( ´_ゝ`)と(´<_` )はスパイのようです
2010/02/14 Sun 06:13
161 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:32:20 発信元:122.102.231.42
( ´_ゝ`)「もう少しだ」
(´<_` )「ああ、もう少しだな」
顔のよく似た2人が橋の上を走る。
2人とも手に剣を持っており、ただの一般人ではないとすぐにわかる。
( ´_ゝ`)「オレ達は解放される――」
163 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:35:36 発信元:122.102.231.42
( ゚∀゚)「って、んなわけねーだろ?」
2人の前に立ちはだかったのは、戦いのためだけにつけられた筋肉を持つ男。
身の丈ほどもある大きな剣を担ぎ、2人を見ている。
( ´_ゝ`)「しまった!」
慌てて戻ろうとするが、後ろには甲冑に身を包んだ者達が行く手を塞いでいる。
(´<_` )「兄者……」
( ´_ゝ`)「大丈夫だ。大丈夫……」
兄者の言葉は自分に言い聞かせるようだった。
瞳は不安げに揺れながらも、自分達の前に立ちはだかる男を見据えている。
( ´_ゝ`)「そこをどけ……ジョルジュ!」
剣を構え、ジョルジュを威嚇する。
164 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:38:38 発信元:122.102.231.42
( ゚∀゚)「はい。どーぞ。
って、言うわけねーだろ?」
( ´_ゝ`)「もっともだな」
切先を兄者に向け、ジョルジュも戦いの意思を示す。
( ´_ゝ`)「だが、我ら兄弟が」
(´<_` )「貴様を倒す!」
兄者と弟者は横に並び、ジョルジュに向きあう。
( ゚∀゚)「お前ら、手ぇ出すなよ」
ジョルジュが2人の後ろに控えている兵士達へ声をかけた。
その顔には強者が弱者を見下すときの笑みを浮かべている。
( ゚∀゚)「いっちょ、教育してやるか」
166 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:41:29 発信元:122.102.231.42
( ´_ゝ`)「その口」
(´<_` )「すぐに開けられなくしてやる!」
2人は同時に地を蹴り、2手に別れる。
( ゚∀゚)「オレに勝てるとでも?」
鼻で笑い、弟者の方へ一気に跳躍する。
(´<_` )「早っ――!」
一瞬で詰められた間合いに、弟者が目を見開く。
目前まで迫った大剣を防ぐため、剣でなぎ払おうと腕を動かす。。
( ゚∀゚)「甘いな」
だが、そこにあったのは圧倒的な力の差。
金属同士がぶつかりあう高い音がした後、地面に落ちたのは弟者の剣だった。
無防備になった弟者の体をジョルジュの大剣が狙う。
169 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:44:31 発信元:122.102.231.42
( ´_ゝ`)「させてたまるか!」
大剣が弟者の体を2つにする前に、兄者がジョルジュの背中をとった。
突き刺そうとする兄者の剣を、ジョルジュは体を2人に対して横にすることであっさりと避けてしまう。
しかも、ジョルジュは大剣を片手に持ちかえ、あまった手で兄者の頭を鷲掴みにした。
(´<_`;)「兄者!」
(;´_ゝ`)「っく……。離せ!」
( ゚∀゚)「えー。ヤダ」
ニヤケた笑みで、兄者の頭を掴む手に力をこめていく。
伊達に戦いを経験してきたわけではないらしく、その力は兄者を確実に苦しめる。
ジョルジュが兄者に気を取られているすきに、剣を取り戻そうとしてみるが、
弟者も大剣を突きつけられており、動くことができない。
171 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:47:25 発信元:122.102.231.42
( ゚∀゚)「だからさ、大人しく戻ってこいよ」
( _ゝ )「あ……うっ……」
呻きながらも、兄者は剣を離さない。
( ゚∀゚)「せっかくオレが拾ってやって、育ててやってんだしさ」
ニヤケた笑い。
2人の間にこみ上げてくるのは怒り。
172 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:50:29 発信元:122.102.231.42
(´<_` )「兄者! 恨むなよ!」
弟者が叫び、一歩退いて剣を取りに走る。
( ゚∀゚)「ほぉ。さすがオレの生徒」
( _ゝ )「ああああああ!!」
ジョルジュは走っていく弟者を眺めながら、兄者の頭を潰そうとする。
( ゚∀゚)「戦場で孤独に生きていたお前達にオレは居場所をやった」
(´<_` )「無理矢理つれてきたの間違いだろ!」
弟者が剣を手に取り、ジョルジュへと突っ込んでいく。
左手しか使えない今ならば、どうにかなるかもしれない。
仮に、右手を使ってきたとしても、兄者が解放される。
弟者にとって、この攻撃は良い方向にしか転ばない。
174 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:53:25 発信元:122.102.231.42
( ゚∀゚)「稽古もつけてやった」
(´<_` )「拷問だろ?!」
剣と剣が再びぶつかりあう。
ジョルジュの利き手は右だと弟者は知っている。
左手で扱われる大剣は、先ほどのような力もキレもない。
( ゚∀゚)「何故、オレから逃げる?
