いシャワールームのようだ。

しかし当然ながら違う。

片隅にはカビの生えかけた粗末な固定式ベッド。
ベッドの足から伸びる頑丈な鎖が床にうずくまる塊へと伸びている。

('、`*川「起きてるんでしょ、ダイオード。あんたまた空調いじったわね」

サンダルのつま先で塊を小突くと、それはのっそり起き上った。

目元をぬぐいながら、私の荷物を見て、一言。

/ う、。 /「お腹がすいた」

('、`#川

私はそいつの頭部を思い切り蹴飛ばした。
 
 
881 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:26:22 発信元:121.2.163.60
研究棟から持ってきた荷物をといてやると、ダイオードは一心不乱にあさり始めた。

/ ゚、。 /「コンミートばっかり」

嫌なら食べなくてもいいわよ、と私は言った。

嫌味なのは分かっている。
汚らしいシーツだけを纏ったダイオードの腹は、異形のあばらが透けて見えるほどの薄さだ。

缶切りを慎重に使いながらダイオードはほほ笑んだ。
食事が嬉しいのだろう。

('、`*川「あんたね、なんでこの糞暑いのに暖房にするのよ」

早くも滴り落ちそうな汗をぬぐう。
ダイオードはあざ笑うかのように涼しい顔で。

/ ゚、。 /「だって服を着ていないし」

やっと開けたコンミート缶の蓋をなめながら。

/ ゚、。 /「爬虫類は変温動物だし」

ぺろりと出したダイオードの舌先は細く割れている。


883 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:28:13 発信元:121.2.163.60
ここは生態研究所。
生き物のルーツをたどり、より速やかな進化を目指すマッドな連中の巣窟。

人間の限界は見えていた。

異常気象と人口爆発。
使えない人種からどんどん絶滅していった。

新人類の研究と銘打ち、人体実験ができる研究所ができたのもそのせいだろう。

私はマッドな連中の下っ端。
ただの雑用と、実験動物の世話係。

そしてダイオードは実験動物だ。

/ ゚、。 /「あ、これ何?」

('、`*川「イナゴとミルワームの缶詰。新発売の試供品よ。いよいよ食糧難よね」

/ ゚、。 /「ふん、なかなかいける」

緊張感もなくフレークになった虫を呑み込んでいくダイオードは、人間ではない。


885 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:29:16 発信元:121.2.163.60
爬虫類の、もっと言えば、アミメニシキヘビの遺伝子を組み込まれたダイオード。

ダイオードの全身の皮膚のほぼ半分はうろこに覆われていた。
皮膚の薄いところは人間のような肌、腕や足の外側や、背中などは編み目の鱗だ。

違いと言えば、普通の人間よりもずっと頼りない骨格をしている。
以前体を洗ってやった時に見つけたが、短い尾があった。
舌先が割れており、白眼が黄緑がかっている。

消化器官や臓器を挙げればキリがないが、もうやめておこう。

/ ゚、。 /「たべる?」

('、`*川「やめとく」

私の皮膚を流れ落ちるのは汗と、先ほどの雨。

カビ臭いコンクリートにもたれて食事を貪るダイオードを見つめる。

('、`*川「ねぇ、ご飯何日ぶり?」

/ ゚、。 /「前回あなたが持ってきたのが最後」

9日間、ダイオードは飢餓と戦ったのだった。
短い方だ。
長い時は2カ月ほど備え付けのシャワーから噴き出す水だけを飲んで暮らしている。

/ ゚、。 /「あと何匹残っているの」


886 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 22:29:34 発信元:211.18.234.6
爬虫類はいい、すごくいい


887 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 22:30:44 発信元:121.2.163.60
不意に聞かれて私は少し戸惑った。

