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 ※この作品は、図書館で行われた【 長編序章祭(仮) 】 にて投下された作品です。

 
281 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 00:55:01 発信元:210.153.84.201
(゜3゜)「ふぅ……」

今日は厄日だ、と男は思った。
目覚まし時計が壊れていたせいで寝坊をし、
愛車がパンクしていたので高いタクシーを使う羽目になり、
結局遅刻をしてろくに働きもしないくせに威張り散らす軍人に怒鳴られ、
会議はさらに軍事費を増やそうとする馬鹿どもが駄々をこねたせいで延長し、
そのせいで終電に間に合わずまたタクシーを使う羽目になった。
まったくの厄日だ。

「お客さん、なんかやなことでもありましたか?」

運転手が前を向いたままくぐもった声で聞いてきた。
バックミラー越しに、マスクをした貧相な顔が見える。


285 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 00:57:39 発信元:210.153.84.202
「ぶちまけちゃっていいですよ。その方がスッキリしますし」

運転手は続ける。
確かに最近はイライラすることが多い。
妻との別居を始めてから、愚痴を聞いてくれる相手もいなくなった。
溜めすぎるのも身体に毒だろう。
今日ぐらいは吐き出したい。

(゜3゜)「ああ、聞いてくれよ、運転手さん。」

男は一気に喋り出す。
仕事のこと、家庭のこと、友人のこと、自分のこと。
軍人は分からず屋が多すぎる。
妻とは何年もセックスレス。
今日の会議での予算案の無茶な振り分け。
そしてそれを帰ってから纏めなければいけないこと。


286 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 00:58:48 発信元:121.111.227.75
軍人って大変なんだな…


288 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:01:37 発信元:210.153.84.202
男は夢中になって吐きつづけた。
運転手は、仕事柄か聞き上手で、相槌を打ちながら笑うべきところでは大袈裟に笑い、悲しむべきところではまるで自分のことのように肩を落とした。

タクシーも意外と悪くない、と男は思った。
確かに金がかかり、乗り心地は悪く、芳香剤の甘い匂いが気になるが、それ以上のメリットがある。
これからは週に一度くらい乗ろうか、と考え始めた。

(゜3゜)「なあ、運転手さん。ストレスを解消するいい方法とか、知らないか?」

すると運転手は少し考えるそぶりを見せたあと、

「自分の場合はですね、お恥ずかしい話なんですが……」

と、顔を男の方へ近付け、

「……風俗に行きます」

と小声で言った。


290 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:03:51 発信元:210.153.84.201
(゜3゜)「はははwwwそりゃ確かにいい案だ! 男ならやっぱりそうだよな!」

人間の三大欲求の一つ、性欲。

それを満たしてストレス解消というのは、理にかなっているのかもしれない。

女の裸体、その感触、その匂い。
男は下腹部が熱くなってくるのを感じた。

タクシーは住宅街に入っていく。

「いやあ、この際ぶっちゃけちゃいますけど、実は自分、素人童て……おっと」

タクシーが急停止した。

男は慣性で前につんのめる。

(゜3゜)「おっ……どうした?」

「すいません……。なんか通行止めらしくて……」


291 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:05:28 発信元:121.111.227.70
先が読めないな…
 
 
292 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:06:32 発信元:210.153.84.202
運転手は申し訳なさそうに言った。
前を見ると、ヘッドライトに照らされた看板が、道路のど真ん中に立っていた。
そこには、『マンホールの点検のため、一時通行止めとなります』という文字が書かれていた。

「どうします? 目的地は通行止めですけど、回ります?」

ここからは家が見える。
わざわざ回るよりも歩いたほうが早いだろう。
鞄を掴む。

(゜3゜)「いや、ここでいい。どうせすぐそこだ」

そう言って男は金を渡す。
運転手はそれを確認し、お釣りを返しながらこう言った。

「風俗に行くか、もしくはナンパでもしてスッキリするのがいいですよ。ムラムラしてちゃ、なにをするにも集中出来ませんからね」

タクシーのドアが開き、運転手が「ありがとうございました」と言うのを聞きながら外へでると、晩夏の夜のひんやりとした空気が気持ち良い。
男は、今度どこかいいソープでも探してみようと思いながら、我が家の方へ歩いていく。


297 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:09:27 発信元:210.153.84.202
その姿を眺めながら、ヘッドライトを消し、運転手はマスクを取った。

「ターゲットとポイントAの距離、30メートル。準備はいいですか」

自分しかいない車内で喋る。
すると、備え付けられた無線からノイズとともに声が聞こえた。

『了解。タイミングはこちらではかる』

その声は少しハスキーな、恐らく女性の声で、言った
運転手はダッシュボードの上にある芳香剤の蓋を閉めながら続ける。

「無線機は所定の場所に隠して下さい。俺が回収します」

『ああ、頼む。それじゃあまた後で……素人童貞君』

「……あれは冗談ですよ」

『隠さなくてもいいさ。君が私と組んでから、全く女性との縁が無いことは知っている』

「……余計なお世話です」

しかし、もう返事は無い。
先程の男を見れば、道の角で誰かと話している様子だ。
運転手はそれを眺めながら、

(;'A`)「……ウツダシノウ」

と呟いた。


299 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:11:21 発信元:121.111.227.69
運転手はドクオだったのか!


