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夏の蜃気楼、のようです

2010/06/26 Sat 06:13

 
303 :いきなり訂正……:2010/06/24(木) 23:22:27 発信元:222.5.63.228
誰にでも大抵ステータスとなり得る特技という物がある。
それは暗算だったり視力の良さだったりと様々だ。
それが僕の場合は、絵を描く事だった。


ξ゚⊿゚)ξ「綺麗に描いてくれる?」

( ^ω^)「もちろんだお」


僕らは地元にあるひまわりの咲く花畑にいた。
青空とひまわりの眩しいくらいの黄色が綺麗なコントラストを作り出していた。

僕はパレットの中で幾つかの色を混ぜ合わせて新しい色を作る。
彼女を、ツンを描くために。

若くして死んだ、彼女のために。



夏の蜃気楼、のようです







307 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:25:12 発信元:222.5.63.230
絵を描く事が特技、といっても僕は精々人より少し上手、といえるくらいだった。
昔から絵を描くのは好きだった。

クレヨン、クーピー、色鉛筆、絵の具。

子供だった僕が大人に近づいていくにつれて使う画材も変わっていった。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、いつか私を描いてくれる?」

( ^ω^)「もちろんだお」


中学の時の会話だったと思う。
まだ彼女が僕にやたらと意地っぱり……まぁ簡単に言うとツンツンしていた頃だ。

「幼稚園や小学校の時は優しかったのに、嫌われたんだろうか」なんて自分の不安を覚えている。

美術部だった僕が放課後一人で部室を片付けている時に、急に彼女が話かけてきたのだ。
普段ツンツンしていただけに少々面食らったが、気がつけば即答していた。

まるでそれが自分の絵を描く理由だ、なんて思っていたみたいに。



308 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:27:15 発信元:222.5.63.228
( ^ω^)「ツン、覚えてるかお?」


白いキャンバスに色で染め上げながら僕は聞く。
一筆、一言、大切に、大切に。


ξ゚⊿゚)ξ「何を?」

( ^ω^)「中学の時ツンは僕にいつか自分を描いて欲しいって言ってたんだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「……覚えてるわよ」

( ^ω^)「おー」

ξ゚⊿゚)ξ「というより覚えててくれたのね」

( ^ω^)「忘れるわけないおー」

ξ*゚⊿゚)ξ「……ありがとう」


彼女は何でもない、という風に僕に言葉を返す。
そんな彼女の顔からは笑顔がこぼれていた。





311 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:28:18 発信元:121.111.227.71
ブーン×ツンはやはり良い
 
 
312 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:29:39 発信元:222.5.63.225
高校の時の事だ。

僕は町の小さなコンテストに絵を送り、入賞した。
その知らせを聞いて、喜び、その勢いでツンに告白したのを覚えている。


( ^ω^)「ツン!君のために描いた絵だお!受け取ってくれお!」


こんな事を言ったと思う。
思い出して苦笑してしまう。
幸いな事に上手くいったから良かったが失敗していたら相当な黒歴史だったに違いない。

ただ、間違いなくあの絵はツンに贈りたかった絵だ。
それだけは、告白が成否関わらず変わらなかっただろう。

絵の名前は「ひまわりの花」とかだったと思う。

今僕らのいる、この花畑で描いた絵だ。

自分の気持ちと、絵を描いたその日のあの、ひまわりの綺麗さを、
彼女に伝えたくて描いた絵だ。


316 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:34:57 発信元:222.5.63.225
( ^ω^)「ツン、ツンツン」


筆を進めながら話かける。
決して手を抜いたりなどはしないが。


ξ゚⊿゚)ξ「なによ」

( ^ω^)「僕がツンに告白した日に渡した絵はここで描いたんだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってるよ、だってそっくりだったもの」

( ^ω^)「わかってたのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「うん、毎日のように見てたもの、ブーンがくれた絵」

ξ゚⊿゚)ξ「大好きだったよ、あの絵」

( ^ω^)「照れるお、ツンがそんなに褒めてくれるなんて珍しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「……言える時に、ね」

( ^ω^)「……」


嗚呼、ツン、君もやはりそう感じているのか。
きっと僕がこの絵を描きあげた時に、
君は消えてしまう。


317 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:36:54 発信元:222.5.63.230
限りなく今に近い過去、大学2年の時に彼女、ツンは死んだ。

