( ^ω^)と(*゚ー゚)の不思議な旅のようです
2010/02/18 Thu 03:20
632 :571:2010/02/17(水) 23:06:19 発信元:210.233.171.53
( ーωー)「…………zz」
Σ( ^ω^)「……ん、あれ」
目を覚ましたとき、ブーンはとても不思議な感じがした
体がふわふわ浮かんでいるかのような、現実から浮遊した感じ
やがて、それが目の前の景色のせいだと気づく
目の前には荒野が広がっていた
草も、木も、山さえもない
ただただ広い、赤茶けた大地と、何故か左側でのびている線路が一本
ふと、気配に気づいてブーンは右隣を向く
(*-ー-)「……zz」
10歳になる娘のしぃだ
ブーンはホッと胸を撫で下ろし、その安らかな寝顔を見つめる
しかし、同時に何か不安も感じていた
一体何が不安なのか考えてみるが、何も思い当たらない
どうしても――
そうして、一つの重大な事実に気付き、思わず呟く
(;^ω^)「……何も覚えてないお
ここは一体どこで、俺は何をしていたんだお? 」
634 :571:2010/02/17(水) 23:09:04 発信元:210.233.171.53
親も、親戚もわからない
友達も、娘がいるのだから存在するはずの妻も
記憶に残されていなかった
Σ(*゚ー゚)「ん、……うう」
しぃが目を覚まし、辺りをキョロキョロと見回す
そしてブーンに目を止めた
ブーンは若干緊張しながら、その顔を見つめ返す
(*゚ー゚)「お父……さん? 」
その言葉を聞いて、ブーンは安心した
もし娘が自分のことを忘れていたら、と一瞬考えてしまったからだ
ブーンはしぃと話し、状況を確認した
しかし何も覚えていないのはしぃも同じで、結局得られるものはなかった
( ^ω^)「ここは何なんだお
線路があるってことは人がいるのかお? 」
ブーンとしぃは果てしなくのびる線路の先を見つめ
今度は逆に自分たちの後ろ側へのびていく方を確認する
意外にも、赤茶色の壁がすぐそばにあり、線路は途切れていた
636 :571:2010/02/17(水) 23:12:02 発信元:210.233.171.53
(*;゚ー゚)「大丈夫なの? お父さん」
青い顔をしたしぃをじっと見つめ、それからブーンは微笑んだ
( ^ω^)「線路ってのは駅まで続いてるもんなんだお、きっと」
もちろん根拠なんて無かった
ただ動かなくちゃいけない気がした
止まってはいけない――止まりたくない――何故か
その感情はどこから来たのか、ブーンにはわからなかった
最初、太陽は真上にあった
それがだんだんと動いていき、ある程度の軌道がわかる
もしここが北半球ならば、ブーンとしぃは北から南へ向かっているはずだ
さすがにここが別の惑星で、軌道そのものが違うなんてことはないだろう
そしてさらに不思議なことに、いくら歩いても二人は疲れなかった
エネルギーを使っているが、いつの間にか補給されている
足はいくらでも前へ出せる
記憶は無くても、自分がどれほど動けば疲れるかくらいは覚えている
けれどここでは通用しない
何かが根本的にずれているのだろう
638 :571:2010/02/17(水) 23:15:01 発信元:210.233.171.53
( ^ω^)「しぃ、疲れないかお? 」
(*゚ー゚)「ううん、大丈夫
なんだか不思議だけど、全然疲れないの」
(*^ω^)「それはよかったお」
少なくとも娘とは同じ感覚を共有している
それは精神的に大きな励みになった
人間は一人きりになって、三日もすれば発狂するときいたことがあるが
娘のおかげで無事なのだろう
っと、ここまで考えてブーンは「あれ? 」と思った
何故このようなことは覚えているのだろう
そこでまた考える――が、今度はなんとなく予想がついた
要は知識として定着しているものは覚えているというわけだ
ブーンは立ち止まって天を見上げ、拳を突き上げる
(*゚ー゚)「お父さん、何やってるの? 」
( ^ω^)「出発してどれくらい経ったか見てるんだお
こうして拳で太陽の動いた距離を測るんだお」
おおよそ1時間――ブーンはそう計測した