敬愛すべき王に牙を向ける?」
( _ゝ )「憎いからだよ」
呻くばかりだった兄者が言葉を紡いだ。
握られていた兄者の剣が一線を描く。
( ゚∀゚)「っちぃ!」
兄者は自分を苦しめている右手ではなく、
大剣を奮っている左手を傷つけた。
176 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 19:56:29 発信元:122.102.231.42
(´<_` )「流石だな!」
左手に気を取られている隙に、弟者がジョルジュの右腕を切り落とした。
(;゚∀゚)「な、にぃ……っ」
( ´_ゝ`)「助かった。ありがとう弟者」
(´<_` )「こっちこそ」
互いに支えあい、剣を構える2人を前に、ジョルジュは混乱していた。
いくら予想外の攻撃だったとはいえ、弟者ごときに右腕をやるほど自分は弱くない。
あの瞬間、自分の体の動きが鈍かったのだ。
178 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:02:50 発信元:122.102.231.42
( ´_ゝ`)「オレ特性の痺れ薬はどうだ?」
(´<_` )「即効性だぞ」
立場が逆転した。
弱者を見下すニヤケた笑みを浮かべるのは双子の兄弟。
唇を噛み、死を間近にするのはジョルジュ。
兵士達がどうするべきかと、後ろのほうでざわついている。
( ゚∀゚)「オレに恥かかせんじゃねーぞ!」
ジョルジュが叫ぶ。
暗に手を出すなと言い、剣を構える。
( ゚∀゚)「右腕? いらねーよ」
痺れている左手で大剣を振りかざす。
( ゚∀゚)「痺れ? ハンデだろ?」
180 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:05:50 発信元:122.102.231.42
不敵な笑みに、兄弟は背筋が凍った。
不本意ではあるが、何年もこの男と生きてきたのだ。
諦める男ではないし、弱い男でもない。
向かってくるからには、相手を殺す気でくる。
( ´_ゝ`)「さよならだ」
(´<_` )「あんたとも、この国とも……」
2人は剣を握りしめた。
ジョルジュから学んだことだ。
戦うならば、必ず殺せ。それがマナーだ。
聞いたときは、なんと凶悪な男だと思った。
けれど、ジョルジュは自分が殺される立場であっても、自論を崩さない。
ならば報いてやらねばならぬだろう。
183 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:08:34 発信元:122.102.231.42
兄者が剣を振りかざしながらジョルジュへ向かっていく。
( ゚∀゚)「あ、まい!」
その剣を弾き、兄者を足で蹴り飛ばす。
兄者の腹を踏みつけ、弟者のほうへ目を向ける。
(´<_` )「甘いのはお前だ!」
突き刺すように剣を構えながら、とっしんしていく。
単純に向かってくるだけならば、リーチの長いジョルジュの大剣の方が有利だ。
弟者に大剣の切先を向ける。
( ´_ゝ`)「それですむとは思ってないだろうな!」
踏みつけられていた兄者が、剣をジョルジュの足に突き刺した。
( ゚∀゚)「あ……ぐっ」
足を突き刺した剣を握る兄者の腕を、ジョルジュの大剣が貫いた。
( ´_ゝ`)「――――っ」
(´<_` )「終わりだ」
兄者の腕を犠牲に、ジョルジュの大剣が封じられた。
185 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:11:46 発信元:122.102.231.42
( ∀ )「――――」
弟者の剣がジョルジュの体を突きぬけた。
赤い血が流れ、ジョルジュの体が崩れる。
(´<_` )「…………」
( ´_ゝ`)「……行こう」
貫かれた腕を抑えながら、兄者が先を促す。
後ろに控えている兵士達は、どのような行動をとれば、