別れはいつだって唐突だ。
彼女とデートをして、帰り道で「また明日」なんて言って別れて……

そしてツンは事故にあった。


( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」

( ^ω^)「いや、なんでもないお」


いけない、手が止まってしまった。
ふと空を仰ぐと描き始めた時は真上に有った太陽がかなり下に来ていた。

もうこんなに時間がたったのか。

随分と没頭していたらしい。
ひとつ、深呼吸をしてみた。

山の爽やかな空気で肺が満たされた。

腕時計を見ると時刻は3時過ぎを告げていた。


318 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:38:40 発信元:121.111.227.82
あ、こういう死んだ後に姿が見えるのってヤバイ

切なすぎる…


319 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:38:55 発信元:115.39.129.219
切ねぇ……支援


320 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:40:16 発信元:222.5.63.232
通夜を終え、悲しみにも慣れてきた、そんな、昨日の事だ。

夜の事だ。
昼間には頭が割れそうなほどにうるさかった蝉も鳴いていない。
そんな、夜だ。


ξ゚⊿゚)ξ「……」

(;^ω^)「な……」


彼女が、僕の前に現れた。
生前と何一つ変わらない姿で。


ξ゚⊿゚)ξ「なんだか幽霊になっちゃった」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえブーン、私の絵を描いてくれない?」


遠い日の約束、そのためだけに彼女は来てくれたらしい。
胸が締め付けられそうだった。

その時、僕の中では再び出会えた喜びと、常識の枠を越えた現象への動揺と、
きっと再び来るであろう、別れの悲しみが渦巻いていた。



321 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:41:06 発信元:115.39.129.219
……幽霊か


322 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:41:55 発信元:121.111.227.81
もう一度別れを体験するなんて悲しいな


323 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:42:31 発信元:222.5.63.222
その夜、彼女とは色々な事を話した。

中学の時の事、高校の時の事。

最近、大学であったこと。

僕の、将来の夢とかも。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは何になりたいの?」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「絵描きさん?」

( ^ω^)「……うん」


なりたかった、いや、今でもなりたい、そう思っている。
でも、現実という物は辛い。
幾つかの賞に送っても鳴かず飛ばずな現実がある。


( ^ω^)「ツンの夢は……」


そこまで言って、しまったと思った。
残酷な質問だ。
彼女に未来は、もう……無いのに。


325 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:44:57 発信元:222.5.63.226


でも、



ξ゚⊿゚)ξ



彼女は、



ξ゚ー゚)ξ



にっこりと、僕に、微笑んだんだ。





326 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:45:05 発信元:121.111.227.83
泣きそう………私が


327 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:47:49 発信元:115.39.129.219
なんで笑えるんだよ、ツン(´;ω;`)


328 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:48:07 発信元:222.5.63.226
ξ゚⊿゚)ξ「私の夢はね」


不思議と彼女は嬉しそうだった。
まるで話したかった、という様子だ。


ξ゚⊿゚)ξ「私の好きな人が好きなように絵を描いて」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「私の好きな人が夢を叶えてそれを仕事にできて」

ξ゚⊿゚)ξ「でもその人が一生で一番自信のある作品は」

ξ゚⊿゚)ξ「私だけの、私なんかのためだけに、」

ξ゚⊿゚)ξ「描いてくれた絵」

ξ*゚⊿゚)ξ「……そんな、夢かな」

( ^ω^)「……」

( ;ω;)「……」


僕は泣いた。まるで子供みたいに。
嬉しくて、こんな僕を想ってくれる彼女が愛しくて、
ただ、泣いた。


330 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:49:11 発信元:115.39.129.219
(´;ω;`)


331 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:49:32 発信元:121.111.227.77
はいはい、涙腺崩壊涙腺崩壊


( ;ω;)


332 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:51:32 発信元:219.111.65.228
あれ、目から汗が……


333 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:52:53 発信元:222.5.63.225
そうして、今だ。
真上にあったはずの太陽は沈もうとしていた。
水平線に太陽の赤が混じりオレンジに空が染まる。
絵は、完成を迎えようとしていた。


( ^ω^)「……」


後、一筆。

後、一筆で、さようなら。


そして


( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ


そして最後の一筆を。


( ^ω^)「描けたお」


僕は終了した。


334 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:54:24 発信元:121.111.227.74
描かなければツンは消えないかもしれないのに…!!


337 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:56:15 発信元:121.103.251.241
>>334
描かないブーンのところにこのツンがくるわけないだろ!