そのときだった
642 :571:2010/02/17(水) 23:18:01 発信元:210.233.171.53
(*゚ー゚)「ねえお父さん、あれはなあに? 」
しぃは前方の線路の上に立っているものを指差した
50メートルほど前で佇んでいる、真っ黒な何か
( ^ω^)「人……かお? 」
二人は黒いものまで走って行った
近づくと、人型であることははっきりとわかる
しかし、本来目があるところで赤い光を輝かせながら、その黒いものはぴくりとも動かなかった
しぃは恐れつつも興味に惹かれた様子で、黒いものに一歩近づく
Σ(;^ω^)「……! 」
咄嗟にブーンはしぃを抱えて数歩退いた
黒いものの腕が、さっきまでしぃのいたところで空を切る
――捕まえようとしている
ブーンがそう感じたのと、黒いものの赤い光の目が合うのは同時だった
(*;゚ー゚)「ぁ……なにが、え」
(;^ω^)「逃げるお!! 」
ブーンはしぃの腕をしっかり掴んで駆け出した
643 :571:2010/02/17(水) 23:21:01 発信元:210.233.171.53
黒いものも歩こうとしていたが、幸い歩みは遅い
二人には到底追いつけそうもない
(*;゚ー゚)「お父さん! 前にもいるよ! 」
後方に気を取られていたため、しぃの声ではっとするブーン
立ちはだかる黒いものが、二体
腕は既に持ち上げられて、歩み寄っている
(;^ω^)「お、おい、くるなああああああ!! 」
無我夢中で、ブーンは足元の拳大の石を掴み、投げる
片方の黒いものに命中――大勢が崩れる
(;^ω^)「抜けるお! 」
(*;゚ー゚)「うん! 」
二人はよろめいた黒いものを押し倒して、先へと駆けてゆく
前へ、前へ、前へ――――走り続けた
疲れないこの世界でも、急激な運動の後は汗も出るし、呼吸も荒くなる
だから回復が速いという方が正確なのかもしれない
昼の陽光が斜光に変わるころ、二人は足を止める
後ろに黒いものは見当たらない
646 :571:2010/02/17(水) 23:24:02 発信元:210.233.171.53
(*;゚ー゚)「ああ! お父さん! 」
突然しぃが叫ぶ
(*;゚ー゚)「影が……影が無いわ、あたしたち! 」
驚きながらも、ブーンはしぃの足元、そして自分の足元を見る
どちらにも、本来あるべき影が無い
(;^ω^)「どういうことだお!? 」
影が無い――黒い影が無い――黒い――
(;^ω^)「ひょっとしたら、さっきのは影なのかお? 」
(*;゚ー゚)「でも三つあったよ」
(;^ω^)「わからないお、なんでとかそんなことさっぱり」
(*;゚ー゚)「ねえお父さん、怖いよあたし、夜が怖い
どうするの、真っ暗な中であんなの出てきたら何も」
(#^ω^)「だからわからないって言ってるんだお!! 」
(*;゚ ゚)「…………」
しぃの眼からは、明らかに恐怖が伝わってきた
ただし、怒られたから怖い、というのとは違う
もっと別の、何か
649 :571:2010/02/17(水) 23:27:02 発信元:210.233.171.53
/ ,' 3「夜は来やせんよ」
いきなり声がして、その時二人は初めて隣の岩に寄りかかっている老人に気付いた
/ ,' 3「この世界に夜はない
あの太陽が沈みきると、また東から別の太陽が昇るんじゃ」
二人は線路から見て左、つまり東の方角へ顔を向ける
確かに色が明るくなりつつある
夜明け前のように
だいぶ落ち着いた二人は老人に話しかけた
( ^ω^)「おじいさんは誰なんだお? 」
/ ,' 3「わしは荒巻
他は覚えとらんのじゃ」
(*゚ー゚)「おじいさん、あたしたちと同じように記憶がないのね? 」
/ ,' 3「ああ、そうじゃ」
( ^ω^)「この世界って……なんなんだお? 」
/ ,' 3「当然のことながらわからん
ただ、お前らのようにここへ来る人間を何人か見てきた
みなあの黒いものに連れてかれてしまったがの」
652 :571:2010/02/17(水) 23:30:01 発信元:210.233.171.53
(*;゚ー゚)「や、やっぱり連れて行かれるのね?