ジョルジュの意思に一番かなっているのかと考えているようだ。
(´<_` )「ああ。そうだな」
憎かったし、嫌いだった。
それでも、ずっと一緒だった。
( ∀ )
187 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:14:27 発信元:122.102.231.42
殺したのは自分達なのだ。
後悔はしていない。
ただ、少しだけ虚しい。
( ´_ゝ`)「なあ、弟者」
(´<_` )「……そうだな」
アイコンタクトで全てが通じる。
2人は協力して、ジョルジュを持ち上げた。
( ´_ゝ`)「重いな」
(´<_` )「でかいからな」
引きずられていく上司の姿を、兵士達が見ている。
( ´_ゝ`)「さよなら」(´<_` )
190 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:18:33 発信元:122.102.231.42
ボチャン。と、水の中に沈む音がした。
水は一瞬だけ赤く染まり、すぐにもとの色に戻った。
2人はそれを見届け、立ち去った。
(兵・A・)「ジョルジュ様!!」
(兵゚Д゚)「誰か! 引き上げろ!!」
そんな雑音も2人の耳には入ってこない。
2人は赤い道を作りながら、因縁の国を出た。
もう、二度とこの国に足を踏み入れることはないだろう。
193 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:23:24 発信元:122.102.231.42
( ´_ゝ`)「まあ、ジョルジュも死んだし、あの国はもう大したことないぞ」
川 ゚ -゚)「そうか。ありがとう」
(´<_` )「まったく。幼くて可愛いオレ達をスパイにするとは……」
lw´‐ _‐ノv「何を言う。米よりも可愛いものがあるものか」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、ちょっと黙ってなさいよ」
今、2人がいるのはジョルジュがいた国と敵対している国の会議室。
兄者は片腕を失っていた。
(*゚ー゚)「ま、ジョルジュに対して腕一本ですんだのはラッキーよね」
( ゚д゚ )「片方は死ぬと思ってたしな」
( ´_ゝ`)そ「ええっ?! 初耳だよ!」
(´<_`;)「恐ろしい計算をされていたのだな……」
195 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:26:41 発信元:122.102.231.42
ミセ*゚ー゚)リ「ま、まあ、結果オーライってことで。ね?」
( ´_ゝ`)「ミセリさんがそう仰るのなら!」
(´<_` )「……はぁ」
【+ 】ゞ゚)「ジョルジュも、人の子だった……というわけか」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?」
【+ 】ゞ゚)「おおかた、2人に情が移ったのだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「てか、それを狙ってたんじゃないの?」
川 ゚ -゚)「……そうだ」
(*゚ー゚) 「嘘つきー」
川;゚ -゚)「う、嘘じゃないぞ!」
( ´_ゝ`)と(´<_` )はスパイのようです
~完~
197 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2010/02/13(土) 20:30:58 発信元:122.102.231.42
たくさんの支援ありがとうございました。
お題は
>>143
橋の上の戦い
>>144
左手が痺れる
>>145
教育してやるか
です。
自分がこんなに戦闘が書けないなんてビックリした。
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