ダイオードが尋ねているのは、この隔離棟Dボックス。
つまりダイオードと同期の実験動物を収容している階に、何匹生き残りがいるかという事。

('、`*川「さあね」

/ ゚、。 /「そればっかりだ」

ダイオードは足に結われた鎖を鳴らす。

('、`*川「私は下っ端だもの、知らないわぁ」

/ ゚、。 /「ふん」

満腹したのか、私の近くににじり寄ってくる。
腹が少し出っ張っている。骨格が違うのだとまざまざ見せつけられた気分になった。

/ ゚、。 /「ね、おねがい」

('、`*川「何よ」

/ ゚、。 /「髪を洗ってくれない? 自分でできないの」

実験動物の指は、両手合わせて5本しか残っていなかった。
あの2カ月、相当ひもじかったのだろう。


894 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:01:01 発信元:121.2.163.60
石鹸はおいておくと食ってしまうから、部屋の外にストックが置いてあった。
取ってもどるとシーツを引きはがしたダイオードが全裸で冷たいシャワーを浴びていた。

('、`*川「いつも思っていたけど」

ダイオードが不思議そうに首をかしげる。

('、`*川「あんたって女なの?」

/ ゚、。 /「さあ。交尾したらわかるかもよ?」

('、`*川「……遠慮しとくわ。座って」

つるりとした体の前面にはいつも通り、乳房も、乳首も、へそも、性器もなかった。

壁のコックをひねるとザアザア、冷水がタイルにはねた。

床に座ったダイオードの伸び放題の髪を汗だくになってかき混ぜて。
冷水のシャワーがはねるのが心地よく、気づけば下着まで水が通っていた。

/ ゚、。 /「においがする」

('、`*川「私? くさい?」

/ ゚、。 /「ううん。あなたのにおいもするけど」

蛇は臭いに敏感だ。
舌を突き出したり引っ込めたりして、空気の味を確かめている。


895 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:04:11 発信元:121.2.163.60
/ ゚、。 /「シャワーの水と、あなたのにおいと、石鹸のほかに。におい」

('、`*川「え?」

/ ゚、。 /「きれいなにおいがするよ。少し汚くて、でもきれいなにおい」

ダイオードはシャワーを浴びながら、石鹸まみれの髪を私の胸元にすりつけた。
甘えるようにすりつき、私の首筋を嗅ぎまわる。

('、`*川「ああ、雨」

/ ゚、。 /「あめ?」

ここから出た事がない物にはない知識だった。

('、`*川「空から水が降るのよ」

/ ゚、。 /「へぇ。シャワーだね」

('、`*川「そう……」

浴びてきたんだね、と。

ダイオードはゆっくり私の鎖骨のくぼみを舐めなぞった。

不思議と性的な意図は感じなかった。


897 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:07:50 発信元:121.2.163.60
/ ゚、。 /「あなたは、暖かいね」

すっかり洗い流してシャワーを止めると、ダイオードも私もぬれ鼠だった。

肌に張り付く衣服が邪魔だ。
どうせこの部屋に見る人間はいない。私は下着を残して服を脱いでしまった。

不思議に、最初は暑いと感じた部屋の気温が心地よくなった。

('、`*川「少しあんたの気分がわかったわ」

シャワーの水に冷えた体。
蛇はいつもこんな肌なのかもしれない。

そっと腰に回されたダイオードの腕は、私よりもさらに冷たかった。

/ ゚、。 /「寒いんだ」

('、`*川「体温が下がったのよ」


900 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:10:35 発信元:121.2.163.60
ダイオードの黄緑色の目玉が、ほとんど開いていないような調子でまどろんだ。
変温動物らしい、温度に敏感な睡魔がまぶたを下ろそうとしている。

/ ゚、、 /「ねぇ、僕は……ね」

('、`*川「なあに」

/`、。 /「あ、なた、みたいにね」

冷たい肩を抱いてやると、ダイオードはほうっと息をついた。

/`、、 /「あったかく、なりたかったなぁ」

息が詰まった。
不思議と鼻の奥が痛んだが、涙だけはいつまでたっても流れてこなかった。

汚いベッドの上で、半裸の人外が抱きしめあっている。

なんて滑稽なんだろう。

一度眠ると起きないダイオードの癖は知っているので、そっと抜け出し、服を着た。
湿ったままの服は不快でしかなかった。
この部屋のカビと錆びた水の臭いが付いている。


901 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:13:25 発信元:121.2.163.60
暑く湿った部屋を出ると、廊下の冷気が濡れた服越しに私を震わせた。

