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361 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/09(日) 23:01:40 発信元:218.216.163.208
                           「本作品」を読むときは
                             部屋を明るくして
                         親から離れて読んで下さい
                             (微エロ注意です)

                      推奨BGM:未來のイヴ/ALI PLOJECT
                  ttp://www.youtube.com/watch?v=Ry93IFdvBUg

以下、開始。



362 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:02:45 発信元:218.216.163.208
「永世中立は敗北宣言だ」

 偉い誰かが言いました。
私は犬。私は下僕。渡しは居ぬ。
 偉い誰かに作られました。
私はモルモット。私は脳。私は形而上。

 奴隷。

 差別とは、果たしてどこから差別なのだろう。白人・黒人? 部落? 障害? そこに、常人とどういった違いが
あるのだろうか。ないかもしれないしあるかもしれない。見る人が見ればあるし、見る人が見ればない。どちらでも
ないしどちらでもある。それは例えば、どれほど小さなことでも起こり得る。阻害され淘汰されたムラでは、村八分
の威力は響く。人は精神を破壊されただけで、あっさりと死んでしまう。死ぬことは、実は生きることより、とても
簡単なのだ。でも、人は濁流に流されることなく、ただただ惰性で生きることを選ぶ。そして人間は宗教を得た。
そして人間は神を得た。死という形而上の概念に打ち勝つため――打ち負けないために、神に縋り付き、人は
神秘的・運命的な出遭いを夢想し想像し、無双し創造する。弱者はずたずたの沈みかけの藁にさえ掴まる。
それは、良いこと? それとも、悪いこと? 人には分からない。だから、私。人だけでなく、動物には死という
形而上の概念を有している。死と、そして死ねば上に逝くという概念を。これは神秘的? それとも単なる偶然?
単なる必然? 死は必然。ならば差別は必然? 差別は必要? 差別は必至? 差別は必死? だから、私。

「不老不死とはどういうことか」

 偉い人は言いました。
 偉い人に凌辱されました。

 おかしいな。可笑しいな。
――犯(オカ)しいな。


364 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:06:19 発信元:218.216.163.208
 その写真の下には、『みーと』と書かれていた。
みー、とは、ミルナ=コンツァーのことであり、私の彼氏だった男だ。

 別れた理由というものは、それは千差万別だと思う。
 私が別れた理由は、ポピュラーと言えばポピュラーな、浮気(異性間の縺れに人気とは、おかしな表現だ)。
彼が浮気していた。だから別れた。すっきりするほどの理由だ。

びっくりするほどの理念だ。

ハハ ロ -ロ)ハ「やり直せたらって、そりゃ、思うけどさ」

 声に出してしまうと、あっけないほどにすんなりと、空気はそれを受け入れ、震えさせた。
空気を震わせ、そして私をも震えさせた。どういった動機でのぞくぞくかは分からないけれど、そくぞくする。

 でも――

ハハ ロ -ロ)ハ「優しかったあなたは戻らない」

 ――あっあっあっあっ。

 殺される。
重圧なその音が響く。

 私は殺され、そして生きる。
ある人は私を基督と揶揄した。人類の発展のために。
そんなわけ、ない。発展するのは有害な老人だけだ。誰も救われない。

 いずれ『クレアの悲劇』と呼ばれるその事件は、彼らのせいで勃発した。


365 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:10:07 発信元:218.216.163.208
 ロボット三原則なんて糞喰らえ。星新一は抽象化。手塚治虫は後世に犯された。

 私はH9-M型だ。
流石に電気ひつじの夢は見ないが、世にも珍しい、ナイン・ナンバーズのロボット。
金持ちの道楽に付き合わされた、馬鹿げたロボット――ロボットを名乗るもおこがましい。

  なぜだろう。
私が選ばれたのは。私が選ばれなければならなかった理由は。
何とでも難癖を付けることは出来る。でも、それに意味はない。
よゆうのあるその資金で、彼らは悪ふざけをしているのだ。
と.きが来てそれが手に入れば良いし、手に入らなくとも道化を私が演じる。
私は泣いた。しかしこの事実が覆ることはない。そして私は泣き止んだ。
何よ、と叫ぼうが、私も、彼らの運命は、依然変わることはない。
舐められている。私のレーゾンデートルが侵食されていく。