どこへ行くの? 」
(;^ω^)「もしかしてあの世かお!? 」
/ ,' 3「連れて行かれるまでわからんよ
わしも昔は連れて行かれそうになったが、今ではさっぱりじゃ
やはりさっさと捕まっておけばよかったのかのお」
(*゚ー゚)「? 怖くないの? 」
/ ,' 3「ほっほ
怖いが、孤独の方がつらいのじゃ」
/ ,' 3「さて、お二人さんはこれからどうするのじゃ? 」
荒巻の発言で、ブーンとしぃは少し考える
( ^ω^)「進むしか、ないと思いますお」
(*゚ー゚)「線路の先には駅があるはずだって、お父さん言ってたもの」
老人は「ほうほう」とつぶやいて、それから続ける
/ ,' 3「止めはしないが、一つ言っておく
もはや何も無くなってしまったわしだからわかるのじゃ
あの黒いものは恐れるものじゃない、それを忘れるな」
656 :571:2010/02/17(水) 23:33:02 発信元:210.233.171.53
二人は老人を後にした
二つめの太陽が昇り、沈むと、また次の太陽が昇る
それが何回も繰り返された
そのうちいくつかの決まりを発見した
黒いもの――二人はそれを『影』と呼ぶことにした――は奇数回目の太陽のときにしか現れないこと
きっと影にとっての活動期間が奇数回目の太陽なのだと推測した
そして線路から真横にいくら走っても、また線路に辿り着くこと
たとえば線路に石で傷をつけ、真横に走って次の線路を見つける
そして確認すると、先ほどつけた傷があるのだ
( ^ω^)「僕らはこの線路からは逃れられない、ということかお」
気付くことは他にもある
この世界に雲がないこと
水がないからなのだろうか
線路なのに電車はおろか汽車も走らないこと
これでは駅の存在も疑わしい
(*゚ー゚)「…………」
そして、しぃのこと
658 :571:2010/02/17(水) 23:36:01 発信元:210.233.171.53
( ^ω^)「しぃ、少し休憩するお」
時折エネルギーがあまり回復されないときがある
特に偶数の太陽のときだ
そんな時には少し休む必要があった
もっとも食料なんて無いし、要らない
足を止めてれば自然と回復する
(*゚ー゚)「う、うん」
( ^ω^)「…………」
ここのところ、しぃの様子が変わっている
ブーンを恐れている
そんな気が、ブーンにはした
ブーンが怒ってからだ
初めの影の襲撃以来、しぃの眼が変わったのだ
休憩している間に、ブーンは質問した
( ^ω^)「しぃ、いったい僕の何が怖いんだお? 」
(* ‐ )「…………」
(* ‐ )「また、怒ったから」
660 :571:2010/02/17(水) 23:39:01 発信元:210.233.171.53
(;^ω^)「また? 」
(* ‐ )「うん」
(;^ω^)「も、もしかして記憶が戻ったのかお!? 」
(* ‐ )「…………」
(;^ω^)「しぃ! 」
(* ‐ )「答えたく、ないの」
それ以上追及することは、ブーンにはできなかった
記憶が戻ったのかどうか、それすらわからない
しぃをどうして怒ったのか、何故答えたくないのか
ブーンは自分の記憶が戻らないことをひどくもどかしく感じた
二人は歩き続けた
この果てしない荒野で
ただ一本のびる線路を頼りに進み続けた
そしてとうとう
壁が見えてきた
662 :571:2010/02/17(水) 23:42:01 発信元:210.233.171.53
(*^ω^)「壁だお!
