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 ※この作品は、図書館で行われた【 長編序章祭(仮) 】 にて投下された作品です。

 
380 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(1/8):2010/05/29(土) 02:12:20 発信元:58.94.151.91
都会とも田舎ともつかぬ街。

十階にも満たぬビルの裾では経営しているのかも定かではないさびれた商店街が風呂敷を広げ、
隣では木造の黒すすけた民家が所狭しと立ち並ぶ、建物だけが事務的に鎮座した街。

海、山、空き地、路地裏、デパート、シャッター、自転車道、汚水、信号のない交差点……それらどんなものもが抱擁され共存の許された街。

往来を闊歩する人は少なく、朝夕の車の行き来だけは雑多で引けも切らず、夜は人の気配が消えて奇妙に静まり返る街。


昨今の都市伝説というものは、こんな過去と未来の狭間ともいえよう街にこそお似合いなのかもしれません。


この街で日夜ささやかれる噂の一つに、『運命売り』というものがありました。
名が体を表すことでしょう、その者は他人に未来を売ることができるのです。

その者から良い運命を買った人は、何事にも成功して、将来ずっと幸せに暮らせますが、逆にその者の気をたててしまった人は悪い未来を押し売られ、
何事にも失敗してしまい、悲惨な人生しか残されていない、という噂です。


381 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(2/8):2010/05/29(土) 02:13:48 発信元:58.94.151.91

その日の夜にも、酔った男がおぼつかない足取りで家への帰路につくすがら、繁華街を縦横無尽にわめき歩いていると、路地裏に見慣れぬ人がいるのに気付きました。
黒い衣をまとっているためにその風貌を拝むことはままなりませんが、間から覗ける黄色い巻き毛と丸い目、しなやかな指先から、かろうじて女性であることは判断できます。

男は酔った勢いもあり、また相手が女性であるという安心感から、つい千鳥足の進む先をその奇妙な格好をした者へと向けました。

(〃゚∀゚)「よおねーちゃん、こんな夜中に、何をしているんだ?」

辺りには電灯の一つもなく、満月だけが照明となった藍色の世界では、さすがに女性一人で出歩くには物騒です。
ましてや繁華街から一歩外れたそこは闇と腐臭が共存する下水道のような空間、どれだけ酒に溺れた酔っ払いであろうとも誤って行くことすらない場所です。
そんな所にどぶさらいではあるまいに、ましてや女性がいようともなれば奇矯なことこの上ありません。

男だって酔いにかまけて興味本位で声をかけただけであり、正常な神経であればクスリやそういった類の歪な人間だと早合点して目を背けたことでしょう。

そんな自覚はさらさら無いのか知れませんが、女性はきょとんとした目つきで男を見上げ、たどたどしく質問に答えました。

ξ ⊿ )ξ「未来を、売っています……わたしは、運命売りです」

(〃゚∀゚)「運命売りだって?」

かねがね噂には聞いたことがありましたが、まさか実在するとは思いもよらず、男性は酔いがさめんがばかりに驚きました。

しかし未来売りと言われても、目の前にいるのはあくまでただの女性です。
やはり何かいかがわしいクスリでもしているのかとも訝しみましたが、ふとクスリをしているとは到底思えない子供らしいふくよかな腕と頬に目をやった途端、口元を歪めました。
酔っている自分のことを馬鹿にされているのかと思い、腹を立てたのです。



382 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(3/8):2010/05/29(土) 02:14:49 発信元:58.94.151.91
(〃゚∀゚)「なんだ、だったらおれが運命を買おうじゃないか。
  とびっきりいい運命を売ってくれ。
  ほら、売れるんだろ?」

ξ ⊿ )ξ「はい、あなたには成功の運命が見えますから、その運命の中で一番良い運命をお売りすることはできます。
  ただし、運命を売るというものはいわば先行投資です。
  お値段は張りますが、よろしいでしょうか?」

(〃゚∀゚)「いくらになるんだ?」

ξ ⊿ )ξ「あなたの運命でしたら、三千万になります」

聞かされた値段はなんと現実離れしたものでしょうか。
やはり馬鹿にされているのだと、男は怒り心頭に達し、がなりたてました。

(#゚∀゚)「酔っ払いだと思いやがって、ばかにするのもいい加減にしろ!」

ξ ⊿ )ξ「いえ、実際に成功したなら、そしてそんな金額ではくだらない幸せと財産を手に入れられるのです。
  ですから、それを理解してください。
  納得がいかないのであれば、何も無理に買うことはございませんから……」