 きちんと仕事をこなす、しかし差別され続けた穢多・非人のように、私も区別され差別され侮蔑される。


     ――――――――――――――――――――――――――――――

              ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです―――――

     ――――――――――――――――――――――――――――――


                ――――――――――――――――――――――――――――――

                                  ―――――前編

                ――――――――――――――――――――――――――――――
 
 
368 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:13:30 発信元:218.216.163.208
 変わろうと思う気持ちは自殺、ではないけれど。

( ゚д゚ )「私が嫌だって言ったのは、お前がロボットだからじゃない」

 ――そんな科白は、浮気が発覚する前に彼が綴った言葉。

ハハ ロ -ロ)ハ「――って、それ、立派な差別・迫害よね」

 写真はタイム・マシンだと、私は思う。

( ゚д゚ )「違う。私に差別をしようとする意識はない」

ハハ ロ -ロ)ハ「そう考えた時点で、それは差別だと思わない?」

 堂々巡りだ。私は子どもを産むことが出来ない。私は死ぬことを許されない。だから加爾其と精子と栗の花。

 違う。私が怒っているのはそんなことに対してではない。まだ、当時は浮気のことなんて、露さえ知らなかった。
 だから、私は一言、ごめん、と謝ってほしかっただけ。

 彼の尋常学校の同期生に、私は出会った。現在では別段、ロボットと生活することに抵抗を覚える者は、殆どいない。
だから私は、それこそ国際交流でもしているかのように、彼に私を紹介してほしかっただけだ。

( ゚д゚ )『いや、別に、んな仲じゃないさ。こいつはロボットだぞ?』

 私と、そんな仲じゃない? 気持ち良く腰を振っていたのはどいつだ。私を犯したのは誰だ。
お前じゃ、ないのか? 永遠に、私はこの生活が続くんだと思っていた。そして奴らから脱却出来ると。
 知っている。ずっと続くわけがないと、私は不気味だと。時間が止まった私。時間が止まらない彼ら。

 私以外は朽ちて逝くんだと知りながらも、それでも私は愛を求める。愚かで、無様で、無残で、無知で、無益で、畜生で、最低で。
 だから私は、どんなことをされようと、みーを嫌いにならない自信があった。自信だけはあった。自信しかなかった。


370 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:16:55 発信元:218.216.163.208
 初めに写真を撮ろうと言ったのは、確か私だった。
写真はタイム・マシンと初めて言ったのは、私ではなかったはずだ。
このカメラが生み出された時、私はカメラと接続された。何も起こらなかった。

彼女は言った――クズムシ女は言った。「カメラはね、タイム・マシンなんだ」

 クズムシ女は死んだ。
その後、『最期の人類』も死んだ。
更に『 』の時代が終焉を迎えた。
 そして今、私たちがいる。

 カメラは体を写す。カメラは心を映す。

 カメラはタイム・マシンなんだ。

 ――今日はコンツァーとの初デートだ。
デートというものは三回するという。一回目は生理的に合うか。二回目は異性として向き合えるか。三回目は単なる確認。
段階を踏まねばならない。私の場合は必ずしもそうというわけではないが――広義ではそうなのだ。

( ゚д゚ )「や、やあ――バルクレアさん」

 私は少し、眉を顰めた。そして言う。

ハハ ロ -ロ)ハ「クレアで、良いです」

 個体名はH9-M型。識別名はヘル=O=バルクレア。識別名は、彼が付けてくれたものだ。だからあまり大事ではない。
 しかし、今はそれが生きている。コンツァーに呼ばれることで、名前が意味を持ち出した。


373 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:20:42 発信元:218.216.163.208
ハハ ロ -ロ)ハ「では、コンツァー」

 やや間があり、コンツァーは口を開いた。

( ゚д゚ )「ミルナ――と、そう、呼んでいただけないかな。親しくなりたいんだ」

「親しく」
――心の中で反芻する。

ハハ ロ -ロ)ハ「良いですけど、私のこと、分かっていますか?」

 今度は間髪入れず、彼は微笑しながら言った。

( ゚д゚ )「はい。ロボットですよね。それでも私は、あなたに惹かれた」

 知らずに近付く人間がいた。彼らはすぐに私から立ち退いた。
 知って近付く人間がいた。彼らはやがて私から遠退いていった。

 彼は――後者なのだろうか。

そう思う私と、そんなわけない――そう信じたい私とが、両立していた。対立していた。
 彼は、どちらなのだろうか――今まではずれしかいなかったというだけで、確率は低いにしても、
もしかするとあたりがいるのかもしれないし、私にとって要るのかもしれない。