線路の終わりに近づいたんだお! 」
二人は意気揚々と駆け出した
長かった歩みがとうとう終わるから
線路の先端、駅があるはずの場所
しかし
走るにつれて、だんだんわかってきた
そして同時に失望の感が湧いてきた
壁にたどりついた
赤茶色の壁
出発の時も見た壁
駅は――無い
線路は途切れていた
(; ω )「…………」
(* ‐ )「…………」
二人は線路から横へ横へと歩いていく
(*;゚ー゚)「あぁ! 」
663 :571:2010/02/17(水) 23:45:01 発信元:210.233.171.53
しぃが悲鳴に近い声を上げて、線路を指す
真横にある線路の上
影がいる、四体も
(;^ω^)「くそお! こんなときに」
ブーンは急いで足元の石を掴む
しかし、しぃの腕がそれを止めてきた
(;^ω^)「何するんだお、しぃ! 」
(*;゚ー゚)「違う、違うの」
しぃは首を横に振り、影を見つめる
眼が違う
恐れじゃない
それは驚いているときの眼だった
(;^ω^)「しぃ、影の正体がわかったのかお!? 」
(*;゚ー゚)「……敵じゃない」
しぃはそう呟くと、ブーンから手を離す
そして影へ歩み寄っていく
667 :571:2010/02/17(水) 23:48:01 発信元:210.233.171.53
(;^ω^)「しぃ!? しぃーー! 」
ブーンの叫び声は空しく響いた
しぃは影に近づく
影の腕が伸びる
そして線路の上で――しぃをつかんだ
同時に、ガタゴトと音が聞こえてくる
ブーンは驚いて、今まで歩いてきた方の線路を見る
いつの間にか、来ないと思っていた列車が走ってきていた
Σ(;^ω^)「! しぃ、逃げるお! 轢かれるお!! 」
しぃは動かない
線路の上で、ブーンの方を向き、叫ぶ
(*;゚ー゚)「お父さーーーん!!
影は敵じゃないの!
気付いて、お父さん、逃げちゃダメ!! 」
しぃの言葉の意味が、ブーンには理解できなかった
何故だか影に連れて行かれたくない、その理由もわからないのに
影を恐れるなという言葉の意味がわかるはずなかった
列車がどんどん近づいていき、そして――
670 :571:2010/02/17(水) 23:51:01 発信元:210.233.171.53
(; ω )「くっ……!! 」
ブーンは思わず目を伏せた
当たったはずだと思ったからだ
直撃のはず、しぃは列車にはねられたはず
だが、音はしない
何もない
ブーンは恐る恐る、目を上げた
目の前に、影がいた
真っ赤な目をして、手を差し伸べている
( ^ω^)「…………」
ブーンは、しぃの言葉、娘の叫びを思い出していた
『影は敵じゃない』
『逃げちゃダメ』
ブーンは今、確かにわかった
しぃの言葉の意味を
( ^ω^)「……しぃ? 」
~~~~~~~~~~~~~~~~
673 :571:2010/02/17(水) 23:54:03 発信元:210.233.171.53
目を開けて、ぼんやりとした視界がだんだん晴れて、自分が病室にいるとわかる
(,,;Д;)「あ、しぃの父ちゃんも目をさました! 」
泣いてた子どもの一人がブーンに向けて行った
他の子どもたち注目が隣のベッドから移った
そして先ほどまで子どもたちが注目していたベッドにいるのは
(;^ω^)「しぃ! 」
(*゚ー゚)「お父さん! 」
しぃが快活に返事する
(*゚ー゚)「影に捕まってくれたのね!
あたしが思ったから
お父さんを助けたいって! 」
(;^ω^)「じゃあ、あの最後の影はやっぱりしぃだったのかお!
それじゃ、あの四つの影は? 」
しぃは自分の周りを見回した
しぃを取り囲んでいるのは、しぃの友達
ちょうど四人だ
676 :571:2010/02/17(水) 23:57:01 発信元:210.233.171.53
( ^ω^)「……あ」
ブーンは自分の記憶が戻っていることに気がついた
そして、大切なことも思い出した
何故、あの世界に行ったのか
( ω )「わかったお」
('、`*川「ねえねえ、さっきから何の話? 」
( ><)「ぜんぜんわかんないんです! 」
子どもたちは全員、ぽかんとした様子だった
しぃだけは全部悟った様子で、ベッドを下りた
(,,;Д;)「しぃ! もう大丈夫なのか? 」
(=゚ω゚)ノ「急に動くと危なぃょぅ」
(*゚ー゚)「平気よ、ありがとう」
しぃはゆっくりと、父親の元へ歩み寄る
ブーンは娘の顔を見つめた
~~~~~~~~~~~~~~~~
678 :571:2010/02/18(木) 00:00:08 発信元:210.233.171.53
その日の夜中、ブーンは妻が入院している病院から連絡があった