340 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:59:00 発信元:121.111.227.82
>>337
んなこた分かってるけども(´;ω;)

ブーンの描いた絵が脳内再生されている…


336 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:56:03 発信元:124.98.248.165
(;A;)


338 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:56:16 発信元:222.5.63.234
絵は彼女を中心に、ひまわりと青空を背景に描いた。
既に空の色は違うが、僕は一切の違い無く、その青空を描いた。


ξ゚⊿゚)ξ「すごい……」

( ^ω^)「自信作、だお」


制作時間、僅か1日。
それでも、今まで描いてきたどんな絵よりも、
僕には自信があった。

描ききった。そんな気持ちと共に。


( ^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ


僕らは見つめ会う。
やって来る。
別れの、時間が。


339 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/24(木) 23:58:34 発信元:222.5.63.224
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ありがとう」

( ^ω^)「どういたしまして、だお」

ξ゚⊿゚)ξ「嬉しい」

ξ;⊿;)ξ「ブーン……嬉しい、嬉しいよブーン」

( ^ω^)「ツン……」


僕らを照らしていた夕焼けがより一層彼女をオレンジ色に染めた。

それが彼女の体が透けてきたからだと、
気づくまでに時間はいらなかった。


( ;ω;)「ツン……」


限界だ。押さえていた涙が溢れだす。

僕は彼女のすぐそばまで近づいた。


341 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/24(木) 23:59:07 発信元:115.39.129.219
(;A;)


343 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:00:31 発信元:222.5.63.231
( ;ω;)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ 「……」


姿こそ見えるが、既に体には触れられない。
抱き締めようとする僕の手は虚しく空をつかんだ。


ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……」

( ;ω;)「……」


それでも、それが形だけでも。

( ;ω;)

ξ;⊿;)ξ


僕は彼女を強く抱き締めた。





344 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:02:48 発信元:219.111.65.228
支援 あと誰かハンカチ頼む


347 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:03:51 発信元:115.39.129.219
>>344
つ□


348 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:04:03 発信元:124.98.248.165
>>344
<ヽ;∀;>つ□


345 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:03:07 発信元:222.5.63.222





そして――








346 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:03:21 発信元:121.111.227.81
しえん!しえん!うわぁぁぁん


349 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:06:47 発信元:222.5.63.228
( ^ω^)「……」


夕日が沈み、夜になり、僕の涙が乾いた頃に。

彼女は消えた。

ツンは、消えてしまった。


( ^ω^)「ツン……」


僕に残されたのは、

情けないくらいの涙の跡と、

彼女を、

彼女を描いた僕の絵だけだった。



350 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:07:26 発信元:121.111.227.69
ブーン……


352 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:09:30 発信元:222.5.63.227





それからずっと後の話








357 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:13:21 発信元:222.5.63.226
そこはとある絵画の展覧会だった。
巨匠と呼ばれた男、内藤文太郎の死去から25年ということで開かれた展覧会だ。

マスコミ関係者と思われる二人組がそこで会話をしていた。


( ・∀・)「で?何が発表されるのさ、死後25年なんて今さらな時期に」

('A`)「どうも、未発表の絵があったらしいんです」

( ・∀・)「未発表?」

('A`)「内藤さんの手記によると亡き恋人に捧げた絵らしいです、何でも本人の一番の自信作だとか」

( ・∀・)「へー、なんて題名の絵なの?」

('A`)「ええっとですね」





358 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:14:55 発信元:121.111.227.79
くっ……


359 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:15:13 発信元:115.39.129.219
ゴクリ……


360 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:15:16 発信元:222.5.63.222




夏の蜃気楼、のようです




ツン、きみの夢は、叶えたお。




おわり







365 :夏の蜃気楼、のようです:2010/06/25(金) 00:16:46 発信元:222.5.63.229
支援ありがとうございました。
感想とかいただけると狂喜します


368 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:19:39 発信元:221.19.118.208
>>365
ブーンの描いてた絵が鮮明にイメージできた。
せつねぇなあ。ほんと乙でした!!


370 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:36:20 発信元:118.1.175.9
>>365
文から場面や心情を想像しやすくて読みやすかった。
正に切なさ乱れうち。

全力の乙を贈る!


362 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:16:09 発信元:121.111.227.79
乙です!
ブーン頑張ったんだな


363 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:16:11 発信元:221.19.118.208
( ;ω;)おつ!!!!


364 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:16:29 発信元:121.103.251.241
おつです
良い話だった
ありがとう


366 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:16:54 発信元:219.111.65.228
乙! 全力で泣いた


367 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:18:57 発信元:124.98.248.165
乙!
ええ話や…


369 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/25(金) 00:21:29 発信元:115.39.129.219
ブーンが見たツンの姿と、絵のタイトルと、話のタイトルが綺麗に繋がっていて、すごくよかった。
>>325の文章が好きだ。

好きだとしか言えない。
切なくて、胸に残る話だった。



 ※お題: 色鉛筆・夏の蜃気楼・ステータス


 
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