ハハ ロ -ロ)ハ「ミルナ」

 ミルナ。
呟くと、やはりそれは意味を持ち始め、鼓動をし出した。


376 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:24:06 発信元:218.216.163.208
ハハ ロ -ロ)ハ「デート・プランは?」

( ゚д゚ )「失礼ですが、クレア、あなたのことを調べさせていただきました」

 私は、有名人なのだ。

( ゚д゚ )「水族館が好きと知りましたので――」

ハハ ロ -ロ)ハ「そういうのは普通、秘密にしないもの? その方がロマンチックじゃない?」

 私が訂正すると、ミルナは俯き、顔を赤らめ、頭の前で手を振った。

(* д *)「ち、違います! そ、その前におそくじゅでも!? そ、しょ、く、しょくじっ! あー!」

 どうやら彼は、焦ると言葉をどもらせ、噛んでしまうようだ。
というか、食事にしても、それこそそちらを本命の隠し玉として起用させるべきではなかったのだろうか。
――そんなことを考えられるのは、きっと、私が本人ではないからだ。俯瞰しなければ何も考えられない。

ハハ ロ -ロ)ハ「どうせ、好物も知られているんでしょうね……」

 そうひとりごちたのは、別段、嫌みというわけでもなく、淡々とした感想として呟いただけだった。
しかし、ミルナはそれを聞き漏らさなかった。

( ゚д゚ )「……ごめんなさい」

 謝る必要はないわ――そう言おうとしたけれど、どうせ、
それの言い合いになるだろうと案じ、私は喉元の縺れを飲み込み、咀嚼した。


378 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:27:32 発信元:218.216.163.208
 結局、水族館の後に食事にした。
私の好物は、『スシ』。かの≪死に損ないの朽ち果てし種≫も好きだったという
『マグロ』のネタを食べる内に、彼女への好きが転じて、食物への好きという感情へと変化したのだった。

 食事中に喋らない私と一緒に食べて、果たしてミルナは楽しかったのだろうか。不思議だ。
 ミルナも喋らなかったが、それは私に合わせているだけかもしれない。習慣は抜けきらない――元来、無口気質かも
しれない。そんなことを考えても堂々巡りだ。どちらでも構わない。いずれこのまま付き合うのであれば、尚のこと。

 水族館の前に寿司を食べるのはむうとなれけれど、しかし果たして、
水族館を見回った後に寿司を食すというのは、正しいのだろうか。
 そもそも水族館に行かなければ、と思い、私の好きなデート・スポットが水族館だったことを思い出す。

 ロボットにだって、人権はあるのに。
――まあ、私が特別なのだけれど。でも、それでも悲観してしまう。

 時計を見ると、朝ではなく昼とも呼べずかといって夕方とも思えない時間で、つまりは夜だった。

 私もミルナも何も言わず、ただ黙々と、河川敷を歩く。
 ここで私たちは初めてタイム・マシン搭乗の許可書を手に入れた。

( ゚д゚ )「私の好きなものを、押し付けがましいかもしれませんが、クレアに見てほしいと思った」

 そう言い、ミルナは歩みを止め、一瞬、寂しい横顔を作り、河川敷を下り、川の真ん前へと歩き出した。
不意にこちらを見、私がミルナの横に並んだことを近くして、二枚の唇は、何の脈絡もなく離れ始めた。

( ゚д゚ )「もう名前は必要なくなってしまいましたが、私が幼少期を過ごした時間の、その大半がこの川だったと記憶しています」

 ぐ、とミルナの両拳が強く握られたのを、私は知った。私にとってはシステムだが、彼にとっては人生だ。

ハハ ロ -ロ)ハ「綺麗だと思います」


380 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:31:18 発信元:218.216.163.208
 特に偽ることもなく、口を突いた言葉を開け放した。結果、それは肯定という形を選んだ。

 はあ、ミルナは小さく息を吐く。とくり、心臓が高鳴る。
彼は私にとってそれは聴こえない音だと思っている。少し、申し訳ない気持ちになった。

( ゚д゚ )「これを、どう、でしょう」

 まるでリストランテにて出された料理を値踏みするでもなく味わうかのように、
ミルナは単語を区切りながら、手に持つそれを私に向かって提示した。私はそれがカメラだと分かった。