300 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:12:11 発信元:210.153.84.201
男が角に差し掛かると、不意に何かが飛び出してきた。

「きゃっ!」

とっさにかわそうとするも叶わず、その何かとぶつかり、思わず尻餅をついた。
目を向ければ、黒髪の女性が倒れていた。
ただし、女性が倒れたのは水溜まりの中だった。

(;゜3゜)「す、すいません! 角で見えなかったもので……」

o川*゚ー゚)o「あ、いえ、こちらも前方不注意でしたし」

女性は笑って手を顔の前で振る。
その姿に男は思わず動きを止めた。
暗がりで見づらいが、目鼻立ちの整った顔。
間違いなく美人であるが、化粧と朗らかな笑顔で幼く、可愛らしく見える。
そして何より、衣服がマズイことになっていた。
ワイシャツも白のパンツスーツも、ビシャビシャに濡れて下着が透けてしまっている。
慌てて目を逸らすが、下腹部がまた熱を帯びてきたのがわかった。


302 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:13:42 発信元:124.146.174.73
こらこら


304 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:14:45 発信元:210.153.84.201
その様子を見た女性が、自分の衣服を見て、

o川;゚ー゚)o「あちゃー……。これはマズイですねぇ……」

と言いながら立ち上がる。

マズイと思うなら少しは隠してくれ、と思う。
生理的な理由で、こちらが立てない。
いや、勃ってはいるのだが。
しかしそんなことはお構い無しに、

o川*゚ー゚)o「ほら、いつまでも座ってないで。どうぞ」

と手を差し出してきた。

(;゜3゜)「いや、その……」

言葉を濁していると、女性は首を傾げたが、すぐに納得したようで、

o川*^ー^)o「ああ、大丈夫ですよ。勃起くらいできゃあきゃあ言いませんから」

と笑い、男の腕を掴み、引き寄せる。
すると必然的に、男が女性に抱き寄せられたような状態になった。


305 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:15:54 発信元:121.111.227.79
ちょいエロ?


307 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:16:42 発信元:210.153.84.201
女性から香る甘い匂い。
先程のタクシーの芳香剤に似た香りがする。

思わず、下劣な感情に支配されそうになる。
このまま押し倒して、凌辱してしまいたい。
気の済むまで、犯してしまいたい。

昴ぶる感情をどうにか抑えて、女性から離れた。

(゜3゜)「……ありがとうございます。怪我はありませんでしたか?」

努めて冷静に、もっとも下腹部には違和感があるが、話す。

o川*゚ー゚)o「私は全然大丈夫ですよ。そちらは?」

(゜3゜)「私も大丈夫です」

改めて彼女を見る。
顔に反して身長は高く、スタイルもいい。
出るところは出て締まるところは締まっている。
顔の幼さが、それらとのギャップを感じさせ、それがまたそそる。

なんともさっきからそっち方面にばかり思考が働くと思い、頭を振る。


310 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:17:57 発信元:123.220.49.73
このキュートは危険な香りがする…


312 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:19:51 発信元:210.153.84.201
o川;゚ー゚)o「それにしても、この服はどうしたもんでしょうねぇ……」

女性は濡れたワイシャツの胸元をつまむ。
そのしぐさを見たとき、さっきの運転手の言葉が頭に浮かんだ。

――『風俗に行くか、もしくはナンパでもしてスッキリするのがいいですよ。ムラムラしてちゃ、なにをするにも集中出来ませんからね』――

なるほど、これは神の啓示か、と男は思った。

(゜3゜)「……もしよかったら、うちに来ませんか? 乾燥機もありますし、こちらに責任がありますから」

なるべく下心がでないよう、さも善意からの提案であるかのように言った。

(゜3゜)「すぐそこに家は見えますし、さすがにその格好の女性が外を歩くのをほっとくわけにはいきません」

さらに続ける。
すると女性は悪戯っぽく微笑むと、

o川*゚ー゚)o「ふふっ、大胆ですね」

(;゜3゜)「い、いや、そういう意図があるわけでは……」

男は慌てて否定する。


313 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:21:08 発信元:121.111.227.78
下心が隠しきれてないww


315 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:21:56 発信元:210.153.84.202
o川*゚ー゚)o「冗談ですよ、冗談。お言葉に甘えさせてもらいます」