寒いのはどうせ隔離棟を出るまでだ。

鍵束をとり、解錠と施錠を繰り返し、私はその階のゲートを抜けた。

隔離棟、ボックスD。
ダストシューターと呼ばれる、死につながるセクションだ。

開設は180年前。
ダイオードは160と数歳。

ここは死んでしまった隔離棟。

私は研究棟に戻り、またマッドな連中にこき使われる。

バイオテクノロジーは発展している。

哺乳類の遺伝子を組んだ新人類は、今や旧人類の召使い。

('、`*川「只今もどりました」

川 ゚ -゚)「遅い。お前はそうしてすぐにさぼる」

('、`*川「お許しを……」

川 ゚ -゚)「いい。実験器具を洗浄室に運んで。
     それと、そこのメモの薬品を仕入れるように手配しなさい」


902 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:15:56 発信元:121.2.163.60
私も今や彼らの犬だ。

マッドでサイコな美人のペット。従順な召使い。

辛くはない。
彼らは自分たちを可愛がってくれる。

あくまでペット、召使いとして。

川 ゚ -゚)「まったく、犬の新人類は従順だと聞いたがな」

('、`*川「申し訳ありません」

川 ゚ -゚)「濡れているな。拭いてやろう」

私の主人は優しい方だ。
柔らかなタオルでくるみ、優しくぬぐってもらえる。

食べ物は毎日もらえる。
足を鎖でつながない。
部屋に閉じ込めない。


905 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:19:13 発信元:121.2.163.60
川 ゚ -゚)「なんだ、寒いのか?」

ぺったりと寝てしまった耳を撫でられる。

川 ゚ -゚)「怖かったのか?」

それは悪かった、すまんな。
でもお前が悪いんだよ。

言いつけを守りなさい。
良い子だね。

私は暖かい体を持っている。
優しい主人と、少しの自由を持っている。

('、`*川「いいえ、いいえ」

川 ゚ -゚)「心配ないぞ。仕事をしなさい。私はお前を捨てないさ」

私を撫でてくれる主人の手は暖かで。
それでも私は、隔離棟ボックスD、ルーム9。

冷たい蛇の欠けた指が懐かしかった。









906 :('、`*川恒温変温ゴミ箱ユニオンのようです/ ゚、。 /:2010/06/27(日) 23:20:33 発信元:121.2.163.60
以上でした。
支援ありがとうございました。
スレの終盤で長々とさるって占拠してしまい申し訳ないです。

できれば気になった悪い点の指摘をお願いしたいです。

>>878->>881 >>883 >>885 >>887
>>894 >>895 >>897 >>900->>902
>>905


頂いたお題は
>>848
夏なのに暖房
>>851
梅雨明け
でした。


907 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:23:29 発信元:121.2.98.95
乙! じめじめと虚しい空気がたまらんかった。
ところでペニサスは比喩でなく、犬から進化を遂げた新人類でおk?


909 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:25:55 発信元:121.2.163.60
>>907
ありがとうございます。
ペニサスに関してはそんな感じです。
ダイオードよりは人間っぽいですが、犬の新人類です。
伝わりにくかったですね、もっと練習します。


913 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:41:32 発信元:121.2.98.95
>>909
いや、その伝わったか否かについては僕の読解力不足についてだと思う。
で個人的に思ったのが、序盤にちょっとその伏線強く入れてもいいんじゃないかなって。
たとえば犬って暑いの苦手だから、暑いの嫌いって独白を地の文に入れるとか、
あるいは「私は汗をかかない」みたいな文を入れたり、舌出してはっは言わせたり……
そうすると終盤でなるほどなぁって思うかも。独りよがりな意見ですまん。


914 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:43:30 発信元:121.2.163.60
>>913
なるほど、勉強になります。
もっと伏線を盛り込んだほうが分かりやすいし、納得できますよね。
ありがとうございます!


915 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:44:37 発信元:222.5.63.222
おっつん。

雰囲気好きだよ


916 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:50:42 発信元:219.125.148.16


面白かったです


917 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/27(日) 23:51:37 発信元:121.2.98.95
ダイオードさんも乙


 
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