ハハ ロ -ロ)ハ「写真、ですか?」

 写真は――ミルナは微笑み、言霊を活かせた。

( ゚д゚ )「写真は、タイム・マシンなんです」

 タイム・マシン。メジャーどころで言うと、光の宇宙船≪棺桶≫と、冷凍保存装置≪コールド・スリープ≫が挙げられるだろうか。
しかし、どちらも周囲との時間を変化させるだけで、本質的にはタイム・マシンとは無関係だ。
 不思議に思い、私は鸚鵡の真似事をした。

ハハ ロ -ロ)ハ「写真はタイム・マシン、なんですか?」

( ゚д゚ )「ええ。写真を見るだけで季節を、感傷を、声を、風を、全てを思い出させ、追体験することが出来ます」

 だから、タイム・マシンです――彼はそう締め括った。

 今までの男とは違うと、そう言うと陳腐で安っぽいけれど、でもミルナは違った。
どれだけ馬鹿にされても良い。ミルナは大切だ。ミルナが好きだ。私は彼を必要としている。

 ミルナがカメラを構えようとする。それを私は静止した。


382 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:34:38 発信元:218.216.163.208
ハハ ロ -ロ)ハ「私が撮ります」

 私が申告すると、ミルナは大層驚いた表情を拵えた。しかし、事実に気付き、畏まった。

( ゚д゚ )「分かりました。お願いします」

 往年のラブ・ソングを聴きたくなるような甘たるい静寂が、二人だけの世界の雰囲気を構築した。

 私は接続端子にアクセスし、収納式専用変けい脚立で自立させた。ちなみにこのネーミングは、
『変形』形が変わることと『変型』形がおかしいこととに掛けているらしい。確かに、脚立というには少々難があるように感じられる。

見えない壁≪フリーバリア≫と呼ばれる技術は急速に発展していった。その名のとおり見えない、つまりは透明どころではなく
存在しない存在のことだ。例えばカメラの脚立など、邪魔になり、且つ無下に出来ないものに使われている。
つまるところ電磁力でカメラなどを浮かせているらしいが、ロボットである私が言うのも憚られるが、その辺りはよく分からない。

 というわけで現在、河原に二人が並び、カメラが宙に浮くという、珍妙な光景が繰り狭められていた。
 接続端子もプラグ部分とスイッチ以外は見えない壁≪フリーバリア≫技術で作られているため、私の右手にスイッチが、
カメラの後ろにプラグがあるだけで、コードもなにもない。とは言ってもこれを使えるのはロボットだけだ。

ハハ ロ -ロ)ハ「手を、繋ぎましょうか」

 硬直し紅潮する彼の横顔を眺める。羨望する? 憧憬する? 羨ましいか、憧れているかは別として、ある感情が胸に浮かんだ。

( ゚д゚ )「……はい。繋ぎましょう」

 迷っても仕方ないと感じたのか、潔く採決した。二人で温もりを共有し、許容し、私は限界だ、スイッチを『押し』た。

 ――ぱしゃり。

 目の前に乾いた温かい音が響いた。


384 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:38:07 発信元:218.216.163.208
 待ち合わせは、最寄りの駅前でだった。
写真を撮ったひと月後、やはり彼とデートをし、親交を深めた。それから一週間が経過した。
写真を撮ってから――初対面から数えると彼と出会ったのは、一ヶ月と一週間ぶりとなる。

 やがて息を切らした彼が、乱れを整えながら現れた。右手を違和感なく自然に挙げ、私に声を掛けた。

( ゚д゚ )「ま……待った?」

 彼との奥行きは取り払われ、そこからは敬語が消え去った。私たちは密接した。

ハハ ロ -ロ)ハ「いえ。ついさっき、来たばかりです」

 定型句。しかし、それは本当だった――私が先ほどまで喫茶店にいたことを除けば。

 取り払われた奥行きには、近接も存在した。
私たちはお互いの気持ちを片手に託し、それを知り合った。

 ――私の心が、きうとした。

 不覚にも、私はミルナの温もりに対し、必要以上の力を加えてしまった。
それをミルナがどう解釈したのかは分からないが、ミルナは優しく、そっと私の気持ちを握り返した。
 私たちは互いに微笑んだ。

