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479 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:40:23 発信元:58.88.55.15
            川 ゚ -゚)チョコをあげるようですζ(゚ー゚*ζ
 今年のバレンタインデーは、日曜日だ。


482 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:41:54 発信元:58.88.55.15
 不況も関係して義理用チョコの売り上げが落ちる見込みらしくて、
画面の中の店員が眉を八の字にしていた。

(´・ω・`)「いやあ、参っちゃいましたね」
『この状況を打開すべく、メーカー側が取った戦略とは――?』

 私はそこでテレビを消した。
 今年のバレンタインは、世間からすれば何年ものスパンの中の
一回でしかないのだろうけど、私にとっては違う。

 私は今年初めて、本命チョコを渡す予定なのだ。

 バレンタインが日曜日だろうと、おおよその女子高生は気にしない。
 きっと翌日の月曜日の教室が、チョコ交換会場になるだけだ。
 だって彼女たちは、イベントにかこつけて騒ぎたいだけ、
それでもって甘い物が食べたいだけなのだから。

 でも、本命となると話が違う。当日に渡さないと意味が無い。

 恥ずかしながらも特別な誰かにあげるなんてことを計る身としては、
義理に紛れて渡せる分、平日である方がありがたかった。
 そこだけは、製菓業界に同意してやってもいい。


485 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:43:40 発信元:58.88.55.15
 二月も二週目のある日、放課後。
 私は友人のクーと並んで歩いていた。私は家族への義理まで含めて
手作りのつもりなので、買い物に付き合ってもらうのだ。
 高校三年生を目前にしている今、来年はこんなことしてないんだろ
うなと何となく思う。

ζ(゚ー゚*ζ「今年のバレンタイン、日曜だよね」
川 ゚ -゚)「ああ、助かるな。私は今年は義理は配らないことにしたよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ」

 不景気は子供の懐にまで北風を吹かせている、ということらしい。
 同じようなことを言っている友人は結構いた。
 去年クーは、美味しいチョコケーキを作ってきてくれた。
 思えばあれから、餌付けされるように仲良くなったような気もする。
 今年食べられないのは残念だ。すごく。

ζ(゚ー゚*ζ「私も、今年はみんなにアルファベットチョコで済まそうかな」
川 ゚ -゚)「はは、それはいい」

 クーと最初に会った時は、少し堅めで古めかしい口調にびっくりもした。
 けれどもそれも、今では彼女に無くてはならない一部だとも思える。
 と言っても、彼女がこの口調でなくなったらどうこうということはない。
 化粧っ気も男っ気も無い、そして陰湿な所も無い掴みがたい友人だけど、
彼女の方でも私のことをそれなりに気に入ってくれているみたいだった。
 
 
486 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:44:36 発信元:58.88.55.15
 帰り際、クーは私に、日曜は空いてるかと訊いた。
 私は頷いて、それで別れた。
 声にも顔にも出そうだったから、振り返らず、詳細はメールで決めた。
 面と向かっては言及することもなかったけれど、約束は固まった。


488 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:45:52 発信元:58.88.55.15
――日曜日、の朝。
 何度も何度も気になってはチョコレートの様子をチェックして、
結局明るくなるまで台所で張り付きどおし。私は睡眠不足だった。
それでも目の下に隈なんかできてないか確認して、顔を洗う。

 いつもより入念に身支度して家を出る。


489 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:47:26 発信元:58.88.55.15
 家を出る時、二月に似合わない日差しが、北風と共に私の頬を打った。
 眠くてヘロヘロになりそうな私は、それでもう一度気合いを入れ直した。
 駅に着くと、既にクーがいた。手には小さな箱を持っている。
 白い紙でできてて、大体一辺十センチの立方体を少し潰した感じ。
 立っている彼女は様になっていたけど、とりあえず申し訳なくなった。

ζ(゚ー゚*ζ「ごめん!」
川 ゚ -゚)「いや、まだ時間前だ」
ζ(゚ー゚*ζ「それ何?」
川 ゚ -゚)「……あとで教える」


491 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:49:06 発信元:58.88.55.15
 行こう、と言われては仕方が無い。
 鞄の中のチョコのことはしばらく待たせることにして、
私は彼女に手をゆるく握られ、引かれて付いて行く。
 別に何か特別なことがあるわけでもない。
 雑貨屋を冷やかして、お昼食べて、カラオケへ。
 六時まで五百円の料金を先に支払って入ったものの、
 二人とも歌う方じゃないから、五時になる頃にはネタが尽きてしまう。
 私は何となく、広告になってしまったテレビの画面を見て、寂しくなった。
 そうすると、鞄の中のチョコがいきなり自己主張をし始めて、
私はカバンの中のチョコの、ラッピングの袋の端を少し握った。


493 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 00:50:48 発信元:58.88.55.15
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、クー」
川 ゚ -゚)「……何かな?」

でも何だか、渡せる感じ、じゃあないなあ。

ζ(゚ー゚*ζ「ううん、何でもない」
川 ゚ -゚)「そうか」

 頷いたクーは、ずっと持ってた小さな箱をテーブルに上げると、
 ことりと置いて、ゆっくりすうっと滑らせて、こちらへ少し押した。

ζ(゚ー゚*ζ「そうだ、そう言えばこれ、何だったの?」


497 : ◆pfrtMyEmUQLK :2010/02/08(月) 01:01:22 発信元:58.88.55.15
川 ゚ -゚)「君にあげる物だ」
ζ(゚ー゚*ζ「開けていい?」
川 ゚ -゚)「ここは、持ち込み禁止だから」

 ね?と言って目の前まで押し出されて。箱を手に取る。
 鼻を近付けると、ほんのりカカオの香りがした。

 こんなことって、こんなやり方って無い。

ζ(゚ー゚*ζ「私もあげる」

 ピンクの袋にラッピングした、ハート型のチョコレート。
 結構乱暴に突き出したのに、彼女は笑顔で受け取った。

ζ(゚ー゚*ζ「本命だからね」
川 ゚ -゚)「……知ってる」

 たとえ製菓業界がどうなろうとも、
 私は今年のバレンタインデーが、日曜日でよかったと思う。
(終わり)


 
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