(#゚∀゚)「だまれ、この詐欺師が!」

男はさけぶと、運命売りを突き飛ばしました。
男は酔いの醒めた顔をそむけ、倒れた彼女を傍目にせいせいすると言わんばかりに家への道を歩き始めました。


 
 
385 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(4/8):2010/05/29(土) 02:16:02 発信元:58.94.151.91

次の日、男は渋滞に巻き込まれ、会社へ向かうのが遅くなってしまいました。
大事な商談がある日でしたので、電話をしながら気持は焦るばかりでしたが、事故でもあったのでしょうか。
会社まで続く車はさっぱり進まず、結局会社に着いたのは一時間も経ってからでした。

(;゚∀゚)「相手の人たちは?」

(*ノωノ)「次の予定があるそうで、もう帰られました」

(;゚∀゚)「ああ……ついていない。
  こんな時に限って渋滞だなんて……」

男はうなだれましたが、このときはまだ、運が悪かったとしか思いませんでした。
しかし家に大切な資料を忘れたことに気付くと同時、まるでうたた寝からハッと目が覚めるように、昨晩の出来事が男の頭に鮮明酷烈に思い描かれました。

もしかして……気になってはなかなか仕事に身が入らず、同時にそれからというもの、
資料を紛失したり、雨漏りでデータがとんだりと、偶然による不幸が重なるにつれ、やはりそうなのだろうかと諦念と観念が頭の中をらせん状に渦巻いていました。

そうです、あの夜に出会った運命売りは本物であり、突き飛ばしたことを発端として機嫌を損ねてしまい、
不幸なる運命を押し売りされてしまったが故、こうして偶然が吸い寄せられるように頻発してのではないだろうか。

そうは思っても、突き飛ばしてしまったのは事実でありますし、どこかでまだ男は自身の失敗を認めたくないように、偶然という言葉にしがみついていましたが、
以来何をしても上手くいかないに違いないという先入観が行動を妨げ、動けば動くだけ、動かなければ動かなかったことで次々に不幸が押し寄せてきました。
こうなっては何をしようとも上手くいくわけがありません、男はそれ故に運命売りを免罪符として、何もせずに不幸と対面するという最悪の選択肢を選び続けたのです。

いよいよ一カ月ほど経とうというとき、『偶然によるミス』が積もり積もって会社からクビにすると脅しめいたことを言われてしまいました。


387 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(5/8):2010/05/29(土) 02:17:25 発信元:58.94.151.91
さあ、これはもううかうかしていられません。
男はあわててあの夜と同じ時間に同じ繁華街を歩き、必死に運命売りを探しました。
あのとき出会ったのは偶然だったのでしょう、しかしながら運命売りは待っていたと言わんばかりにつくねんと、同じ場所に同じ黒い装束の恰好で腰掛けていました。

(#゚∀゚)「おい、運命売り! おれの未来を、人生を返せ!」

男が叫びましたが、運命売りは聞こえていないふりをするだけで全く反応を見せません。

(;゚∀゚)「運命売り、おれが悪かった。
  ごめんなさい、だから本来の未来を返してください」

男が両手をついて謝ったなら、運命売りもくすりと笑みを漏らしました。

しかしここで男は、ふと気付きました。
運命売りが本物であれば、以前話していた最高の運命というものも真実なのだ。
あの時は三千万円などと非常識な金額を提示されてつい頭に血が昇ってしまったが、実際はそれでもお釣りがくるほど恵まれた生活が約束されるのだ。

( ゚∀゚)「いや、運命売り。おれは買う。
  以前話してもらったおれの一番良い運命を、買う。
  おれは客だ、さあ、売るんだ」

運命売りが本物と分かるや否や、男は目を輝かせました。
今回は偶然により不幸が重なったが、同じようにこれらすべての偶然が幸運に変わるのであれば……考えただけで興奮してきます。

そんなよこしまな考えを見越してか、運命売りは大きなため息を吐きました。


388 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(6/8):2010/05/29(土) 02:18:09 発信元:58.94.151.91
ξ ⊿ )ξ「お客さん、前回お話ししましたお客さんの運命は、もうすでにありませんよ」