ハハ ロ -ロ)ハ「痛くないですか? ごめんなさい」

 緊張と呼んで良いのだろうか。もっと何か、不確実で不透明なものが、そこにはあった気がした。

( ゚д゚ )「いえ、大丈夫……あのさ」

 と、ミルナは不意に話題を切り出した。


386 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:41:50 発信元:218.216.163.208
( ゚д゚ )「敬語はやめないかな」

 その提案は、実に私が考えていたこととそっくりで、心を見透かされたのかと心配してしまった。

私たちの関係には不必要なことが結構多くて、例えば敬語も、その要因の一つだった。

 綻ぶ頬を叱咤し、私は答えた。

ハハ ロ -ロ)ハ「はい……うん。分かった」

 単なる確認のしようがない。
何故なら私たちは真実の意味で愛し合っているから。

( ゚д゚ )「クレア」

ハハ ロ -ロ)ハ「ミルナ」

 次第に二人の手は溶け合い、とろけていった。
まどろみの中で私は、この時間について考えてみた。
高級な蜂蜜をトーストに塗りたくったような甘たるい時間。
掛け替えのない、掛け値のない時間。

 初めて心の底から、私は笑えた。
 彼の笑顔は、どうしてこんなにも眩いのだろう。
明るくて明るくて、私は心臓の音がうるさくて仕方がなかった。

 もう私は胸の高鳴りを隠すことを忘れていた。
私はミルナに抱き付いていた。
 駅前のロータリーではタクシーや乗用車やバスが行き来していた。


388 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:45:18 発信元:218.216.163.208
 ミルナは人前だから、とか、そんなことは言わず、ただ、受け止めてくれた。
包容こそ――自分への肯定こそ、人を一番優しくさせるんだと、私は思った。

 ――以上、前戯。

 矢継ぎ早に進んだそれは、焦燥した私の掌を彼の体へ持って行かせるには充分すぎる体験だった。
 そして私たちは、桃色しい雰囲気に包まれた静寂の郊外へと足を運んだ。

 き、と。 ドアが開き。
 た、と。 ドアが閉じ。

 まず目に映ったのはベッド。回転なんてしない、ただのダブル。
そしてテレビと、テレビの横の台のノート。
好奇心からそれを捲ると、とても下劣な文字列が、ゲルインキで気だるい雰囲気を醸し出していた。

先にシャワー、浴びるね、と言うと、ミルナは私も一緒に入っても、良いかな、と言った。私は良いよ、と言った。
湯気と熱気が二人の体躯を包み、芳醇な体液が排水溝へ群がった。

 ベッドに乗る私は、きっと、顔が赤くなっていた。林檎のようなほっぺでミルナを迎える。

ハハ ロ -ロ)ハ ( ゚д゚ ) ――こくり、と。

そんな音を発したのがどちらの喉か、私たちにはどうでも良いことだった。

 ――初デート、河原で一回。
 ――二回目のデート、公園で二回。
 ――そして、これで私たちの唇が触れ合ったのは合計四回となった。

三回目のそれと同じように、また今回も、舌が口内を駆け巡る。
今回は、私もミルナの口内へと、自分の下を這わせる。くちゅ、くちゅと、いやらしい音が響く。


389 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/09(日) 23:46:10 発信元:59.135.38.149
ヒャホゥ支援!


391 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:49:16 発信元:218.216.163.208
 いやらしいな、と、高熱で魘された時のように、他人事のように感じる。ふわりとした不思議な感覚。
しかし、それでも我が身、やはり火照るものは火照る。私は、きっと、まだ林檎のほっぺをしてる。

 歯の裏に宛がっていた舌が、 上顎の裏を舐めていた舌が、 やがて互いに絡み合う。
 淫靡なその音は、次第に大きさを増していく。目を閉じ、必死にその感覚を覚える。文字どおり、味わう。

 ことり、と押し倒される。
自ら両腕を上げ、ミルナを誘う。ミルナは慣れているのか、するすると上着を、着実に脱がしていった。
自分の息が荒くなっていることに気付く。凄く、恥ずかしい気持ちになった。

 ブラのホックを外しながらも、しかしミルナの舌は止まることを知らず、ともすれば口内から肢体へと侵食していった。
かちり、ブラが外れ、私の乳房が露わになったにも関わらず、ミルナは肩を舐めた。くすぐったい。

