FC2ブログ
  
 ※この作品は、図書館で行われた【 長編序章祭(仮) 】 にて投下された作品です。


622 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 19:53:02 発信元:210.153.84.77
『樹海の進攻』

急速に拡大する森と、そこに住まう生物群の猛攻。

数千年の昔に発生したその大災害は、栄華を極めたヒトの前文明を徹底的に破壊した。

九割を超える人々が樹海に飲まれて命を落とし、生き残った者達も九割以上が飢えて死んだ。

旧世界の枠組みは滅び、混沌の時代に叩き込まれ、それでもヒトは滅びない。

底知れぬ苦難の中で、それでもヒトは生きる希望を無くさない。

人々は、勇気と知恵、そして『新たな力』を武器に樹海に挑んだ。

勝利は『生』を表し、敗北は『死』を表す。

全てのヒトの存亡を賭けた樹海との死闘が幕を開けた。


結末を知る者は、現れていない。


……ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです



625 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 19:54:41 発信元:210.153.84.70
……
  _
( ゚∀゚)o彡゜「あー、嬢ちゃん。ちょっと良いかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい?」


『樹海の進攻』により、陸地の95%以上が森へと姿を変えた。
旧世界の文明都市はあっさりと樹々に飲まれ、砂漠は草花に覆われ、今や緑の見えない所は海しか無い。

森には巨大な獣や虫、更には竜種に至るまで、あらゆる凶暴な生物が徘徊する。

それらの脅威に対し人は密集して新たな都市を建造し、辛うじてその生活圏を守り続けてきた。

そうした人々の、樹海に対する反撃の一手。それが『冒険者』。
森との戦いに特化した彼らは樹海を旅して獣を狩り、結果人々の生活を守ってきた。

  _
( ゚∀゚)o彡「中枢府への行き方を教えて貰えないかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「良いですよ、ご案内します。
     ……私もちょうどそこに行く所ですから」


626 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 19:57:13 発信元:124.146.174.132
シャングリラみたいな?


627 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 19:57:32 発信元:210.153.84.172
  _
( ゚∀゚)o「ん、それじゃあ、嬢ちゃんも冒険者かい?」

ミセ*゚ー゚)リ「いえ。でもこれから登録します」


……ヨツマ市。

旧世界の言葉で「極めて重要な者」を表す、辺境の都市国家。
大陸から海を隔てた東端、樹海に囲まれた都市。

この地の更に東の樹海は新世界で最も深く、謎に満ちた『樹海の進攻』の秘密が眠ると言われる。

根拠など無い、ただの迷信。それでも、人々は希望を託す。

東へ、東へ、東へ。
ただそれのみが、彼らの目標となった。

……そうして、数多くの腕自慢の冒険者達がこのヨツマを訪れ、多くが険しい樹海に散っていった。

ヨツマの王家は樹海を探る冒険者を積極的に支援し、集まる冒険者により都市は肥大する。

樹々の芽吹きを防ぐ石畳の街並みは同心円状に拡がり、獣の進入を防ぐ城壁は繰り返し建造された。

結果として、複雑に走る路地と何重もの城壁の名残が街を特徴付け、ある種の美を形成している。


 
 
628 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 19:59:06 発信元:210.153.84.184
ミセ*゚ー゚)リ「……着きました。ここです」
  _
( ゚∀゚)o「ああ、ありがとう。ええと……」

ミセ*゚ー゚)リ「ミセリです」  _
( ゚∀゚)o「ミセリちゃん、か。良い名前だね。
     俺はジョルジュ長岡。縁があれば、また会おう」

ミセ*゚ー゚)リ「はい」


ヨツマから冒険者への支援は多岐に渡る。
樹海での食料や武器の支給、負傷時の治療、或いは……戦死者の供養。
また、樹海に駐留し続ける『キャラバン』と呼ばれるベースキャンプの利用。

これらは皆、樹海を旅する冒険者にとって必要不可欠なシステムである。

彼らを管理するために市は冒険者に登録を義務付け、不完全ながら幾つかの制約を与えた。

こうして、ヨツマは「支援」の言葉の元に冒険者を自らに縛り付け、その勢力を東域最大にまで押し上げたのだ。

冒険者が新たに登録を受ける機会は一年に一度。
この日、全ての志願者がヨツマ議会中枢府に集まる。


632 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:01:25 発信元:210.153.84.76
ミセ*゚ー゚)リ「うわ、凄い人……」

