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出発の時

2010/06/17 Thu 04:16

 
436 :出発の時:2010/06/16(水) 08:25:29 発信元:219.125.148.18
<台風16号は依然として強い勢力を保ちながら、関東を北東に進んでいます
 このため、今日深夜から明日未明まで大荒れの天気となるでしょう…

そこまで聞いて、ブーンはラジオの電源を落としました。
それからカッパを着込んで、部屋の明かりを消します。

準備万端。今日は数少ない、ブーンが外出できる日です。


( ^ω^)コソーリ

家族を起こさないように部屋を出て、階段を降ります。

<ギシッ、ギシッ

階段の軋む音は、まるで家族にブーンの逃走を知らせているようです。

それでもなんとか階段をやりすごし、長靴を履いて
いざ引き戸に手をやったその時に、玄関の電気が点きました。



437 :出発の時:2010/06/16(水) 08:29:50 発信元:219.125.148.15

J( 'ー`)し ブーン、出掛けるのかい?

母親が起きてしまったのです。

(  ω ) 

ブーンは何も答えずに引き戸を開きます。

J( 'ー`)し ・・・気を付けてね

(  ω ) 

ピシャリ。引き戸を閉じて、数歩歩いて立ち止まります。

( ´ω`) 

うん、と言おうか。ああ、と言おうか迷ってしまって、
結局何も言わずに出てきてしまったのです。
母親はブーンのくだらない葛藤に気付いたでしょうか?
母親は返事もしない息子に傷付いたでしょうか?

いずれにしても。

そう。いずれにしてももう遅いのです。

そんなことを知ってか知らずか、ブーンがそっと振り返ると、玄関の明かりは既に消えていました。



438 :出発の時:2010/06/16(水) 08:35:33 発信元:219.125.148.17
 バシャバシャ
(;^ω^)

ブーンが向かっているのは家からそう遠くない公園で、
今はもう潰れてしまった工場の社長が、昔、子どものためにと作ったものだそうです

(;^ω^) フー

公園に辿り着いたブーンは、どっかりとベンチに腰掛けました。
疲れているブーンはしかし疲れなどには構わず、
彼お決まりのポーズをとりました

足を少し開き、その膝に肘を置き、手を組んでそこにおでこを乗せます。

( ^ω^)

そうして暗くてよく見えない地面をそれでもじっと見ていると、
ブーンの頭の中の騒音が雨風の音と取って変わり、もうしばらくすると何も聞こえてないような気分になります
そうして1人時を忘れ、また何か許されているような気分に浸るのが、
最近のブーンの1番の楽しみなのです

そして、誰もいないこの公園で、1人風雨にさらされる権利が
ブーンには確かにあるのです。



439 :出発の時:2010/06/16(水) 08:43:32 発信元:219.125.148.42

最初、ブーンは視界に入ってきた白い物体に気が付きませんでした。
それからそれが人間の足だと気付くまでにまた少し時間が掛かり、
驚いて顔を上げました。
 
 
ξ゚⊿゚)ξ

そこにいたのは幼なじみのツンでした。

ブーンの中では驚きと安堵の両方が戦い、やがて驚きが勝りました。

(;^ω^)

こんなところで一体何を、と彼は問いかけます

白いスニーカーを泥で汚し、左手でたくし上げたワンピースが濡れるのも構わずに、
彼女はベンチに、彼の隣にストンと腰掛けました。
右手には男物の傘を持っています。

ξ゚⊿゚)ξ ブーンの部屋の明かりが消えているのが見えたの。いつも遅くまで点いてるのに
      そういえば、前も大雨の日、明かりが消えてたな、って
      その後玄関の明かりが点いて、ブーンが出て来たの。




440 :出発の時:2010/06/16(水) 08:49:05 発信元:219.125.148.18
(;^ω^)

それで?、と彼は顔を彼女に向けました。
ξ゚⊿゚)ξ ああ、ブーン何やってるんだろうって、
      ブーンはもっとやらなくちゃいけないことがあるのにって

(  ω )

ブーンの顔が、曇ります。

ξ゚⊿゚)ξ 私たちが大学を卒業したのは4年前。社会参加への猶予期間はその時終わったの
      それなのにブーンは毎日部屋で何をしてるの?

(  ω )

ほっといてくれ。そう彼は懇願しました。しかし彼女は許しません

ξ゚⊿゚)ξ ほっとけないよ。もうブーンだけの問題じゃない。
      ブーンとブーンの家族と、それから私の問題でもあるんだよ

( ^ω^)

ブーンは考えます。
確かに、問題であるブーンが今居ないのにあの家は、
今も重苦しい空気に包まれているような気がしました




441 :出発の時:2010/06/16(水) 08:54:04 発信元:219.125.148.42

でも、と彼は反論します。

( ^ω^)

やりたい仕事が無い、と。

ξ゚⊿゚)ξ やりたい仕事をしている人なんかいないんじゃないかな。
     みんなやりたくもない仕事をして、そうやって生きてるの。
     そういう人たちって、ブーンにはどういう風に見えるの?