妻が亡くなった――と
( ^ω^)「…………」
何も考えないまま、ブーンは線路の上にいた
そこは昔から交通事故が多発するいわくつきの線路
自暴自棄になった人をおびき寄せる不気味な場所だった
とにかく死にたい
生きる気力など、もう無かった
「お父さん! 」
突然声を掛けられて、ブーンは振り向いた
踏切のところに娘のしぃ
(*;゚ー゚)「何やってるの? 」
( ^ω^)「しぃ、寝てたんじゃないのかお? 」
(*;゚ー゚)「玄関が開く音がして……それで
お父さん、どこかいくの? 」
( ^ω^)「……お前のお母さんのところだお」
681 :571:2010/02/18(木) 00:03:01 発信元:210.233.171.53
(*;゚ー゚)「……どこなの? 」
娘には妻が死んだことは、言えなかった
どうせすぐわかることなのに
ブーンはそれを自分の口では言いだせなかった
( ω )「わからないお」
しぃは必死に首を横に振る
(*;゚ー゚)「ねえ、どこ!? 病院じゃないの? ねえ」
(#^ω^)「だからわからないって言ってるんだお!! 」
(*;゚ ゚)「…………」
電車の音が聞こえてきた
光がブーンを照らす
直撃ルート
しかし
割り込んでくる小さな影
そして――
~~~~~~~~~~~~~~~~
684 :571:2010/02/18(木) 00:06:07 発信元:210.233.171.53
( ω )「しぃ、記憶は戻ってたのかお? 」
(*゚ー゚)「最初は、お父さんに怒られたとき
そして、四つの影を見たとき
影の背丈がね、友達のと同じだと思って、気付いたの
そしたら思い出した
あたしが事故にあって、違う世界に飛ばされたこと
そして友達が、あたしたちを元の世界に戻そうとしていること」
( ω )「…………」
(*゚ー゚)「きっと、影ってこっちの世界の力なんじゃないかな
ちょっとこじつけっぽいけど
こっちで死んだあたしたちには影がなくて、
こっちの世界にいる友達が戻しに来たってことは
そうなのかなって思ったの」
( ω )「しぃは賢くなったお
お母さんに似てるお」
(*゚ー゚)「ううん、お父さんの部屋の本、よく読むから」
(*^ー^) 「お父さんはいっつも仕事で忙しいからあまり会えないけど
お父さんの本を読むと、物知りなお父さんと一緒にいられる気がするの」
685 :571:2010/02/18(木) 00:09:01 発信元:210.233.171.53
気がつくとブーンは、しぃを抱きしめていた
全部思い出していたから
自分が事故の前に、全然しぃのことを考えていなかったこと
事故の直前まで忘れていたこと
事故の間際、しぃのことを邪魔だと思ったこと
「……ごめん」
旅の途中、しぃが自分におびえていたこと
しぃを怒鳴った自分におびえていたこと
それでも最後には自分をこっちに戻しに来てくれたこと
「ごめんだお」
しぃに毎日つらい思いさせていたこと
旅の途中に話し相手がいて、とても気分が楽だったこと
( ω )「ごめんだお、しぃ……
そしてありがとうだお
こんなダメな僕を助けたいと思ってくれて」
震える手で、ブーンはしぃを強く抱いた
しぃはとても気持ちよさそうに目を閉じていた
687 :571:2010/02/18(木) 00:12:01 発信元:210.233.171.53
数ヵ月後
「あの人、いつまで生かしておくのかねえ
身寄りの人ってのがいるってきいたけど」
「それがねえ、何年も前に交通事故で死んじゃったのよ
今では親戚が補助金だしてるっていうけど、正直関係ない人養うって変よねえ」
「きっとよくわかってないのよね、ただ金だせばいいって感じで」
( ^ω^)「…………」
(*゚ー゚)「…………」
病院の一室
何年も前に電車にはねられた人が植物状態で眠っているという
ブーンとしぃはその病室に入った
/ ,' 3「……zz」
(*゚ー゚)「あ、あのおじいさん」
( ^ω^)「やっぱりだお
お祈りするんだお」
二人は願った
老人が元の世界に戻ってくるように
689 :571:2010/02/18(木) 00:15:02 発信元:210.233.171.53
Σ/ ,' 3「ほげっ!? 」
( ^ω^)
(*゚ー゚)
/ ,' 3「……ああ、あんたらか
いつか見たのう」
( ^ω^)「おじいさん、どんな気分ですかお? 」
(*゚ー゚)「戻れて良かった? 」
/ ,' 3「そうじゃのう……」
/ ,' 3「わしはまだ全部を失ってはいなかったんじゃな」
~~完~~
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