(;゚∀゚)「どういうことだ?」

ξ ⊿ )ξ「つまり、前回お会いしたときにあった最高の運命ですが、すでにあなたはあれから一ヶ月間生活をしました。
  その一カ月で運命は限られてしまうのです、もうあのときの最高の運命は存在しないのです。
  特にこの一カ月は失敗ばかりだったようですから、もうこの前お話ししたほど恵まれた運命はほとんど残されていません」

明るい未来がほとんど残されていない、まるで死刑宣告でもあるかのような一言は軽い口調とはうって変わって残酷極まりないものでした。
聞いた瞬間に男はがくりとうなだれ、頭を抱え込みました。

ξ ー )ξ「今のあなたですが、あの時からすればずいぶんと悪い状態の未来にいますね」

そうです、よくよく考えてみれば、はたしてこの一ヶ月間のミスはすべて偶然だったのでしょうか。
偶然だと割り切ってしまったばかりに失敗が度重なってしまい、ミスから目をそむけたいばかりに偶然などと都合のいい言葉で自分を騙していただけではないでしょうか。
その結果が、こうして自分自身の運命を悪い方向へと限定していったいるのではないでしょうか。

運命売りが本物かどうかは分かりません、しかしながら未来売りのせいだと責任転嫁して自分の非を認められなかった結果が、今の男なのです。

ξ ⊿ )ξ「運命はバイオリズムのようなものです、常に変わるものですから、これからもう少し頑張ってください。
  頑張れば、必ずやよい未来が目の前に開けるはずですから。
  未来なんて買わなくとも、私はどうせ叶えられる限りの運命しかお売りできないのですから、頑張ってください」

運命売りは最後に優しく声をかけると、くるりと踵を返し、闇の中へと消えて行きました。


390 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(7/8):2010/05/29(土) 02:19:05 発信元:58.94.151.91


(;゚∀゚)「例の件ですが、事故渋滞とはいえ工面いただいた時間に間に合わず、そして謝罪がこうも遅れたこと、大変申し訳ありませんでした!」

/ ,' 3 「気にしないでくれよ、逆に我々の方が愛想を尽かされたのかと懸念していたくらいなんだから、はっはっは」


男は次の日から、一転して躍起に頑張りました。
いざ自分の行為を今一度留意してみたならば、小さなミスもあわやというところで気づいて、今までが嘘のように仕事は完ぺきにこなせました。


(*ノωノ)「最近、先輩ってすごく頑張ってますね。
  仕事だって完璧で、頼りになって憧れます」

( ゚∀゚)「おー、そう言ってもらえると嬉しいわ、ありがとうな」

(*ノωノ)「あ、あぷー……」


運命はバイオリズムのようなもので、偶然により失敗してしまうことはままあります。
しかしそれも何かのせいだと思わずに、ミスはミスと認めて、しっかりと切り替えることで、周りの男を見る目も変わり、みるみる男は信頼を勝ち得ました。


果たして男が本当に悪い未来を売られたのかどうか、それは分かりません。
ただ、今の男はできうる限りの良い未来へと向かい、邁進していることだけは、確かなのです。




391 :( ^ω^)ブーンは過去を売るようです(8/8):2010/05/29(土) 02:20:45 発信元:58.94.151.91



 そして巷にはもう一つ噂が、水面下でありながらも確かに存在していたのです。



  過去を売る人がいる――


     その者から良い過去を買った者は、現在の安泰と、美しい未来が開けられる――



  ――その名は、『経歴売り』――



 これは二つの噂がまことしやかにささやかれる街で繰り広げられる、運命売りと経歴売りの、互いのプライドを賭した諍いである。




      ( ^ω^)ブーンは過去を売るようです







392 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 02:22:54 発信元:123.220.49.73
乙!
これも面白そうだな・・・


394 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 02:28:03 発信元:222.5.62.203

地の文多いのに読みやすかった


395 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 02:28:11 発信元:202.253.96.230
読んでるうちに終わってた

面白かった
乙です

( ^ω^)は?



397 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/29(土) 02:46:20 発信元:58.94.151.91
十レスに満たずサルるとは……
皆様がたくさん書かれている中、少々ですが……以上です。
なぜか珍しい祭りに遭遇したので手直ししつつ記念に。

ありがとうございました、シベリアに幸あれ。


>>395
こうご期待ですね。



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