中枢府の大講堂は、大きなすり鉢を二つに割った形をしている。
中心から放射状に並べられた数十列の座席は、
ほとんどが武具を装備した志願者で埋まっていた。

若さと自信に満ちた者や、老獪な眼差しを持つ者。
豪快に笑う筋肉質な人、静かに本を読む細身の人、
油断無く周囲を伺う神経質な人、机に突っ伏し眠る髪の長い人。

講堂全体が、むさ苦しいまでの熱気が覆われていた。

ミセ;゚ー゚)リ「……暑苦しい」


愛嬌のある目鼻立ちと特徴ある癖毛をした少女。
彼女、ミセリ・エメリアは講堂の熱気に完全に気圧されていた。

ミセ;-ー-)リ「……根性!」


ミセリは大きく息を吸い込み、すり鉢の中へ踏み出した。


635 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:02:53 発信元:210.153.84.225
ミセ*゚ー゚)リ「あの、ここ座っても良いですか?」

lw´‐ _‐ノv「ああ、構わないよ」


ミセリは講堂の階段を中ほどまで降り、ようやく空席を見つけた。

木製の椅子に腰掛け、改めて中央を見下ろす。
未だ何事かが始まる気配はない。


lw´‐ _‐ノv「君は」


ミセリが退屈を感じ始めた頃に、隣の女性が声を掛けてきた。


lw´‐ _‐ノv「ずいぶん若いね。この国の出身かい?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、そうです。今年で成人しました。ええと、あなたは……?」


年齢制限は、ヨツマが冒険者に求める唯一の資格だ。
十六歳に満たない者は未成年として扱われ、当然冒険者になる事も許されない。


637 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:04:06 発信元:210.153.84.177
lw´‐ _‐ノv「私は素直シュール。シューで良いよ。丁寧語も要らない」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、はい。ええと……よろしく、シューさん!」

lw´‐ _‐ノv「よろしく。……それで君の名前は教えてくれないのかな」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめん、私はミセリって言います」

lw´‐ _‐ノv「ん。じゃミセリ、しばらく話し相手になってくれないかな。退屈してたんだよ」

ミセ*゚ー゚)リ「いいよ。私もすごく退屈だったんだ」


ミセリは、ふっ、と息を吐いた。

シューのおかげで、緊張が少し和らいだらしい。


lw´‐ _‐ノv「実はそう思って声をかけたんだよ。どうやら大成功かな」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだね。ちょっと驚いたけど、嬉しかったよ」

lw´‐ _‐ノv「それは良かった。ミセリは『親和』はあるのかい?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、緑と白がちょっとだけ」



641 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:06:47 発信元:210.153.84.161
この世界には『精霊』と称される、五種の超自然的な不可視の力がある。
限られた一握りの人々のみがその精霊の力を理解し、利用し、支配できた。

彼らは時に火を起こし、傷を癒し、大気を操り、果ては生命をも支配する。
そして、その圧倒的な力が『樹海の進攻』から人々を救い上げた。

親和とは、精霊を支配し得る容量であり、その有無は天性の才能によるとされている。


lw´‐ _‐ノv「二色か、いいバランスだね。……ミセリちゃんの得物はその剣かな」


シューは、ミセリの背負う細身の剣を指差した。
小柄なミセリには、まるで不釣り合いな古さが見て取れる。


642 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:07:30 発信元:219.111.65.131
世界樹的なのかな?