そう言って女性は頭を下げた。

そして顔を上げると、思い出したかのように、

o川*゚ー゚)o「あ、それと」

と言い、顔を男の耳元に近付けると、

o川* ー )o「……私、結構Mですから」

と、艶のある声で囁いた。

耳に息がかかり、全身がゾクゾクとする。
慌てて顔を離すと、

o川*^ー^)o

女性はニコニコとしながらこっちを見ていた。

――なるほど、厄日というわけでもなさそうだ――

男もニヤリと笑った。






316 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:22:14 発信元:123.220.49.73
ざわ・・・


317 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:23:42 発信元:124.146.174.74
ざわざわ…


318 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:24:03 発信元:210.153.84.201
住宅街を抜けたところにある大通り。
そこの路肩に一台のシルバーの車が止まっていた。
中には陰鬱な顔をした男が、ノートパソコンをいじっている。

('A`)「……」カタカタカタカタ

画面には、恐らく一般人には全くわからないであろう記号と数字の羅列が、びっしりと表示されている。
それを見ながら、男は機械的に指を動かしていく。

('A`)「……あ」

ちらりとバックミラーを見て、その手を止める。
そして車のロックを解除し、パソコンを閉じた。
同時にガチャリという音とともに後部席のドアが開き、人が滑るように入る。

('A`)「お疲れさまです」

o川*゚ -゚)o「全くその通りだ」

男はダッシュボードを開き、中のタオルを後ろの女に渡した。

川 ∩◇∩)ゴシゴシ

川 ゚ -゚)「……ふぅ」


319 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:25:10 発信元:123.220.49.73
な、なんだって…


320 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:25:12 発信元:43.244.33.47
クーww


321 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:25:14 発信元:121.111.227.74
えー!?クー!!


322 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:25:48 発信元:118.15.157.183
なんという演技派


323 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:26:46 発信元:210.153.84.201
化粧を落とした顔は、先程までの幼い雰囲気など微塵もなく、無表情さが冷たさすら醸し出していた。

('A`)「どうでしたか」

川 ゚ -゚)「予算案資料の写真も撮ったし、話も聞けた。上出来さ」

('A`)「了解です。じゃあ出しますね」

男はそういうと、車のエンジンをかけた。
そのまま発進させ、朝の混雑の道路に滑り込ませる。

川 ゚ -゚)「ドクオ、ああドクオ」

('A`)「なんすかー」

川 ゚ -゚)「私は汚されてしまったよ。どこの誰かもわからない男に汚されたんだ」

('A`)「田中ポセイドン、35歳。シベリア軍部臨時予算編成委員会の担当。既婚、妻とは別居中。住所は……」

ドクオと呼ばれた男は淡々と答える。

川 ゚ -゚)「そうじゃないんだ、ドクオ。自分の相棒が汚されたんだぞ」


324 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:27:53 発信元:124.146.174.73
むふう


325 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:29:24 発信元:210.153.84.201
('A`)「……ハニートラップでいこうって言い出したのはクーさんじゃないっすか。
わざわざ奴の車パンクさせて、媚薬入り芳香剤まで用意させて。マタ=ハリなんざ古いってのに……」

すると、クーと呼ばれた女は、ほんのわずかに顔をしかめた。

川 ゚ -゚)「あんなセックスしか能のない売女と一緒にしないでくれ。
私が言いたいのはだな、ドクオ。
相棒が汚されて震えているのに、俺の胸で泣けーとか、自分が忘れさせてやるーとか、
そういうことが言えないのか、ということなんだ」

('A`)「……仕事ですし、第一クーさん、そんなことしたら俺をボコボコにするでしょ」

ドクオがめんどくさそうに返すと、クーはため息をつく。

川 ゚ -゚)「まったく、甲斐性のない奴だな、お前は。だから素人童貞なんだ」

(;'A`)「だからそれ冗談ですって……」


326 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:30:30 発信元:121.111.227.83
クーかっこいい


328 :川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`):2010/05/29(土) 01:32:25 発信元:210.153.84.202
そんな会話をしながら、彼等を乗せた車は、朝の冷たい空気を切って走る。
彼等はここ、シベリア国の人間ではない。
クー、ドクオという名前も本名ではない。
彼等の本名は彼等自身しかしらない。
ならば彼等は、異国の地で、身分を偽り、パートナーにも名前を教えず、一体何をしているのか。
それは、ほとんどの人間に真実を語らない仕事。
敵を欺き、時には味方も欺き、場合によっては自分すら欺く。

諜報員、工作員、スパイ、エージェント。
もっともその職業名すら、彼等にとっては欺く道具でしかないのだが。

川 ゚ -゚)外套と短剣のようです('A`)





335 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:37:09 発信元:210.153.84.202
終わりです
「外套と短剣」ってのをググれば、どういう小説かわかると思います


332 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:35:10 発信元:123.220.49.73
乙だし!
早く続きが読みたい・・・


336 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 01:37:09 発信元:118.15.157.183

早く続きを書く作業に戻るんだ



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コメント
ドックンドックン~!ふぅん!にゃーんにゃーん
どっくんはくーる

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