ミルナの右手の、凛と伸びた中指が、臍(ほぞ)を撫で、パンツへ差し掛かる。
ゆっくりと、それでいて早急に、恥じらう暇も見出せぬまま、私の恥部が明らかとなった。

 するりと舌が肢体から抜け出し、ミルナは微笑んだ。

 首筋を静かに舐める。ふぅん、という情けない声は、きっと、残念ながらミルナの耳にも入っただろう。
ミルナの細い指先が、大陰唇を弄ぶ。中イキ派である私としては、まだまだ余裕だ。
 それを見抜かれたのか、ミルナの指は小陰唇をつまみ始め、そのまま中指と人差し指を膣口へと挿入する。

びくん、と体が反り返る。
 目を開けると、ミルナと目が合った。至極、恥ずかしい。

 既に愛液は膝にまで垂れていた。私があまりオナニーをしたくない原因の一つに、この汚れがある。
後で掃除するのが面倒なのだ。ラブホテル、万歳。
しかし、それでもどうしても我慢できなくなる日が、月に二回くらいある。

 十全と判断したのか、ミルナは私の脚を持ち上げる。


393 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:52:29 発信元:218.216.163.208
ハハ ロ -ロ)ハ「やぁっ……」

 そう言ってから、はっと気付く。意識してしまい、余計に恥ずかしくなる。

( ゚д゚ )「……クレア。可愛いよ」

 嘘でもお世辞でもおべっかでもない、本心から言ったのだろうと、私には分かった。
 ――と、そこで私は気付いた。

ハハ ロ -ロ)ハ「あの、その、服……」

 ミルナは服を脱いでいなかった。

( ゚д゚ )「あ」

 え、もしかして、初めてですか。いや、そうじゃないんだけど。クレアみたいな素敵な人と出会ったのは始めてで、
興奮しちゃって。お世辞ですか、何も出ませんよ。本心です。知っています。ふふ、自意識過剰だ。うっかりさんのくせに。

 ――ミルナが服を脱ぎ、数分前と同じく、私の脚を持ち上げた。

 ミルナの陰茎が私の恥部を刺激する。ミルナの両腕が背中へと回る。

私も同じように、両腕を背中に回し、抱擁する。

( ゚д゚ )「動くよ」

ハハ ロ -ロ)ハ「んっ……」

 両腕を離し、枕元へと持っていく。


394 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/09(日) 23:55:55 発信元:218.216.163.208
 何となく、私は初体験を思い出した――
初体験なんて綺麗な言葉で表わすことの出来るようなものではない、ただ、私の意味が失われた日のこと。

 それを恐れてか、私の両手は、拳を形成していた。ぎう、と、シーツを握る。不思議な安堵が体を駆け巡った。

 ――ミルナと私が、繋がった。

 吐息が徐々に激しくなるのを感じる。ミルナも同じのようだった。二人で、喘ぎ声とも言えない、早い鼓動を共有する。

薄く目を開くと、ミルナと目があった。ミルナは微笑んでくれた。私も安心した。
 ミルナに全てを任せ、私は全身を弛緩させた。私だけが、今、ミルナに心を許している。

 ミルナが身体をこちらへと傾ける。甘たるい香りが漂い、私はどきりとした。心臓がとくとく。頬がぽかぽか。
 ミルナは首筋にキスをしたかと思うと、そのまま舌を伸ばし、鎖骨まで、一本の線を身体の上に描いた。
左手を私の腰から移動させ、ベッドの上に静かに置き、右手で私の脇腹を撫でる。少しくすぐったい。

鎖骨から更にラインは延長され、ミルナの唾液は乳房へと蛇行する。声が漏れた。今まで、そんなに特別乳房や
乳首が気持ち良かったなんてことはなかったのに。勝手に、愛だな、と納得した。

事務的なものではなく、そこにはミルナからの愛が、確かに存在した。ミルナは乳頭を吸い始めた。
 やがてもてあまされた左の乳房に、ミルナの右手が添えられ、そして優しく揉まれる。やはり声が漏れる。

 その間にもミルナとの結合部分には刺激が与えられて、私は今までに感じたことのないほどの悦楽を手に入れた。
 セックスなんて、こんなに気持ち良かったんだ。たかが粘膜の接触が、愛を生んでいるんだ。