644 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:08:10 発信元:210.153.84.177
ミセ*゚ー゚)リ「そうだよ。まだ上手く使えないんだけどね……」

lw´‐ _‐ノv「なんで長剣にしたのかな? ナイフや銃の方が良いと思うんだけど」

ミセ*゚ー゚)リ「なんでって、ええと……これ、父さんが使ってた剣らしいんだ」

lw´‐ _‐ノv「お父さん?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、父さん。冒険者なんだけど、もう5年以上樹海から帰ってきてないんだ」

lw´‐ _‐ノv「あー、それは、御愁傷様で……」

ミセ;-ー-)リ「いや、多分生きてるよ。知らんけど」

lw´‐ _‐ノv「え、ええ……?」

ミセ*゚ー゚)リ「おっと……」


/ ,' 3

いつの間にか、講堂の中心に初老の男性が居た。

彼の名は荒巻スカルチノフ。
ヨツマ市議会の議長の彼は、皇族に次いで高い権力を持つ。

彼は静かに講堂を見渡し、ゆっくりと演説を始めた。


646 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:09:15 発信元:118.15.157.183
期待が止まらない


650 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:10:50 発信元:210.153.84.241


偉い人の話なんて、大概は退屈なだけだ。

一時間にも及ぶ長い演説が終わるや否や、シューはミセリに愚痴を洩らした。

lw´‐ _‐ノv「長い。そして面白くない。誰だったんだよあの爺さんは」

ミセ*゚ー゚)リ「荒巻スカルチノフって言って、……確かすごく偉い人のはず」

lw´‐ _‐ノv「どうでも良い人だって事は分かった」
ミセ*゚ー゚)リ「まぁ、確かにそうかもね」


lw´‐ _‐ノv「さて、あとは登録証を頂くだけだね。私はそろそろ仲間の所に戻るよ」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、ありがと」

lw´‐ _‐ノv「礼には及ばんよ。……また会おう。それまで死ぬなよ、少女?」

ミセ*゚ー゚)リ「姐さんこそ、死ぬなよ!」

lw´‐ _‐ノv「うむ」


ヒラヒラと手を振り、シューは立ち去る。
ミセリは、彼女との再会を心から願い、また確信していた。


652 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:13:33 発信元:210.153.84.65
ミセ*゚ー゚)リ、「仲間か……ちょっと羨ましいな」

受け取った菱形の登録証を指で軽く弄びながら、ミセリは軽くため息を吐いた。

樹海に挑む冒険者は、普通数人の仲間とパーティーを組む。

前線で剣を振るう者や、後方からの支援に徹する者。
あるいは、負傷した仲間の手当てを専門に行う者。

冒険者同士の協力は、生き残る為に不可欠とも言える。

しかし、ミセリには仲間の当てがない。

実力がある者は正に引く手数多となるが、新米のミセリは樹海での経験が全く無い事が大きく響く。


ミセ*-ー-)リ「ま、無いものは仕方ないよね」


当分は市公認の依頼を受けながら力を付ける事になるだろう。

……その間に、できれば今すぐにでも、気の合う同士が見付かれば良いのだが。


655 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:14:33 発信元:210.153.84.177
ミセ*゚ー゚)リ「ま、なんとかなる……よね!」

ミセリは、沸き上がる不安を掻き消した。

ようやく自分の夢が叶ったのだ。全て、これから始まるのだ。
今の自分にできる事があるなら、何も恐れる必要は無い。

踏み出した一歩が、勇気を返してくれる。







662 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:18:01 発信元:210.136.161.228
すみません。半端ですが、ここで一旦打ち切ります。
というのも、序章だけで分量が5倍程度あるので、この場をお借りしては書ききれないのです。
ご支援ありがとうございました


670 :ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです:2010/05/29(土) 20:20:53 発信元:210.153.84.80

>>620-655:ミセ*゚ー゚)リ樹海を征く者のようです
捕捉:ヨツマ→VIP、元々は世界樹でした


663 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:18:33 発信元:118.1.183.54
乙乙!
続きが楽しみ


664 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:18:34 発信元:110.67.99.25
おつ
序章:序か


666 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:19:09 発信元:118.15.157.183

さあ早くスレを立てにいくんだ


671 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:21:09 発信元:122.102.225.250
乙!
続きが気になってもやもやするぜ!


669 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 20:20:21 発信元:219.111.65.131
乙! どの作品にも言えるが、続きが気になって眠れないぜ……


 
 【 長編序章祭(仮) 】インデックスへ戻る

 
総合短編(ファンタジー・時代劇) | コメント(0) | トラックバック(0)
コメント

管理者のみに表示