( ^ω^) 

ブーンは答えることが出来ません。
なぜブーンは答えられないのでしょうか?
ξ゚⊿゚)ξ やりたい仕事を見つける努力はした?
      でもね、それで見付からなくっても、やっぱり仕事はしないといけないのよ

(  ω ) 
わかっている。ブーンはそんなことわかっているのです。
だから反論できないのです。




442 :出発の時:2010/06/16(水) 08:59:13 発信元:219.125.148.14

ξ゚⊿゚)ξ 仕事なんて、探せばいくらでもあるのよ。
      この前だって駅前のパン屋が
( ^ω^)

あんな底辺、いやだ。ブーンは思わず口走りました

ξ#゚⊿゚)ξ 底辺なんて、よくそんな事が言えるわね!

(;^ω^)

どうやら彼女を怒らせてしまったようです。
こういったことは彼らが付き合っていた3年前までよくありました

ξ゚⊿゚)ξ ・・・私の知っているブーンは、職業に対して上とか下とか言う人じゃなかったな

しかし彼女の怒りはすぐ収まりました。

ブーンは悲しい気持ちになります。

もう誰も本気でブーンのことを怒る人などいないからです
周りはみんなブーンの問題を解決しようとするばかりでブーン自身のことを見てくれないからです

しかし、それを言うには少し遅すぎました。
問題は膨れあがり、代わりにブーンは見えないくらい小さくなってしまいました。

もう自分で解決するしかないのです。



443 :出発の時:2010/06/16(水) 09:03:32 発信元:219.125.148.41
ξ゚⊿゚)ξ わたし、近々この町をでるんだ

彼女は唐突にそう言いました。

(  ω )

ブーンは少なからずショックを受けましたが、
それは自分で驚いてしまうほど小さなものでした

ξ゚⊿゚)ξ わたし、結婚するの

(  ω )

今度もさほど大きなショックではありませんでした

ξ゚⊿゚)ξ ・・・・・・

彼女はブーンの顔を見つめます

( ^ω^)

ブーンも彼女を見つめますが、言葉が出て来ません。

ξ゚⊿゚)ξ ・・・さようなら

彼女はやがて諦めたようにそう言いました。

気が付くと雨も風も止んでおり、空は白んできていました。




444 :出発の時:2010/06/16(水) 09:09:17 発信元:219.125.148.12

ξ゚⊿゚)ξ これ、返すね。ブーンが前に私の家に置いていったの

彼女は立ち上がり、手にしていた傘をくるくる畳んでブーンに手渡すと、
何も言わずにブーンと彼女の家がある方向へと歩いて行きました。

ブーンは彼女が握っていた柄の部分に残った体温を感じ、少し涙を流しました

彼女の最後の優しさに。

彼女と決別する悲しさに。

そして自分のふがいなさに。

すると突然、雨が振り始めました。

彼は顔を上げます。

もしかしたら彼女が自分の傘を借りに公園に戻って来るかもしれない。

そうしたら。




445 :出発の時:2010/06/16(水) 09:14:03 発信元:219.125.148.12
おめでとう。そして、さようなら

これだけでも伝えようと、心に決めました。

すると駆け足の音が近付いてきました。

(゚A゚*)

公園に入って来たのは、見知らぬ少女でした。
人生そうは、うまくいかないものです。

( ^ω^)

時間は正確にはわかりませんが、まだ明け方のはずです。

ブーンは少女に1人で何をしているのかと尋ねました。

(゚A゚*) 何って、おつかい。今日はおかん忙しいからな、お手伝いや。

見ると少女は手に袋を提げています

(゚A゚*) そしたら雨が降ってきてな。この公園が近道なんやで

( ^ω^)

だからって、こんな早い時間に?
そう聞こうと思いましたが、やめました。
代わりに傘を差し出します。



446 :出発の時:2010/06/16(水) 09:18:03 発信元:219.125.148.18

(゚A゚*) え?ええよ、ええよ。お兄さんが濡れてまうやん

( ^ω^)

ブーンは自分はカッパを着ているし、走って帰るのは危ないよ、と言いました。

(゚A゚*) あれ、ホンマや。ならなんで傘持ってるん?まあええけど。
    あ!ほんならお礼にええもんやるわ!

そう言うと、少女は袋からスライスされた食パンを1枚取り出し、ブーンに手渡しました。

(゚A゚*) 駅前のパン屋さんで買うたんや!
    モッチモチやろ!モッチモチ!

そう言って、少女は入ってきたところと反対側の出入口の方へと走って向かって行きます



447 :出発の時:2010/06/16(水) 09:21:53 発信元:219.125.148.18

ブーンが少女を見ていると、少女が突然振り向き大声で言いました。

(゚A゚*) ありがとう!

( ^ω^)ノシ

もしかしたら人生は覚えずうまくいったりするのかもしれません。

家に向かいつつ、少女から貰った食パンをかじりながら、
ブーンはまずは美容室に行こう、などと考えていました。


~お 終 い~









450 :出発の時:2010/06/16(水) 09:25:37 発信元:219.125.148.14
>>389です

お題
>>391 にわか雨
>>392 モッチモチやろ!モッチモチ!
>>393 モラトリアムの終焉

でした。

お題の消化部分(のつもりw)がわかりづらいかも。精進します

ありがとうございました


451 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/06/16(水) 13:12:28 発信元:59.135.38.144
乙ー
切ないような自業自得のような複雑な気持ちだよ



 
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