 一度キスをし、ミルナはまた、両腕を私の腰へ持っていく。

( ゚д゚ )「気持ち良いよ……クレア」

ハハ ロ -ロ)ハ「……私もよ」


396 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/10(月) 00:01:00 発信元:218.216.163.208
 二回、激しいディープキスをし、ミルナの腰のピストンが加速した。
 そして果てた。どくどくと、膣でミルナのペニスを感じる。コンドームが、ひどくいけないものに見えた。
二人の愛の余韻を愉しんだ。ペニスを抜こうとしてミルナを――自分では気付かなかったが涙を浮かべていた――見遣った。

 ぎう、と一度、抱いてくれ、ミルナと私の陰部は離れた。

 ティッシュで精液を拭き取り、ミルナはシャワーを浴びようとする。しかし、私はそれを引き止めた。

ハハ ロ -ロ)ハ「咥えて、良いですか?」

 返事を待てず、私はミルナのペニスを咥えた。

( ゚д゚ )「っ……!」

 腰がぴくりと動き、床に腰を抜かしそうになったが、ミルナはベッドに腰掛けた。

 髪を掻き上げ、右手でペニスを上下に扱き、口で亀頭を包み込み、舌でカリ下をしゃぶる。
そのまま舌を亀頭の先端に移動させる。舌で弄ぶ。桃色の亀頭は、とても官能的だ。

 唇をすぼめ、亀頭だけをしゃぶる。人差し指でで裏筋を撫でながら、親指でカリ首に刺激を与える。
 口の中から溢れ出てしまうほどに、ミルナのペニスが膨張した。

( ゚д゚ )「うっ……出る……クレア」

ハハ ロ -ロ)ハ「駄目っ」

 ミルナはフェラチオを、私以外にされた経験があるんだな、と――私は自分が嫉妬していることに驚いた。


397 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/10(月) 00:04:57 発信元:218.216.163.208
 私はミルナの肛門に人差し指を突き刺した。くいと指を折り曲げ、肛門の外周を刺激する。
前立腺というものが具体的に何処であるかは、自分のGスポットさえ分からない私、適当に穿るだけだ。

( ゚д゚ )「あっ……イクっ……」

 良いですよ、目でそう合図する。

 口内に、大量の精液が――それでも先ほどよりは少ないが――放出される。

ハハ ロ -ロ)ハ「出ましたね」

 微笑みながら私は、こくり、ぷち、と精液を飲み込む。前歯で精液が潰れる触感を味わう。

ハハ ロ -ロ)ハ「苦い……」

 ミルナが申し訳なさそうな顔をしたので、言葉を続けた。

ハハ ロ -ロ)ハ「でも、美味しいです」

 それなら良かった、と言う風に、ミルナは笑った。

 私は、ミルナのことが大好きなんだと、自覚した。


398 :ハハ ロ -ロ)ハ心を「うつ」すようです1/2:2010/05/10(月) 00:08:20 発信元:218.216.163.208
 次第に私は、ミルナに過去を語っていた。

 ロボット症候群に陥ったことも打ち明けた。
 自分がロボットであることを受け入れず、果ては自分を人間だと思い込んでしまう病気。
自分が自分でなくなるような――他人であるような錯覚に陥り、最終的には自殺まで有り得るという。

 私が変われたのは、奴らの手配した男ではなく、何も関与していない男との関係によってだった。
 爛れた淫靡な生活を送り、いつしか私はセックスに溺れ、彼が消えたことも忘れ、ペニスをひたすらに貪っていた。

 私が代わりになってやる。

そんなことは言わなかったが、話しただけで、幾分、楽になれた。
 しかし、彼も所詮、奴らが用意した男に変わりない。

大好きだ。
私はミルナのことが大好きだが、しかし偶然巡り合った彼とは違う。彼は運命しか関与しない出逢いだった。

 でも――だからこそ。

 汚らしいからこそ、私はミルナを好きでいられる自信がある。

 ――しかし、その期待は、すぐに裏切られることになる。

                                                            ハハ ロ -ロ)ハ心を「写」すようです――続






399 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/05/10(月) 00:10:45 発信元:218.216.163.208
以上、終了。
明日同刻より後編投下予定。
多くの支援、活力剤となりました。ありがとうございました。



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